【テレビ業界】ドラマの作られ方を考える

もともと、月間連載マンガを描いて生活してたので、出版やマンガの業界の異常な常識とかには肌に触れて見聞きしていたので、その目線で以前の記事を書かせていただきました。

ただ、これだと出版側に対しての一方的な意見になっちゃうので、今度はテレビ局の方に目を向けた考えをつらつら書いてみようかと思います。

どうして、テレビ局は執拗に原作を改変しつづけるのか?

この辺の問題を少し深掘りできたら、と思います。

とは、言っても知り合いや親戚にテレビ関係者がいたりする程度で、そこで生活の糧を稼いでいた出版業界ほど専門的には知らないんで、あまり確かなエビデンスのない話になってしまいますが。

誰が企画するのか?

まず、誰が企画するのか、によって大きく意味合いが違ってくると思うんですね。企画者の所属する組織の利益がまず優先されるでしょう。本来、何か大問題が発生したとすれば、誰が企画立案したのか?が明らかにならないと、その動機や目的、その人の中での優先順位とかが見えてこない。

1 テレビ局の人

当たり前といえば、当たり前なんですが。普通に考えると局員の中のプロデューサーが企画してるんでしょう。

あとは、下請けの制作会社からの持ち込みも、利害関係的には「テレビ局の人」と同じカテゴリーに含んでも良さそう。

ですが、聞いたところによると、更に上の上司や役員などに「いま人気の女優の〇〇さん主演のドラマ作ってよ」とか「いま、大人気小説の〇〇のドラマ化をウチでできない?」とか言われたりして始まることもあるんですよね。

こういう上からのオーダーだと、プロデューサーとしては乗り気になるかどうか微妙ですよね。もともと、そのプロデューサーが原作ファンなら、正に渡りに船みたいな状況ですから。

でも、プロデューサーにとって全く興味のない作品だった場合。プロ目線で「そんなのドラマ化しても視聴率どうやって取るんだよ?」としか思えなかった時に、結構な問題が起きそうな気がします。

2 脚本家やディレクター

レアケースかなとは思うんですが。それなり実績ある人じゃないと無理そう。宮藤官九郎さんとか三谷幸喜さんとか三池崇史さんとか堤幸彦さんとか・・・橋田壽賀子さんとか、まあ、そういう著名な方。

ただ、「原作の実績をウリ」にして、そこまで著名でもない脚本家やディレクターが持ち込む企画というのも、あるっちゃあるかもしれません。

実際にテレビ局のプロデューサーの元には、あちこちから企画が持ち込まれて、それを精査するのも仕事の内だそうですから。

芦原先生の件では、脚本家の方が「原作者の意向なんて全く知らなかった」と証言されているので、自分で持ち込んだのに知らないってことはないと思いますし、当てはまらない感じです。

3 外部からの持ち込み

先程書いたように、プロデューサーの元には様々な企画が持ち込まれるそうです。局内で言えば、部下のアシスタントプロデューサーやディレクターなどなど。

外部というと、あとは出版社と広告代理店です。芸能事務所からの持ち込みというのもあるかもです。

出版社の場合、あらかじめ原作者の許諾付き(あるいは、原作者が許諾することを出版社が保証する)で持ち込まれるので、その辺の権利関係で悩まずに済んで楽できてオイシイ話だと思うんですよね。

「ウチの出版社はそんな売り込みやってないよ」という出版関係の方もいらっしゃると思うんです。でも、メディア事業部とかライツ事業部なんて名称の部署を抱えてる出版社は、映像化されたりグッズ商品化されたりして始めて売上実績の出る部署にタダ飯食わす訳もないので、そういう企画を立てて売り込み営業しまくっている所もあるんじゃないでしょうか。

芸能事務所にせよ出版社にせよ、単独で各方面に根回しして企画を立てるというのは、それなりのコネや人脈が必要なハズなんですよね。余程の大手企業じゃないとなかなか難しい感じもします。

ですが、そんなところに非常に都合よく全部請け負ってくれる会社があるんです。それが広告代理店です。

広告代理店は、よくパッケージングされた企画を持ち込むと聞いています。

つまり、スポンサー内定を取り付け、キャストのスケジュールを芸能事務所に根回し済みで、広報のプランニングとセットでどうやったら視聴率がとれる番組になるか大枠を作り込んであったりします。場合によっては製作委員会の顔ぶれの内定も済んでるくらい。

ここまでお膳立てされたプランなら、プロデューサーにしてみれば、非常にラクできるお仕事です。スポンサーを探す手間もないし、芸能事務所にオファーしまくらなくても良いですし。内容も概ね出来上がってますし。

企画の成り立ちの背景を考える

余談で電通

力関係をハッキリする為に少しおさらいしてみようと思います。言うまでもなく超有名企業です。就職最難関の1つですし、政治家や芸能人や財界やそれこそテレビ局などのメディア関係の大物の子息が多数所属してるとも言われています。

日本の広告事業の6~7割を占めるシェアを握っているという噂の日本最大の広告代理店で、一時期は世界的に見てもナンバーワンだったみたいですね。

テレビ業界との繋がりは深く密接で、全民放キー局の設立を手助けしお膳立てしたとも言われています。

昔から、自民党の広報を独占していて、その辺から広告代理店というより政商とも揶揄されることもあります。オリンピックなどの巨大イベントも担当してますね。

よく陰謀論的に悪の秘密結社のような酷い言われようの電通ですが、他の広告代理店では請け負いことができない規模のイベントだったりするので、それだけキャパが大きく広範な人脈やコネを持っていて、極めて有能だからとも言えます。

実際にドラマとか見てて、本編よりCMの方が映像が綺麗だったりシリーズ化されたストーリー性があったり、インパクトがすごくて印象に残ることありませんか? 予算も桁違いですし、物凄く優秀で実績のあるスタッフを集めてCM作ってるし、それが手配できることが電通の優秀さを表していると思います。

様々なしがらみや力関係によって、テレビ局や親会社の新聞社などの報道は、基本的にアンタッチャブルで犯罪に関わるような余程の不祥事の時だけ報道されます。それでもかなり配慮され小さめに。


複合的に成り立っているとしたら

例えば、広告代理店からテレビ局の役員に企画の話が持ち込まれ、上司からプロデューサーが「この企画やってよ」と言われた場合、どういうことになるか。

キャストも決まっています。コンセプトもプロットも決まっています。場合によっては数話分の仮シナリオや仮コンテまであるかもしれません。

プロデューサーは、企画資料を脚本家に回すだけ。プランに沿って部下に撮影準備をさせるだけ。

この流れで一番怖いのはプロデューサーであっても「あらかじめ用意されたプランから変更できない」ということです。

その企画1回きりではなく、プロデューサーにとってその先も仕事が続いていく以上、広告代理店とモメるのは絶対に有り得ないことです。更に、この例でいうと、上司や役員のメンツを潰す訳にもいきません。

つまり、プロデューサーの最優先事項の「視聴率をとること」と「広告代理店の用意したプランから逸脱しないこと」になると思うんですね。

芦原先生の件で、テレビ局側が執拗に延々と原作を改変しようとし続けたのは、この辺の事情もあるのかな、と推測します。

そして、本当に広告代理店主導で立案されたドラマ企画だったとしたら、日テレと小学館の第三者委員会よる内部調査とかでも、絶対に出てこないとは思いますね。

出版社にとっても、広告代理店はグッズ商品や映像化作品の広報やそのイベントに関わってる上に、雑誌のスポンサー広告を集めてくれる大事な取引先です。テレビ局はそこに依存して成り立ってると言っても良いくらいです。そこの部分に火の粉が飛ぶのは絶対に避けたいと思ってるんじゃないでしょうか。

まとめると

その前に、ちょっとだけ前々回の記事の補足します。

【記事補足】小学館のトラウマ

「ナースのお仕事」というフジテレビのドラマがあるんですが、これは元々は佐々木倫子先生の「おたんこナース」というマンガを原作にした実写ドラマ化の企画だったらしいんですね。

佐々木先生の意向で版元の小学館は、このドラマ化企画の話を断るんですが・・・・フジテレビは、世界観やキャラ設定の一部がそっくりなオリジナル作品として「ナースのお仕事」を放送しちゃったんですよ。

そんなにそっくりなら裁判すれば良いじゃん、という人もいらっしゃるかと思いますが、舞台が同じで主人公の性格似ててマンガと同じようなセリフが幾つかあるだけだと、類似性の証明を法廷でやるのは難しいんじゃないですかね。

突飛なファンタジー世界とかの作品で似てたら判りやすいですが。ありきたりの現代を舞台にして、どこにでもいそうなキャラを主人公にして、素晴らしいドラマを組み立ててるのが佐々木先生の凄さなので。

当然、フジテレビのオリジナル作品ですから、人気が出てシリーズ化され劇場版も作られ近年リメイクもされましたが、小学館にはビタ一文収益になってないんですね。

だから、その件以来、「どんな映像化企画でも原作者に許諾させる」という風に小学館が方針転換してたとしても驚きません。

原作者の立場は弱い

ここまで、書いて登場してきた役職や組織など幾つかありますが、全て「原作者の意見を忠実に映像化する」ということに何のメリットもないんですね。

プロデューサーにとっては、撮影スケジュールが圧迫されるだけで良いこと何もないですし。脚本が二転三転すれば、俳優さんの準備もおぼつかないし、ロケ地が変更とかになったら大問題です。

広告代理店にしてみれば、原作よりも大規模なマーケットに訴求したいが為に、それに最適化されたプランを立てているだけ。原作者に作家としてのこだわりを言われても、そもそも企画の目的がそこではないので噛み合わないんですよね。

テレビ局にしてみれば、広告代理店発の企画であれば数字が取れなくても局内部では言い訳できる。ヒットすれば広告代理店との関係性は良くなるし、役員や上司やプロデューサーの実績や手柄にできる。その為には、広告代理店の用意したプランになるべく沿う形で映像化した方が都合が良い。

もしかすると、数字が取れなかった時の言い訳に「原作者が口を出した」ことが使われていた可能性すらあるんですよね。

もともと原作者の立場というのは非常に弱い個人で、何か注文をつけようとしたら巨大な組織の出版社やテレビ局相手に立ち回りを要求されるんです。

だから、大抵の原作者は黙って口を出さない。どんなにこだわりがあっても苦労して生み出したものだとしても、あれは別物、私の作品じゃない、と自分に言い聞かせて納得するしかない。

これだけ弱い立場だからこそ、法的に保護が必要で著作権法で実際に保護されているんです。

でも、法的に保護されてていても、なお契約を反故にされ作品をパクられても、それを行使する機会や勇気が持てるような状況ではないことを、より多くの人に知ってもらえたら、と思います。


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