iPhoneにロックがかけられてしまった話
本当に特に何でもないんだけど、何か引っかかるのは、先日、そうだ久しぶりにラインスタンプを買おう、と、コンビニでitunesカードを購入したのだが、いざ番号を入力して金額をチャージしてラインスタンプを買おうとしたら、何やらiPhoneがよくわからないことを言いだしたのである。
『セキュリティーが心配だから貴方が本当に竹内佑かどうか調べさせてもらうけど?』
みたいなふざけたメッセージが表示されたのだ。
本当に竹内佑かどうかもなにも、そもそも貴様を買ったのは俺ではないか。
俺が他のiPhoneを持ちながら「これは俺のiPhoneかな?」と疑ったり、他の四角いもの(位牌など)を手にして「これは俺のiPhoneかな?」などと疑うことはあったとしても、iPhone側が、俺に疑問を持つとは何事だろうか。
俺が買って俺が持ち歩いてるのだから俺のものに決まっているのだけれど、iPhone側にしてみれば、こないだ機種変更して6sになった事により、買ってもらった恩を忘れている可能性もある。
いわば記憶喪失のような状態なのかも知れないのだ。
記憶喪失のものに対し「恩知らずの馬鹿者」などと、口汚く罵るのは愚かで考えなしの浅はかな行為であることを、数々の古今東西の名作を読んでよく知っている俺は、もちろんそんなことはせずに、「疑うのも無理は無い。お前は機種変更して、新しい体に脳を移植したばかりの状態であるのだ。どれ、恐れずともよい。私がお前の主人であることを証明してみせよう」と悠長に構えていると、iPhoneは「では秘密の質問に答えていただきたい」と、こうきたのである。
秘密の質問
『生まれて初めて飼ったペットの名前は?』
秘密の質問
『子供の頃のあだ名は?』
勿論、こんな質問に悩むことはない。
正解はこの頭の中にある。
俺は躊躇なく、二つの質問に答えてみせた。
しかし、返ってきたのは
『質問の答えが間違っています! 近寄るな! この薄汚い化物!』
というすっかり怯えきったiPhoneからの拒否の声だったのである。
勿論途中から最後にかけての言葉はまるっきりの嘘であるが、俺にはそう聞こえたのだ。
おかしい。
質問の答えが間違っているはずはない。
ならば、カタカナ平仮名漢字の組み合わせに間違えがあったのだろうか?
俺は再び答えを入力する。
しかし、やはり返ってきたのは
『触るな! 野蛮人!』
という完全なる拒絶の声。
さっきまであんなに楽しく一緒に遊んでいたはずのiPhoneは、既に人を見る目で俺を見てはいない。
あれは……そう、鬼。
鬼を見る目で俺を捉えていた。(そしてそんなiPhoneを見つめる俺の目もまた……?)
おかしいな、と思いつつも何度か文字の組み合わせでこれだ、と思う答えを入力するのだが、どれも認識されない。
挙げ句の果てにiPhoneから『もう間違えすぎなのであんた怪しいので、ロックします。もう話しかけてこないで。バイバイ』という、完全面会拒否の状態に。
慌てた俺はiPhoneの前で歌ったり踊ったり酒盛りをしたりして、「何だか楽しそう。お祭りかな?」とiPhoneがそーっとロックを解除してこちらを見ようとしたところをすかさず力持ちに開いてもらおうとする計画を立てたのだけれど、そんなアホなことをする前に、まずはアップルに問い合わせてどうしたらいいか尋ねてみよう、と、思い直した。
ひょっとしたらアップル側の方から「実は裏技がありまして、iPhoneの前で歌ったり踊ったりすると、まずSiriが反応するのでそこをすかさず……」といったアドバイスをくれるかも知れない!
そして俺はホームページの指示に従い入力し、アップルのサービスセンターから折り返し電話があるのを待った。
すると電話が鳴り響き、すかさず俺はわざわざ電話をかけてきてくれたサービスセンターのお兄さんに事情を説明。
「なるほど、課金したいのに課金ができない、と、そういうわけですね」とお兄さん。
確かにそうなのだけれど、課金、て言葉で言うとどうもこの、ゲームのイメージが強くないですか。
元々はラインスタンプを購入しようとしてitunesカードを買い、その操作途中でロックがかけられてしまったのだ。
確かに購入した金額すべてをラインスタンプに注ぎ込む予定はないので、もしかしたらこの先、ゲームを何か買うかも知れない。アプリをなにか買うかも知れない。
もしかしたらitunesストアで音楽や落語、朗読とかを購入するかも知れない。
だけど、やっているゲームに課金して、アイテムや仲間を揃える行為にお金を注ぎ込む予定は、一切無かったのだ。
でも、このお兄さんの言い方だと、「課金して早くガチャが回したいのにロックかかって出来ない! 殺したるぞ!」と白目むいてクレームつけてきてるようなイメージの人物にされてしまっているような気がしたのだ。
なので、「いえ、ラインスタンプを買うんですけど」とか「音楽買うんですけど。ランシドのスカ曲集めたコンピレーションを」とか言い訳しようかとも思ったが、その言い訳になんの意味もないばかりか、そう言ったことにより万が一にもお兄さんが「あっそ。じゃあ教えない」と言い出す可能性もあるかも? と思い、黙っていた。
その後、お兄さんの親切かつ丁寧な対応のお陰でセキュリティーのロックは解除され、新たなる秘密の質問の登録も済み、見事、無事にiPhoneは元に戻り、「その声は……竹内佑なのですね!」と感動の再会を果たすこととなる。
俺はお兄さんにお礼を言って電話を切ろうとした。
するとお兄さんは、最後にやはりこう言ったのだ。
「お役に立てて良かったです。それでは、課金して引き続きゲームをお楽しみください」
いやだからゲームに課金はしねーんだよ!!!
本当に特に何でもないんだけれど、何か引っかかるのでした。おしまい。
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