アーティストのファンベースを成長させる広告運用のコツ。【金野 和磨氏/第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.12】
第十二回は、Gerbera Music Agency合同会社 代表社員 金野 和磨氏を講師にお迎えし、「広告施策と戦略の立て方/有料広告の打ち方とポイント」についてお話いただきました。
大まかな流れ
・Gerbera Music Agency合同会社について
・広告運用事例の紹介
・Instagramストーリーズ広告について
・広告の運用法について
・広告の限界について
・その他ポイント
・音楽系広告代理店向けの人材
〇Gerbera Music Agency合同会社について Gerbera Music Agencyは、音楽業界特化型のインターネット広告代理店です。「日本人アーティストがグローバルで活躍するための環境づくり」を目的に活動しています。提供サービスとしては、
1.インターネット広告運用
2.ストリーミングプロモーション
があります。
また、インターネット広告の中でも、Instagramストーリーズ広告やYouTube広告、TikTok広告を多く運用しているとのことです。独自の強みとしては、ファンベースの創成を最優先に行っていることや音楽シーンとテクノロジーの両方を理解していることが挙げられます。
現在の音楽シーンやリスナー層を理解しているため、シーンのトレンド・動向を踏まえたターゲティングが可能です。同時に、SNSのオーディエンスデータなどを活用した精度の高いターゲティングを行います。単に再生回数を稼ぐだけではなく、「アーティストのファンベースの成長」を実現させます。
〇広告運用事例の紹介 実際の広告運用事例をご紹介いただきました。広告効果を踏まえ、反応の良かった値域に集中して広告運用を行ったところ、その地域でのバイラルチャートで上位ランクインできたとのことでした。
〇Instagramストーリーズ広告について Instagramストーリーズ広告は、「最もファンベースの成長に適した広告プラットフォーム」であるそうです。そして、広告の成否に影響を与える要因としては、重要度が高い順に、
1.広告の動画
2.エリア選定
3.属性のターゲティング
があるといいます。というのも、広告動画がユーザーの目を引くものでなければ次のアクションに繋がりません。そこで、ハマる動画(スワイプアップが取れる動画)の傾向について教えていただきました。
ポイントとしては、
・冒頭二秒の引き
・視認性
・シンプルな文字情報
があります。例えば、人・キャラクターの顔が見えているかどうかやアーティスト名が明示されているか、英語表記も含んでいるか、などのチェックが必要です。
また、A/Bテストの重要性についてもご説明いただきました。一楽曲から複数の広告動画を作成・入稿し、広告配信後のパフォーマンスが最も高い動画に予算を寄せ、効果を最大化させることが重要だといいます。
SNS広告は、ハマれば少額でも伸びますが、ハマらなければ投資費用に関わらず結果は期待できません。そのため基本的には、複数動画によるA/Bテスト配信を推奨しているそうです。
エリア選定については、まず、Spotify上陸済のすべての国へ配信し、反応を見てから絞ることを推奨されていました。その上で、日本人アーティストがフィットしやすいエリアとしては、東南アジア・中南米・東欧などが挙げられるとのことでした。
〇広告の運用法について
広告の運用において、「目的」の最適化が重要だといいます。SNS広告の機械学習は、人間が選定した「目的」に沿って最適化されるため、人間が適切なキャンペーン目的を設定しなければ、機械学習は機能しないといえます。
例えば、
・認知(リーチ・インプレッション)を最適化するキャンぺーン
・トラフィック(リンククリック)を最適化するキャンペーン
など、広告の目的は多種多様です。
次に、運用で見るべき指標について、定量面と定性面からお話いただきました。
■定量面
・CPF:一フォロワーあたりの獲得単価
・CPA:SpotifyプロフィールページorLinkfire到達単価
・CPC、CTR、CPMなど:クリック単価、クリック率、広告100回表示当たりの単価など
■定性面
・YouTubeのコメント欄
・Instagramのコメント欄
・その他ツイート数など
があるとのことでした。
また、広告の遷移先をSpotifyにする理由としては、ユーザー数の多さや費用の安さ、アルゴリズムの発達度を活用できる点などが挙げられるとのことでした。また、プロフィールページに飛ばす理由としては、フォローボタンがあることやアルゴリズム化されたプレイリストを介し、多くのストリームを得ることができるようになります。
一方、Linkfireを遷移先にするメリット・デメリットとしては、総客数の減少や適切な設定・運用を行わなければ効果が減少する点が挙げられます。
〇広告の限界について
作品を広めるステップとして、
1.知ってもらう
2.広げてもらう
3.愛してもらう
がありますが、広告にできるのは「知ってもらうまで」だといいます。
〇その他ポイント
MVの英語字幕対応の推奨する理由としては、
1.MVにアーティスト英語表記・楽曲の英語表記を入れなければ、広告を見た海外リスナーがMVにたどり着かないから。
2.歌詞の内容が伝わらなければ、海外リスナーを掴めないから
があります。英語字幕が難しい場合は、歌詞の英訳をの記載するなど、歌詞の内容がリスナーに届くようにすることが大切だといいます。
また、日英併記でSNS投稿することで、海外リスナーに寄り添った活動になるため、可能な限り取り組むことを推奨しているとのことでした。
〇音楽系広告代理店向けの人材
1.音楽が聴ける
2.音楽業界での経験
3.アドテクの知見
これらがそろっている人材は、かなり需要が高いとのことでした。特に、音楽が聴けるという点は非常に重要で、幅広く音楽に触れていることが強みになるとのことでした。
また、音楽業界で必要とされる音楽デジタルマーケターになるためには、
”マーケティング業界の知見やトレンドを「音楽業界の言葉」で語れるようになること”が重要であり、双方の業界への深い理解と翻訳力が求められるのではないかとのことでした。
〇次回予告
次回10月24日は、株式会社トライバルメディアハウス Modern Age 事業部事業部長 高野 修平氏を講師にお迎えし、「音楽マーケティングにおける戦略PR」についてお話いただきます。