第一回邦キチー1グランプリ『バトルヒーター』
洋一「いやー、やっぱり、冬といえばこたつだよなあ」
邦キチ「部長、今何と仰いましたか?」
洋一「え、冬といえばこたつ、と言っただけだが……」
邦キチ「さすが部長! 冬といえばもちろん、こたつ映画でありますよね!」
洋一「ないだろそんなジャンル!」
邦キチ「ありまするよー? 1989年制作『バトルヒーター』は正真正銘こたつ映画であります! BAKUFU-SLUMP総出演でおなじみの…… 冒頭に出てくる台詞を真似したのではないでありまするか?」
邦キチ「主演はBAKUFU-SLUMPのギタリスト、パッパラー河合でありまするが、お馴染みのあの髪型ではないため、初めは誰だかわかりません! 普通に演技が上手いので俳優さんかな、と思ってしまいます」
邦キチ「ですがご安心ください、映画の途中でちゃんと、お馴染みのあの髪型になりまするので!」
邦キチ「主にお話はパッパラー河合や岸谷五朗たちが住むアパート、麒麟荘が舞台となり、ほぼその中だけで展開します」
洋一「なるほど、よくある、限られた場所でのワンシチュエーションものってことか……」
邦キチ「いえ部長、ご安心くだされ。このアパートは、部屋の広さがそれぞれバラバラで、岸谷五朗の部屋などはライブハウスくらいの広さがあるため、そこまで閉塞感を感じることはありませぬ! 途中、壁をぶち抜いて部屋をもっと広くしようぜ、などという台詞もあるくらいで」
洋一「どんな構造のアパートなんだ!?」
邦キチ「その事もしっかり、サンプラザ中野くんが絶叫しながら指摘してくれておりまする! 隙が無い!」
サンプラザ中野くん「あのアパートは、おかしい~!!!!!」
邦キチ「意外と脚本も凝っていまして、前半、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくる自動犬のエサやり機みたいな装置で心中する上品な老夫婦のエピソードもキチンと伏線になっていたり……」
洋一「自動エサやり機みたいな装置で心中?」
邦キチ「柄本明演じる電気屋さんが、なぜか人食い炬燵のことを知っているようなのですが、その辺りは特に詳しく説明されません」
洋一「いや、してほしいな……」
邦キチ「ですが、そんなこと説明せずとも、柄本明がネオンで彩られた『電気様』を熱心に拝んでいることで、観客には大体どういうことなのか理解できてしまうので安心であります!」
洋一「いや全く理解できんが?」
邦キチ「人食い炬燵がついに覚醒し、岸谷五朗たちの(アパート内での)ライブに、大量に(勘違いで)集まった女子高生たちというクライマックスが待ち受けます!」
洋一「おお、ホラー映画っぽくなってきた。いよいよ大量の犠牲者が出てしまう、ホラー映画としては一番の見どころだな?」
邦キチ「いえ、大量の女子高生たちはほぼ全員、無傷で逃げ帰りまする」
洋一「そんなことある!?」
邦キチ「ジャケットで大きめに写っているサンプラザ中野くんですが、冒頭いきなり、巨大なタイトルに跳ね飛ばされてどこかへ消えていきます!」
洋一「巨大なタイトルに跳ね飛ばされる!?」
邦キチ「ですがご安心ください、バンドボーカルの岸谷五朗が歌うシーンになると、声だけサンプラザ中野くんになって戻ってきまする」
洋一「いや吹替してるだけだろそれは!」
邦キチ「サンプラザ中野くんはほとんど作品内に出てこないのでありまするが、やっぱり叫んでいたり、力強いボーカルを岸谷五朗の代わりに歌ったりするところなど、ものすごい説得力であります」
洋一「まあ……それはそうだろうな、ボーカリストなんだし……」
邦キチ「その分、ラストシーンで普通に喋るとき、サンプラザ中野くんの個性がほぼ失われてしまうのでありまするが……」
洋一「まあ俳優じゃないんだからそういうこともあるだろ! パッパラー河合も俳優ではないが……」
邦キチ「つまりこれは、適材適所! なのであります」
洋一「適材適所?」
邦キチ「冒頭の台詞であった……冬といえばこたつ! というように、ボーカルやシャウトといえばサンプラザ中野くん! という、熱いメッセージをこの作品は投げかけているのでありまする! こたつだけに」
洋一「んんん~……そうかあ?」
おしまい。