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翡翠の花 花の名は。Vol.28
翡翠。なんと読みますか。アンケート対象者層によって「読めない」が多数だったら残念です。読める方は「鉱物系」と「鳥類系」に分けられるでしょう。鉱物系なら、ヒスイ。鳥類系なら、カワセミです。さて、「植物系」としては、なんといたしましょう。
後に1文字、葛とつけましょう。翡翠葛。ヒスイカズラという花があります。英語名はジェイドバイン。バインはツル植物、蔓を意味します。ジェイドは宝石のヒスイ。鉱物系翡翠です。ヒスイの花色を持つ花とは。
ヒスイカズラはマメ科のツル植物です。マメ科らしい花の形です。フジなどと比べると、ひとつの花がやたらに大きい。花を咲かせるには大きな樹に育てないとなので、栽培されている所は主に植物園の温室です。開花すると以前はよくニュースになりました。最近は多くの植物園で樹が育ち、毎年咲くようになりました。開花時期になるとSNSなどで盛んに情報発信され、ちょっとしたお祭り状態です。
それにしても、ヒスイの色を持つ花とは。写真を掲げております。概ね嘘がない、この色です。現物は無論、立体感や光の透過と反射具合、陰影があるので、さらに美しいのです。昔、私が初見時の感想。息を呑みました。この世にこんな花があるのか! この色がそれこそ鉱物でなく、植物が生合成した色素と構造からなるとは! それはもう、驚愕でした。
私は若干ですが鳥類系でもあります。カワセミを初めてリアルで見た、その際の感動も大きなのもでした。更に昔のことで若かったというのもあります。ただカワセミは既に多くの写真や映像で知られていました。対してヒスイカズラは私が初めて見た当時、まだ印刷物のくすんだ写真と、ヒスイのような色という文言だけでイメージを膨らませていました。実物はイメージの遥か遥か上でしたよ。
シーズンに植物園に出向かないと見られないヒスイカズラ。この花色をもつ、比較的栽培しやすい植物が存在します。いずれも南アフリカ原産の、小型の球根草花です。
ラケナリア・ビリディフローラと、イキシア・ビリディフローラ。多くはないものの、夏から秋に球根が流通します。ラケナリアは初冬、イキシアは春に開花。いずれも花の色が、ヒスイカズラと同じ、ヒスイ色またはエメラルドグリーンと表現されます。ビリディは緑、ビリディフローラで緑の花。ただし色の名前でビリジアンは緑と青の中間くらいの微妙な色、それも鉱物由来の色です。
多くの植物の葉の色がグリーンであり、ビリジアンあるいはビリディと表現されることはありません。また、花弁はもともと葉から分化したとされます。先祖返り的に葉と同じ緑色の花弁をもつ花は少なくありません。ただしそれらはビリジアンあるいはヒスイの輝きを持ちません。
翡翠の花は希少であり、限りなく魅惑的です。
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