世界を巻き込む音楽マーケテイングとは?【籔井健一氏/第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.8】
第8回は、グリッジ株式会社代表取締役の籔井 健一氏を講師にお招きし、「#君の虜に~=summertimeから紐解く海外マーケティングについて」についてお話しいただきました。
大まかな流れ
〇グリッジ株式会社様について
〇日本人アーティストの海外マーケティングについて
・#君の虜に~現象とは?
・マーケティング施策
〇To B開拓
〇グリッジ株式会社様の近況
〇次回予告
〇グリッジ株式会社様のご説明
グリッジ株式会社は、「枠を作らず、ワクワクを作る」というモットーを掲げる、IP((intellectual property=知的財産権)ハックベンチャーです。
感染症の影響で世界が同じ状態になった今をチャンスにしたいとのことで、今回はグローバル、デジタル、UGC、ビジネスディベロップメントという四つの柱についてお話いただきました。
〇日本人アーティストの海外マーケティングについて
・#君の虜に~=summertime現象とは?
2020年から、2016年3月に結成された3人組バンド”cinnamons”と70~80年代のニューミュージック・シティポップなどを、90年代のJ-Pop風に再構築させたサウンドが特徴のポップスバンド”evening cinema”のコラボ曲「summertime」が、東南アジアから始まって世界中で愛された現象のことです。
Spotify:国内外有名プレイリスト多数ランクインし、ベトナム・フィリピンでのバイラルチャート1・2位獲得(日本国内は最高9位)/Spotify2020海外で再生された楽曲第7位(楽曲ランキングは上位10曲中8曲がアニメタイアップ曲)
TikTok:東南アジア諸国で使用楽曲一位を記録(2020年7月)/流行語大賞2020音楽部門受賞
YouTube:カバー動画1.3万本以上(グローバルでUGCが生成されていた)
上記のような、グローバル規模での輝かしい経歴を残しました。
・マーケティング施策について
音楽業界での就業経験がなかった薮井氏は、自身の経験を活かしマンダラートを用いてビジネスを形成しようと試みたそうです。
具体的には、「世界とsummertimeのUGCと橋」を作ったといいます。まず、自社のIPを理解し、4つの方針を決めました。
1.YouTubeに絞ってUGCを促進
2.UGCを煽り、橋を作る
3.アーティストも手を動かす
4.PDCAを回す
ここから、この方針を踏まえた3つの具体的な施策についてご紹介します。
1. コールアンドレスポンス作戦
公式から、一つ一つUGCにコメントをしたそうです。その結果、カバーやリミックスを公式が認可していることがユーザーに広まり、UGCの促進に繋がったといいます。また、そのコメントから公式の動画への呼び込みにもなるため、再生回数や登録者数を増加させることにも成功しました。
これを踏まえ、アーティストと戦略・戦術ミーティングを行いました。どんな施策を取り、どのような効果が表れているのかを共有するためです。そして、アーティスト自身に面白いなと思ってもらい、自ら積極的にマーケティングプランに取り組んでもらえるようにしました。また、振り返りミーティングで数字を振り返ることも欠かせないといいます。
2.evening cinema原田夏樹氏の協力
藪井氏は、「summertime」の作詞作曲を担当されているevening cinemaに全面的に協力してもらうことで、再生回数の向上につながるという仮説を立てました。具体的には、籔井氏が営業を行い、10作品をリリースしました。連日リリースをすることで、再生回数が反映されることを狙ったそうです。
また、デモ音源を生配信で初披露するなど独自の挑戦も行いました。コラボアーティストや業界関係者を呼び込み、共に繁栄させる仲間=共繁者を作ったといいます。
〈企画事例 〉 ・世界最大の芸術祭フリンジ・フェスティバル公式テーマソングに抜擢の「Night Magic」を書き下ろし
・インドネシア人YouTuberレイニッチとのコラボ三部作
〇To B開拓
チームとして、アーティストが稼働が必要ないTo B(企業向け)の営業を行いました。その先のTo C(消費者)に知ってもらい、再生回数などの回転率を上げることを目指したそうです。また、籔井氏は聴覚を市場の一つと捉え、そこに狙いを定めていたといいます。
・対日本(2020~2021)
・キャラクター×音楽:”うさぎゅーん!”などLINEミュージックスタンプ展開
・小説×音楽:楽曲をイメージした小説をチャット小説アプリpeepで展開
・メーカー×音楽:国内メーカーの広告CMのテーマソングを担当
・ファッション×音楽 :30ブランドを展開するアパレル上場企業アダストリア社の音楽プロデュース
また、2021年度も evening cinema原田夏樹氏の精力的な活動を継続しました。Instagram liveなど、既存のファンへの発信も欠かさず、下記のような新規のファン獲得につながるような施策を行いました。
・アパレル上場企業の音楽プロデュース
・楽曲提供
・世界最大のアイドルフェスTIFプロデュース
ここでのポイントは、「売りたいもの・コトを分析し、ニーズ(顧客起点)に対して営業・マーケティングを徹底的にする」ということだそうです。
〇グリッジ株式会社の近況
次に、グリッジ株式会社の近況についてのお話がありました。日本の音楽カルチャーが大好きな海外クリエイターのエージェンシーを作られたそうです。グローバルに活躍する「ミドルインフルエンサー」をネットワーク化することで、小さく深い熱狂をグローバルに展開しています。
具体的には、レーベルや音楽出版会社から予算をもらい、ターゲット国に合わせたプロモーション設計、シンガーキャスティング、リリースを行うことで海外クリエイターのファンやプラットフォームを横断するリーチを実現させます。
また、最後に世界と日本の架け橋に(グローバル×ブリッジ=グリッジ)なることを目指す上での三つのステップを教えていただきました。
1.音楽グローバルマーケティング
英語と現地語が話せる+日本文化への理解があるアジアの人材は非常に貴重だといいます。人口三億人のインドネシアの平均年齢は27歳であることなどからも、現地の企業や人材と組みながら、この市場を抑えることは音楽業界に限らず日本の企業にとって重要だと考えているそうです。 2.アジア起点のグローカライズサポート
アジアで再生回数などの数を稼ぎ、USAなどに展開していくことは一つの有力な手段ではないかと仮説を立てているそうです。 3.一層のグローバル展開 今後も海外マーケティングの実践を続けていくことで、仮説検証をしていきたいとのことでした。
◯まとめ
薮井氏は、パンデミックの中でも「やったもん勝ち」という精神で、挑戦し続けてきたそうです。 今もまだ実践中であり、失敗もしていると赤裸々に語ってくださった籔井氏の姿を見て、受講生も良い刺激を受けたようでした。
〇次回予告
次回9月26日は、The Orchard Japan ヴァイス・プレジデントの金子雄樹氏を講師にお迎えし、「Orchard Goを使ったデータ分析/世界に向けたマーケティングの最新事例」についてお話いただきます。
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