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映画を観た話でバカの壁を思い出す

映画を観に行くことが少なくなった。
気がつけば子どもたちも、友人と観に行くような年になってしまった。一方私は、一緒に映画を観に行くような友人も少なく、かといって一人で映画を観に行くよりは本を読みたいと思う人間だ。
では夫婦で行くかというと、それもちょっと躊躇する。

夫がはじめて映画に誘ってくれたときの話。

もう17〜8年ぐらい前のことなので、どういう成り行きだったかは忘れてしまったが、夫が映画を観に行こうと提案してくれた。
その映画は「ウルトラマンなんたらかんたら」。
正式なタイトルも忘れてしまったな。

想像してほしい。
新婚ほやほやで浮かれているとはいえ、いい年をした夫から「ウルトラマンなんたらかんたら」の映画に誘われる、(若くはないが一応)新妻の気持ちを。

夫が特撮好きなことはわかっていた。
ウルトラマンが日本の偉大な文化であることも理解している。
けれど私には、特撮映画をわざわざ観に行きたいと思うほどの熱量はない。

「映画行こうよ、ウルトラマンなんたらかんたら」と無邪気に言われたとき、私の頭に「積極的に行きたくはないが断るのも気が引ける」そんな微妙な緊張感が走った。一瞬ときが止まったあと、絞り出した私の返事は

「確かに、怪獣映画は映画館で観た方がきっと迫力があるよね」

棒読みだったかもしれない。
結局一緒に観に行くことにしたが、映画の内容はやっぱり何一つ覚えていない。

今、思い返しながらふと脳裏をよぎったのが「バカの壁」だ。女子学生と男子学生が同じ妊娠出産のドキュメンタリー映像を観ても、興味の有無で受け取り方に雲泥の差があるというあのエピソード。

きっと「ウルトラマンなんたらかんたら」も、夫にとっては琴線に触れる感動的なシーンがあったに違いない。

それからだいぶ時が流れ、「シン・ウルトラマン」が公開されたとき、夫から「行く?」と笑いながら誘われたが、「いやいい」と食い気味に断った。
けれど夫には、「あなたは行きなさい。あなたのための映画なんだから、絶対観るべき」と猛プッシュして送り出した。

シン・仮面ライダーのときもそう言って勧めたのだけど忙しくて見逃したらしい。かわいそうに。


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