『グランド・ブダペスト・ホテル』 感想
国民的作家が、ホテルのオーナーから昔話を聞く映画。
ウェス・アンダーソンのこだわりにこだわりまくったシンメトリーの画作りが、過ぎ去ってしまった過去を描くのに恐ろしい程マッチしています。
かつての可愛らしく飾られたケーキ菓子のような時代は、戦争によって変わって行く。
祖国をなくした者達は、永遠に無くならない物を求めますが、そうはなりません。列車の中で迫害されそうになるゼロを、一度はグスタヴは助けますが、二度はありません。
世界の価値は刻一刻と変わっていくのです。
グランドブダペストホテルすらも、かつての高級リゾートホテルから、軍人達の拠点となり、やがて客のほとんど来ないホテルへと移り変わって行きます。
それでも、グスタヴがゼロに見せていた幻影は生き続けて、その話は作家へと語られ、作家はそれを本にし、やがて現代の少女の手元へ渡るのです。
時代が変わっても変わらない幻影(小説と絵画)が、確かにあることを証明して終わるのです。
とても素敵な映画でしたのでもちろんオススメです。
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