つばめさんの視点
何かひとつのモノや事象を見たとして、人によってとらえ方は違う。抱く感想も違う。そんなことは当たり前なのだけれど、しかしそこに面白さがある。
例えば手をつなぐ親子がいて、子はまだ幼い。二人が同時に空を見上げると、大人の視点よりも子どもの視点からの方が、空はより広く見えるだろう。空と世界と、隣にいる大人が、とても大きく見えるだろう。そしてそこから生み出される心の動きは、唯一無二のモノになる。
沢木耕太郎さんの「旅のつばくろ」を読んだ。彼の旅においての「見方」、もしくは「視点」を、そのまま読ませてもらっている気分だった。まるで読者であるこちらが、"つばめ"となって沢木さんの周りを飛翔しながら、共に旅をしているような。そんな気分。
自分のような人間が評価するのもおこがましいと思うが。沢木さんは旅の途中で出会った人や物事と、かつて経験した出来事を結び付けて、そこに深い意味を持たせるのが上手い。深いといっても、重く難しいモノではなく、味わい深いという感じ。
ああ、こういう風に考えると人生は楽しくなるのか、と。ふわっと分からせてくれる。心にズシン、ではなく、ふわっと。
人様の旅の様子と、その心のありようを読ませてもらえる。ありがたいことだ。贅沢なことだ、と思う。
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noteなどで文章を書いていると、たまにハートマークを押して評価してくれる人たちがいる。本当にありがたいことです。
自分の記事を評価してくれた人のページを見に行くと、投稿数ゼロのままの人がいたりする。複数のアカウントをフォローしているようだが、ご自分では記事を書いていないようだ。恐らく閲覧用のアカウントなのかもしれない。
もったいない。
人の記事を読んで評価できるのならば、貴方の書いた文章は貴方の評価した文章たちよりも、はるかに素晴らしいものであるはずだ。どんな人でも、頭の中にたくさんの言葉が浮かんでいるはず。たくさんの感情が吹きすさんでいるはず。だから読ませて欲しい、それを読ませて欲しい。
貴方の旅を、その心の機微を、読ませて欲しい。俺は"つばめ"になって、その旅に同行するから。