「大統領」と「棟梁」の意外な関係【今日の余録】
今月20日には、トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任し、2期目の政権が始まる。「大統領」と聞いてすぐに思い浮かぶのはやはり、アメリカ合衆国のリーダーだろう。
英語だと「President」だが、最初は「大統領」とは訳していなかったことを今日の余録で知った。最初からずっと「大統領」と訳していたのかと🙃
この訳語が日本の公文書に登場したのは、1858年の日米修好通商条約から。1853年にペリー提督が持参したフィルモア大統領の国書の和訳文には、「伯理璽天徳」という音訳語が使われ、「プレシテント」とルビが振ってあったという。「伯理璽天徳」と音訳したのが誰なのか知りたかったが、残念ながらわからなかった。
さて、当時の役人たちは「国王」「君主」と訳そうとしたが、フィルモアが町人出身と知って断念する。その後も「合衆国主」「監督」など、さまざまな訳語が試されるなど、だいぶ右往左往した模様。福沢諭吉も『増訂華英通語』で「監督」という訳を提案している。
最終的に行き着いた先が、今では当たり前に使われている「大統領」。元になったのは「棟梁」という言葉だった。
棟梁は、職人の世界で技を極め、人々を率いる存在。その「棟梁」から「統べる」の意味を持つ「統領」という言葉を作る。そしてさらに、将軍との釣り合いを考えて「大」を冠した。
今この訳語を使うのは、なぜか日本と韓国だけ。中国では「酋長」「国主」「統領」と変遷を経て「国家主席」に、台湾は「総統」を選んだ。この違いはなぜなのか、折を見て調べてみたい。
音から漢字を当てた「伯理璽天徳」から、職人言葉をヒントにした「大統領」まで。幕末の人々は、未知の概念を翻訳するため、身近な言葉の中から新しい意味を探し出していった。そして、「アメリカ合衆国監督」に決定しなかったのは英断な気がする😇
言葉の成り立ちをたどるのも、なかなか面白い。