夏になると、よく口ずさむ歌
春も過ぎてきて。「暖かい」から、徐々に「暑い」に変わってくるころになると、無意識に口ずさんでいる歌がある。
大浦龍宇一さんの「夏の午後」という曲。
今からおよそ25年前、「君と出逢ってから」というテレビドラマの主題歌だった。
正にこれからの時期にぴったりの一曲で、夏の午後に聞くと穏やかな気分になれる。
この曲は、夏のスカッとした雰囲気を表現したものではなく。午後の静かな時間を優しく、しっとり味わっているような、そんな曲調と歌詞。
しかしその曲の歌詞をずっと間違って覚えていた。
夏の午後、水を撒いてる
という歌詞を
夏の午後、いつも泣いてる
と間違えて覚えていたのだ。それもつい最近まで。
今年に入り、暖かくなってきたころ。ふと気づくと「夏の午後」を口ずさんでいた。そういえば自分はこの歌を時々口ずさんでいるけど、曲自体をあまり聴いたことがないなと思い。ネットで検索してみると動画がヒットした。その動画の概要欄に歌詞が書かれていて、それを読んで小さな衝撃を受けた。ずっと歌詞を間違って覚えていたのだと。
それだけでなく、正しい歌詞を知ったにも関わらず、いまだに間違った歌詞でその歌を口ずさんでしまうのだ。
一度間違えて覚えて、しかもそのまま何十年と経ってしまっているので、今さら脳がデータを書き換えることができなくなってしまったのだろうか。
しかし思うのは。「夏の午後、水を撒いてる」よりも「夏の午後、いつも泣いてる」の方がしっくりくるような気がしないでもない。
25年前。この歌の歌詞を聞いたとき、俺は泣いていたのだろうか。だからそう聞こえたのかもしれない。
思い出、というものは往々にして美化されて記憶に残っていることが多い。自分に都合よく記憶を作り変えてしまっていることもある。しかし、それでいいじゃないか。誰かを傷つけてしまうことが無い限り、間違ったままでも。
間違ったままでもよかったのだ。それで、別になにも問題はなかった。知らなくてもよかったのだ。本当のことなど。
世の中には、知らないほうがよかったと思えることが、往々にしてある。
しかし、この歌はいい歌だ。本当に。