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過信と性急な判断が見失うもの【今日の余録】

安全保障上、厳しく管理された空域で起きた事故。その「管理」の重さが、現場の判断を鈍らせたのか。

安全のためのルールは大切だ。しかし、同時に悩ましい部分もある。例えば、決められた手順を厳格に守ることで柔軟な対応が遅れるかもしれない。あるいは、複雑なルールが重なりすぎ、かえって現場を混乱させることもあるだろう。

そういえば、有名なタイタニック号も安全対策が悲劇を生んだ。万全な安全対策が、かえって乗組員たちの危機意識を薄れさせた。救命ボートの数が足りなかったのも、「絶対に沈まない」という過信があったからだ。

一方で、トランプ大統領が「多様性重視の人事が事故の遠因だ」と、前政権を批判するような発言をした。複雑な事故原因を、自身の政治的主張に都合よく単純化しているだけに見える。自分の正しさを証明する材料として、この悲劇を利用しているようにも感じる。事故原因がわかっていないと言っておきながらのこの発言。さすがにいただけない。ある種の暴力性すら感じる。

僕らは時々、複雑な現実から目を背けたくなる。その結果、自分にもっとも都合のいい答えにしがみつく。そうやって、問題を直視せず、安直な「答え」を求めた結果、本当に大切なものを見失う。トランプ大統領の場合、目を背けたわけではないのかもしれない。しかし、本質を見極めようとしたうえでの発言とは思えない。トランプ節は結構だが、偏見やこだわりに縛られすぎた発言ばかり多いと、国民だけでなく世界中からNOを突きつけられるだろう。

日本でも1971年、民間機と自衛隊機が衝突した雫石事故があったそうだ。これを機に、日本の航空管制は軍民の空域を分離し、安全対策を積み重ねてきたという。今回の事故原因は、まだ調査中でよくわかっていない。システム上の問題なのか、人為的ミスがあったのか。今後の事故防止につながげるためにも、事故原因の究明に向けて十分な調査を行ってほしい。

今日の余録と参考資料

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