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Kの向くままにおススメ映画『野いちご』短文紹介

【老いと死と孤独を考える映画】 

といってもダークなお話ではなく、心温まる映画です。
冒頭、主人公イーサクのモノローグ。

イーサク :「所謂《人付き合い》の主な中身は、そこにいない誰かの噂話や悪口を言う事だ。私はそれが嫌で友を持たなかった。人との付き合いを断った。年を取った今ではいささか孤独な日々だが不満はない。」

視聴1分、もうこの時点で好き。彼のセリフが少しでも気になった人は最後まで観て損はしないと思いますよ。

イーサクは医学の進歩に貢献した医師でありその功績を認められ、名誉博士号を授与される事になりました。授与式に出席する為、自宅のストックホルムから式場のルンドまで車で向かうロードムービーです。

たった1日のお話ですが、それまでのイーサクの人生を振り返る出来事に遭遇します。患者や地域住民にはとても頼りにされてる先生ですが、家族や身内に言わせると「冷たいエゴイスト」。優しいフリをしてその実は無関心なんです。これは、イーサクが過去に体験した、恋人や兄弟や妻の裏切り(と勝手に思っている)が大きく影響しているようです。
しかし、そんな彼を癒し解放してくれるのがこの日に出会った無邪気な女の子。本作が非常に幻想的な構造になっている理由の1つは、かつての恋人と今日出会った女の子が同じ女優さん(ビビ アンデショーン)の一人二役である事、そしてその二人が同じ役名(サーラ)である事です。

イーサクのように「人間は裏切る生き物だ」と割り切ってしまえば傷付くことは少ない、けど人と深い関係になる事も難しいでしょう。
人間誰しも昨日と今日では事情や状況が違うのだから、考え方も変わる。それを裏切りと言う事もできるけれど、もっとおおらかな視点で人間関係を捉えたほうが良いのでは?
死期が近づいたイーサクがそんな事を考えるようになった記念すべき日のお話です。

若者も老人も中年も、人生のいつの時点で観ても必ず糧になると思います!


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