『無垢の祈り』感想 ※ネタバレあり。
虐待されている少女が祈りを捧げる映画。
と、書かれた時点で「うわーそんな辛そうな映画は観たくない。勘弁」と思った人は絶対に観ない方が良いです。
そのくらいこの映画は力を持っている。
観た人の頭をゴルフクラブをフルスイングして叩き割りにくるような作品だ。
凄いとしか言いようがない。
主人公であるフミ(名演技)が常にふてくされたような表情でボサボサに伸びた髪から力強い死んだような目(どんなだ、矛盾している! と思うでしょうが、本当にそうとしか表現しようのない、凄い目の演技なのです。福田美姫さん素晴らしいです)を覗かせ、ほとんどセリフもなく、何を考えてるかわからない。
でもそれらは全てラストシーンでの魂の咆哮に集約されていたのだ、と気付いた時、涙を流してしまいました。
前半、廃工場で一人、棒を持って何の意味もない遊びをするフミに、「ああ、子供らしい意味のない仕草が溢れてるな、可愛いな」と思わず笑顔になってしまう。
しかしフミは周りの大人が誰も助けてくれない、虐待という地獄の中にいる。
もし、フミの環境が少しでも違ったら、助けてくれる大人がいたのなら、本当はこんな風に子供らしく遊ぶ少女になっていたのかもしれない。
しかし、そうはならなかった。
他の普通の子供と同じに生きることはできない子供に、あれほどまでの「叫び」を産ませてしまった世界に絶望して、泣いてしまったのです。
あの叫びは本当にすごかった。
今年度はラストの咆哮で、こちらの魂を蹴りあげられるような邦画が二本あって、もう一つは『クリーピー』だった。(完成したのは、『無垢の祈り』の方が先)
観る前と観た後では、確実に世界が違って見える。
それほどまでに凄い作品。
福田美姫さんはこの後きっと素晴らしい俳優さんとして活躍なさるでしょう。
その時、これがデビュー作です、と周りの人たちがこの作品を観たり、トーク番組の相手とかがこの作品を観たりすれば良いと思います。
ラスト、世界が逆さまに映されるが、あれはフミの視点だろう。
だとすると、彼女はもうこの世にはいないのか、それとも、全く違った価値観でこの世界を眺めることができるようになったのか。
例えば、そこに人がいたから殺す、みたいな価値観を得ることができたりするような……
※この先個人的な妄想。↓
中盤、眼帯をした女が首吊り縄の前に立つシーンがありますが、あれは未来のフミで、だから左目がないんでしょうかね?(人形の操演もしている)
で、胸に番号が付いていたので、多分ですが、殺人鬼と共に殺人を繰り返すことによって生きていた先、恐らく平山夢明にとっ捕まり、絞首刑になるシーンなんじゃないかな? と思いました。
#映画 #映画レビュー
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