インディオの不思議な教育
8年ぐらい前だっただろうか。とある女性セラピストの方とお話しする機会があった。そのとき聞かせてもらったインディオのヒーリング能力の話が印象に残っている。ふと、思い出したので書き残しておきたい。
その女性セラピストさん。仮にAさんとしておく。Aさんはアメリカ先住民と交流があるらしく、彼らとの関わりの中でいろいろなことを学んだそうだ。当時は俺も療術の仕事していたので、インディオの人々はどのような療法を使うのか、という話になった。
Aさん曰く、インディオには本当に傷や病気を治すヒーリング能力を持つ人がいて、しかもそれは子供なのだそうだ。
子供がどうやってヒーリング能力を身に付けるのかと俺が訊くと、Aさんは丁寧に教えてくれた。
まず大人が子供に、ケガをした手を見せる。しかしそれは嘘のケガで、実際は赤い塗料か何かで手に傷らしきものを描いているだけなのだ。そしてそれを子供に見せ、おまじないで治してと頼む。すると子供は一生懸命に祈りながらおまじないをする。子供が目をつぶって祈っている間に、大人は嘘の傷を消す。そしてそれを子供に見せ、ありがとう、あなたのおまじないで治ったよ。と言いながら子供を褒める。
それを何度もやることで、子供は、自分に本当に傷や病気を治す力があるのだと思い込む。そしてやがて、本当にヒーリング能力が身に着くのだそうだ。
心から思い込むことで、自分だけでなく、他者のケガや病気まで治癒させてしまう能力が身に着くのだ、と。Aさんは、そのヒーリング能力を実際に見たかのような口ぶりで話していた。
話を聞いていると、インディオの子供が使うヒーリング。それはなんというか、とても優しい能力に思えた。マンガや映画の世界で描かれているような、大仰で神秘的なものではなく。日常のすぐそばにあり、そっといつも支えてくれるような、素朴で温かいもの。そんな風に感じられた。
インディオのヒーリング。もしかしたら太古の昔は、みんながそれを出来たのかもしれないな。そうだったらいいな、と思った。
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だから俺は祈る。みんなが健康で、幸せでありますように。