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エゴノキ
エゴノキといえば、クマバチ。熊のように大きい蜂なのでクマバチ。
この季節になると必ずやってくる、庭の常連さんです。
英名「Japanese snowbell」のとおり、エゴノキの純白の花は鐘のように下を向いて咲きます。その蜜を得るためには、アクロバティックにぶら下がらないといけません。それが苦手なチョウやハナアブは、どれだけ満開であってもエゴノキをスルーして他の花に止まります。
ところが、クマバチはエゴノキ一途。ひたすら逆さにぶら下がって、自分より小さいくらいの花から器用に蜜を吸います。結構な脚力がいって疲れそうなものですが、無数に咲くエゴノキの花から花へと、休みなく数秒刻みで移動します。
大きいうえに重低音を響かせながら飛ぶので、怖がられてしまうこともしばしばなクマバチですが、花の蜜が大好きなミツバチの仲間。性格も非常に温厚です。
私の住む地域では「クマンバチ」とも呼びますが、スズメバチをそう呼ぶ地域もあり、コワモテさも合間って誤解されてしまう模様。
オスは針を持たず、メスもこちらから何かけしかけない限り、人間を刺すことはないそうです。
そもそも、蜜集めに大忙しで人間なぞ眼中にございません。私が目と鼻の先でじーっと見つめていても、まーったく気づいてくれません。ずんぐりむっくりな黒いボティに、タンポポのような黄色いふわふわふわふわしたベスト。そのベストの下に、「なぜあの翅で飛べるのか?」と議論を呼んだらしい短く小さな翅( はね )が、燕尾服のようにぴっぴっとついています。
恰幅のよい紳士といった感じで、とてもおしゃれさんです。シルクハットをプレゼントしたい。ご婦人かもしれませんけれども。丸こい体でぎゅうぎゅうと花に頭を突っ込み、おしりを振り振りしながら蜜集めに勤しむ姿は、たまらなく可愛らしいものです。( 黄色ベストをしているのはキムネクマバチという種類です )
花に蜜をご馳走になったクマバチは、きっちり花粉を運んでお礼をします。その熱心な仕事ぶりに、植物界には「クマバチ媒花」と呼ばれる、熱烈なクマバチファンがいるほどです。
クマバチご指名で、花粉の運送をお願いする花がたくさん存在し、中にはクマバチの翅音が出す特定の振動数( ドの音 )でしか、花粉を放出しない花までいるというから驚きです。たとえ他の昆虫が集荷にきてくれても居留守です。
安心と信頼のクマバチ運送は、お客様の絶大な支持を得ているのです。気は優しくて力持ち。おしゃれだし、義理人情に厚いし、「超」のつく働き者だし……もしや理想のお方なのでは。