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一斉に咲く

およそ20年前。石垣島で暮らしているころ。働いているガソリンスタンドのすぐそばにある民家の庭に、マンゴーの木があった。ある年、その木にマンゴーが実った。濃い黄色のまるまるとしたマンゴー。

その家の住人が、獲れたマンゴーをいくつかくれたので、職場の人間たちで少しずつ分けて食べた。そのときは確かマンゴーを食べるのが初めてで、こんなにも甘くて滑らかな食感なのかと、感動したことを覚えている。

休憩時間にマンゴーいただき、そのあと同僚たちと「うまかったね」などと語りながら、同僚から少し不思議な話を聞いた。

島にはマンゴーの木が沢山あるが、毎年実が成るわけではない。いつ成るのか分からないが、しかし実が成るときは何故が島中のマンゴーの木に一斉に実が成るのだ、と。

いくら面積の小さな島だからといって、地中で全てのマンゴーの木が繋がっているわけでもなし、なぜ一斉に実が成るのだろう。そういえば、珊瑚もあるとき一斉に産卵をすると聞いたことがある。

なぜ珊瑚が一斉に産卵をするのか詳しいことはわかってないらしく、一般的に満月のころに一斉産卵が始まると考えられているが、実際には満月以外のときでも産卵があるらしい。

少し調べてみたが、珊瑚の一斉産卵についてはいくつも記事が見つかったが、マンゴーが一斉に実をつけることについては情報が見つからなかった。あれは同僚の冗談だったのだろうか。

しかし、石垣に3年暮らしていて、マンゴーの木に実が成っているのを見たのは一度だけだったような気もする。

島で暮らしているころは色々と不可思議な経験をしたが、書くべきではないなと思えるモノやコトもいくつかあった。

島というのは本当に不思議で、魅力たっぷりだ。

珊瑚は珊瑚同士。マンゴーはマンゴー同士で、見えない糸のようなもので繋がり、互いに示し合わせて一斉に動くのだろうか。

もしくは同族だけに伝わる何か、「音」のようなものだろうか。「音」であれば、遠く離れた仲間にも伝わりやすいと思う。例えばクジラは、数百キロ離れた仲間と音でコミュニケーションをとることが出来ると聞く。

仲間にだけ届く「音」

もし、ウイルスにも、「それ」があるなら。あるとき一斉に動き出すのかもしれない。

しかし、人間にも「それ」があるなら。仲間として、一斉に動ける。はずだ。

昨日、東京オリンピックが始まった。

がんばれ!人間!

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