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明治の技術者たちが挑んだ帝国劇場の革新【今日の余録】

日本の近代化を象徴する帝国劇場(帝劇)の誕生は、明治の技術者たちが伝統と革新を融合させた挑戦の結晶だった。ということを、余録をきっかけに知った😇

建築家・横河民輔が手がけた初代帝劇(1911年開場)には、歌舞伎の回り舞台と西洋式オペラ設備を統合した画期的な舞台機構が導入されたそうだ。地下7メートルに構築された奈落には、直径18メートルの鉄製回り舞台が設置。当時の舞台技術者・山本竹三の回想録によれば、6段重ねの床板が自在に組み替えられた斬新な舞台機構だったらしい。この和洋ハイブリッドの構造は、伊藤博文や渋沢栄一らが構想した「東西文化の融合」を空間的に体現したものだった。

余録の話の中心でもある屋上を飾った翁像。この制作では、彫刻家・沼田一雅がパリで習得した最新鋳造技術を応用。耐熱性に優れた独自配合のろう型を使用し、伝統的な仏像制作の金銅仕上げ技法に革新的な改良を加えている。高浜虚子が「突飛な感じ」と評したこの異文化混合の美学こそ、明治の技術者たちが目指した日本的モダニズム建築の本質だったのではないか。

2025年2月に閉館する現行の2代目帝劇は、2030年に3代目として生まれ変わる。3代目のテーマは「THE VEIL(ヴェール)」。これは「自然と都市の境界を再定義する空間哲学」を具現化したものらしい。伝統の継承と新たな技術の融合による挑戦が、この3代目の姿にも見られることだろう。

今日の余録と参考資料

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