【第二期音楽マーケティングブートキャンプ】イベントレポート
2022年5月29日、ENTREが共催した【音楽マーケティングブートキャンプ】というプログラムの成果発表会が行われました!
日本の音楽業界は世界に比べてストリーミングへのシフトが遅れており、”ストリーミング後進国”となっています。
そのため、日本には世界の音楽市場で当たり前の存在である”音楽デジタルマーケター”が不足しています。今回のプログラムは、そんな日本の状況を変えるために企画されました。
その最大の特徴は、“実戦方式”であることです。
参加者はまず、音楽業界の第一線で活躍する講師陣からストリーミング時代に使える知識を徹底的に学びます。そのうえで、3ヶ月にわたって実際に活動するアーティストのマーケティングを担当します。
今回は全部で5つのチームが、それぞれのマーケティング活動の成果発表を行いました!
各チームの発表
1.和田彩花チーム
一番手はハロプロ出身で現在は幅広い活動をされている女性アイドル・和田彩花さんを担当したチームです。
彩花さんは、幅広い活動による知名度は高いものの、その知名度が音楽活動に結びついていないことが課題でした。
そこでチームが立てたKGI・KPIがこちらです。
KGI
・既存ファンにもっと音楽を聞いてもらう
・新規ファンに音楽を聞いてもらい、本人のことも知ってもらう
KPI
・Spotifyフォロワー50%増
上記の指標を設定した上で、ニューシングルのリリースに向け、チームはSNS施策を中心に実行していきました。
【初期施策】
・SNS整備
・Twitterスタッフアカウント開設
・YouTubeショート動画の投稿
【リリース直前施策】
・ジャケットの画像を分割し、複数回に分けての投稿で全容を公開
・ライブ配信
・ハッシュタグを通じての交流
・Spotifyのプリセーブ(配信前の曲を予約し、リリース時にプレイリストに追加する機能)喚起
結果としてSpotifyの中でさまざまなプレイリストに追加され、新規・既存問わず、ファンに一層曲を聞いてもらうことができたそうです。
その要因は、
1.リリース前にライブ配信等を行い、新曲を既存ファンに確実に届ける
2.新曲を聞いた既存ファンに、Spotifyのプレイリストに追加してもらう
3.プレイリストを通じて、新規ファンが新曲を聴いてくれる
という流れができていたためでした。
実際に総リスナー・フォロワー数が伸びており、分析の結果、それが新曲の影響であると検証できました。さらに、リスナーの年齢別構成比を確認してみると大きな変動があり、新規の方にも曲を届けられていることが確認できました。
2.D.Y.Tチーム
D.Y.TはSpotifyのプレイリストからの視聴ユーザーが多いのが特徴です。しかしSpotifyユーザー以外への認知が広まっていないという課題がありました。そこでチームは以下のようなKGI・KPIを立てました。
KGI
認知度を上げる
KPI
各種SNSのインプレッション数を2倍にする
そしてこの指標に基づき、以下のような施策を行いました。
【実行した施策】
・リットリンク(各種SNS、HPなどへのリンクをまとめたページ)の作成
・YouTube終了画面の設定(他の動画へすぐ飛べるように)
・ショート動画投稿
・Instagramやプレイリストへのピッチング
すると、Instagramでコンテンツがフォロワー以外にも多く届いたり、DMによるピッチングで2曲のプレイリストインを達成、といった成果がでました。
会場からは、「主軸となるSNSを決めて、それを中心に各SNSの役割を意識した設計ができるとさらに良くなると思う」「表示と認知は違うので、インプレッションよりも例えばエンゲージメントをKPIにした方が適切かもしれない」といった声がありました。
3.tomodatiチーム
tomodatiは若い男性に人気で、海外にも活動の幅を広げているバンドです。
tomodatiはコロナによってリアルイベントの開催が難しくなり、それに変わる定期的なファンとのコミュニケーションの機会が必要でした。
設定したKGI・KPIがこちらです。
KGI
インスタライブを定期的に行い、アーティスト活動のハイライト化
KPI
・TikTokのフォロワー数2倍
・各種SNSフォロワー数1.5倍
まずはインスタライブを主軸に据え、そこを起点に他プラットフォームへの導線を設計しました。
すると実際に投稿する中で、勝ちパターンを発見することができたそうです。さらに投稿するコンテンツ、タイミングなどのテンプレートも設計し、アーティスト自身が今後も続けていけることを意識したといいます。
最終的なKPI達成度はこのようになりました。
YouTube:6.9%up
Instagram:1%up
Spotify:4%up
TikTok:122%up
データ上で各プラットフォームの特徴や視聴者層の差が明確に表れていたため、使い分けやバランスが重要だと実感したそうです。
また今後の課題には、新曲リリース時に増えたファンをうまく登録まで誘導できていないことが挙げられました。
この課題に対し、今後は投稿時に#やURLを欠かさず貼ること、インスタライブやTwitterでチャンネル登録といいねの喚起を行うことで解決を図っていきます。
4.Heavenstampチーム
Hevenstampの課題は、10代〜20代のリスナーが少ないことでした。
そこでチームが立てたKGI・KPIは以下のようなものです。
KGI
10~20代の若い層のファンを作り、沢山の方に知ってもらう
KPI
・Spotifyフォロワー:18~27歳の割合 20%→30%
・Instagramフォロワー:18~24歳の割合 21%→30%
まず初めに、若い層のフォロワー獲得を目指していたため新たにTikTokを開設。3つのプラットフォームでショート動画投稿を行いました。
アーティストの強みを活かした歌ってみた・弾いてみた動画や、ライブ映像・ファンクラブ限定配信の切り抜き、日常の様子なども投稿しました。
同時にSNSの整備として
・全体のデザイン統一
・YouTube OAC化
・YouTubeの再生リスト作成
等も行っています。
新曲のリリース直前には、リリックビデオを3分割しての投稿、カウントダウン施策、当日のライブ配信も行いました。
その他にも、ピッチ、プレスリリース、広告出稿を行った結果、Spotifyで2つのプレイリストに入ることができました。
最終的なKPI達成度はこのようになっています。
・Spotifyフォロワー: 18~27歳の割合 20%→40%
・Instagramフォロワー: 18~24歳の割合 21%→41%
アーティストらしいコンテンツと、流行りのコンテンツのバランス感を取ること、多くの動画を投稿する中でも目的・意図を常に見失わないことに苦労したそうです。
一方で、普段からチームやアーティストとのコミュニケーションを絶やさず行えたことや、施策提案時に意図の共有をしっかりとできたことはよかったと振り返っています。
会場からは、「数多く施策を実行できたことが伝わってきて良かった。その中でキーとなるコンテンツを決めて勝負をかける瞬間を設けられると、さらに良くなりそう。」とコメントがありました。
5.WITHDOMチーム
WITHDOMチームはまず、アーティストへインタビューを行い、彼らの目指す姿と課題を洗い出しました。すると、カバー動画で認知は広がっているものの、”WITHDOM自身のファン・オリジナル楽曲のファン”がまだまだ少ないという課題が見えてきました。
課題の明確化に加えて、WITHDOMの特徴や届けるべき相手の整理も行った結果、チームはマーケティング方針の切り替えを決めました。
今までは幅広いジャンルの有名アーティストの公式カバーによって、新規へのリーチを図ってきましたが、アーティスト性・世界観のアピールに注力していくという方針です。
これを受けて、次のようなKGI・KPIを立てました。
KGI
“WITHDOMというアーティストが好き”というファンを増やす
KPI
・YouTube登録者:6.2%増
・Spotifyフォロワー:129%増
ショート動画を起点として、各種SNSへの導線設計を行いました。WITHDOMを好きになってもらうため、ショート動画は「歌のうまさ」を前面に押し出したアカペラなどのコンテンツを中心にしています。
アルバム発売前には、
・各種SNSのアイコンやプロフィールをアルバム仕様に変更
・YouTubeではMVのショートバージョンを投稿したのちにフルバージョンを投稿する
・各メンバーによるセルフライナーノーツ投稿
このような施策を打ち、アルバム発売に向けて期待感を高めるようにしました。
その他にもYouTubeをOAC化したり、コミュニティ機能も活用したところ反応がよかったそうです。
結果として、KGIについては
YouTube:3%up
Spotify:6%up
このような数値となり、その他Spotifyのデイリーリスナー数や、AWAの再生・お気に入り数が2~3倍になるという成果も得ることができました。
純粋にバズを狙うだけではなく、”歌のうまさを押す” ”トライブを意識した選曲をする”といった、目的にあった軸のまま数字を伸ばせたことがよかったとチームは振り返っています。
会場からは「YouTubeは登録者が1万を超えると世界が変わるのでぜひ頑張ってほしい」などとコメントが寄せられました。
まとめ
プレゼンを聴いた会場からは、全体を通して以下のようなコメントがありました。
・各講義での学びが実践されていて感動した。
・日本ではApple Musicのユーザーが多いので、もっとその話があってもよかった。
・今後はグローバルな展開を想定して進めないともったいないので、海外への伸ばし方も是非考えてみてほしい。
いかがだったでしょうか。各アーティストごとの異なる課題に対して、各チームの知恵と努力が見えた会だったかと思います。
参加者の中から、これからの日本の音楽業界を引っ張るデジタルマーケターが生まれることを楽しみにしています!
音楽マーケティングブートキャンプの第3期開催が決定しました!!!
日本にはまだまだ実戦で戦える音楽デジタルマーケターが不足しています。
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