デス電所公演『すこやかに遺棄る』雑感・中編
『すこやかに遺棄る』てタイトルが突如降りてきたのは、そろそろ本チラシを作らなくてはいけない、あらすじも必要である、というタイミングであるタイトルを正式決定しなくてはいけない当日の朝で、そこからは一気にイメージが広がりました。
死体遺棄、という言葉から、棄てる、棄てられる、という風にイメージがつながっていき、育児放棄、という言葉が突如顔を出してきたのです。
そこで、親に棄てられてしまった子供たち、の話が軸になるのだ。
とアイデアが生まれ、主人公の男たちが解体して遺棄する死体は、かつて、自分の子供を棄てた親なのだ、と一気に繋がっていきました。
しかし死体は語りません。
なので、主人公たちは、死体から、かつてこの遺体は子供を棄てたのだ、という情報を、何処かから得なければいけませんでした。
そこで、思いついたのがアメリカのテレビドラマ『CSI』シリーズや『BONES』シリーズです。
警察の科学捜査班や解剖医が主人公のこれらは、死体を解剖し、死因を調べていくうちに、初めはただの死体だったものから、新たな物語を発見していく、という大変に面白いミステリドラマで、俺はそれらの大ファンでありました。
なので、「解体しても仕方ない。解剖するのだ」と、思いつきます。
検死解剖により、死体に刻まれた謎を、主人公たちが解き明かしていくのだ、という流れになりました。これでいこう、とタイトルとあらすじともに正式決定。
素人が検死解剖なんか出来るのか、という問題はさておき、とにかく、『すこやかに遺棄る』というタイトルで、謎の死体を素人検死解剖する、という話に。
そこで、あらすじを、えいやとでっち上げ、制作に送りつけ、同時にツイッターやタンブラー等のSNSに掲載する用の画像をフォトショップで作成。
それがこれです。
これ、俺が山梨県に仕事で行った際に、南巨摩郡の鰍沢の周辺を歩いていた時に突如現れた謎の門で、遭遇した俺は「わあ不思議。写真に撮らなければ」という思いに駆られ、撮影していたものだったんですね。
SNS用に画像を作成するためにこいつを発掘してきて、「うわー。棄てられた感がとても強い」と思いながらいい気になって上記の画像を作成して、気分が良くなった俺はあろうことか、制作から言われていた情報公開日から一日早くこの画像をSNSにアップしてしまい、更に、既に別の画像で本チラシ作成をお願いしていたデザイナーさんにも無断で、「これをそのまま本チラシの表面に使いたい」と宣い、制作さんから二重に怒られることになるのでした。
本当にすみませんでした。
ちなみにこれは、実録犯罪ルポ本の表紙をイメージして作成しました。
で、謎の女性の遺体を解体ではなく、解剖する主人公たちの物語、と決め、あらすじもタイトルも無事できあがり、あとは、本編をどうすんべえ、と考えてる時、育児放棄してしまった母親の遺体が物語におけるもう一つの主人公であるならば、今から子供を産もうとする女性が、物語のその場にいることが、比較対象になって良いのではないだろうか? と、思いつき、急遽、若い女性を必要としたのです。
年配の女性ではなく、若い女性であることが必須でした。
何故なら、年配の女性は、あまり、育児放棄しないからです。望んだ末にやっと生まれた子供、ということも要因の一つであるとは思います。
で、若い女性で、このスケジュールで出てくれて、しかも、面白い女優はいないか、と考えた末、しりあがり寿さん主催の『さるハゲロックフェスティバル』で出会った、機嫌のいいブス、荒威ばる、に思い至ったのでした。
ばるは、熱帯の芝居で演技も見ていたし、アバンギャルドな作風の劇団に所属している割に、育ちが良いのでしょう、色々とキチンとした人物であることは知っていたので、「若くてブスを売りにしているエキセントリックな女優の割には、大人相手にもきちんと会話もできる」という要素をとても尊重し、お誘いしてみたところ、「今まで呼ばれ続けていた劇団かもめんたるの最新公演に呼ばれていないので」という理由で、参加を許諾してもらえました。やったね!
そういう事態により、ばるに出てもらうことも決まり、当初は「別の本番が間近なため、ほとんど稽古に参加できないかもしれない」と聞いていた浅見も、不幸で悲しい出来事が起こったことにより、「頭から全部参加できることになりました」となりまして、当初、「素人が検死解剖なんか出来るのか」という問題を見て見ぬふりしてたのも、「浅見(の役)が実は医大出身でして」という設定にすることによりクリアー出来たのです。
これで随分と物語の進みが早くなりました。
新たに母となる役のばると、検死解剖の知識のある浅見、という役を手に入れたことにより、これで解決かな、と思いつつも、自分の中では「もう一人面白がいれば完璧なのに」と思ってました。
デス電所の役者と、荒威ばる。だけでは、もう一つ、面白そう! が弱い気がしたのです。
想像できないような、面白要素があと一つあれば完璧なのに!
そこで、思いついたのが、ハブサービスさんでした。
ハブサービスさんと俺が知り合ったのは、5年くらい前で、今は亡き、渋谷のシアターDでした。
続く。
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