【防音工事の様子】夢の防音室を作るまで Vol.9
どうも、こんにちは。
オーディオライター、音響エンジニアの橋爪徹です。
ハイレゾ音楽制作ユニットBeagle Kickでは総合プロデュースも勤めています。
前回は、入居から工事初日までをお送りしました。引っ越しから工事開始までわずか一週間。なかなかに慌ただしい日々でした。部屋の音響特性を工事前に測ったりもしました。初日は、解体から始まりたった一日で元の寝室は見る影も無し。これから工事が始まるのだと、引き返せない重圧を感じたのを思い出します。
このnoteでは私が防音室を作るまでを書き残すことで、オーディオファン・映画ファンにとって部屋を作ることを身近に感じて欲しいと思っています。
「別世界の話」、「金持ちの道楽」といった、ある種突き抜けた行為だと思わないで欲しいのです。連載を終える頃には、その意図が伝わっていたら本望です。
今回は、数週間にわたる工事の模様をかいつまんでお伝えします。入居した状態で工事を進めてもらいましたので、月曜から土曜日まで毎日行われる工事をリアルタイムに実感できました。職人さんが帰られたあとの様子を毎日写真に収めています。アコースティックラボの許可もいただいて、公表しても問題の無い写真を沢山お届けしたいと思います。
(注意:室内への立ち入りは特別に許可を得ています。基本的には、危ないので止めましょう)
解体と引き渡しを除いた工事日数は全部で13日間。内装クロスや電気工事など特別な場合を除き防音工事は職人さんが一人で行います。ポイントごとにアコースティックラボの設計担当者や現場監督も訪れていました。
工事日程と進捗は、紙媒体で分かるようにしてくれました。以下がその実物です(一部モザイク)。予備も含めて工程が組んであります。仕事から帰って、「どこまで進んだかな?」と紙を見るのが毎日楽しみでもありました。掲載場所は玄関ドアの裏側でした。
解体の翌日は、床の土台がほぼ出来上がっていました。床の縁切りといって、スピーカーやアンプを置く部屋の奥と手前のリスニングエリアの床を土台の部分から切り離す工夫です。これによりスピーカーからの振動が床を広範囲に共振させてしまうことを防ぎます。
床の土台がほぼ出来上がっています。右側に縁切りが見えます
ウォークインクローゼットだった場所は資材置き場に。このスペースのお陰で他の部屋を専有しなかったのが幸いでした
手前がリスニングエリア、奥がスピーカーやアンプを置くエリア。途中で縁が切れています
これが床の断面です。浮き床構造にすると共に、浮いた隙間にはロックウールを敷詰めます。上と下の合板で石膏ボード3枚をサンドしています
週が明けて月曜日、壁の骨組みが出来てきました。真新しい木材を見るとワクワクしますね。見慣れない工事用機械に思わず触れてしまいそうになりますが、グッと我慢し写真だけにします。(当然)
このコンクリートの向こうは隣戸です
翌日は電気の配線があちこちに。スピーカーケーブルやHDMIケーブルが通るCD管も仮配線されています。アコースティックリバイブの屋内配線ケーブル(Fケーブル)は一般的なVVF(灰色の電気配線)に比べて堅いので作業が大変だったようです。ちなみにVVFはエアコンや照明の配線となり、分電盤のブレーカーからオーディオ回線とは別にしてもらいました。
オレンジの管がCD管。将来的にケーブルを交換できるようにするためです
黒がアコースティックリバイブのFケーブル
灰色が一般的な屋内配線用のVVFケーブル
謎の木箱。計4つ。翌日、種明かし!
翌日、水曜日は吸気と排気のダクトが設置されていました。前日の謎のBOXはこのためだったのです。また造作の埋め込みサラウンドスピーカーBOXも設置されています。写真だと鳥の巣箱みたいです。天井の骨組みが新たに登場し、ロックウールによる断熱材も一部はめ込まれています。天井の合板もよく見るとちょっとだけ付いてますね。
こちらは給気ダクト
入り口側に設置されたサラウンド(Rch)、サラウンドバック(Rch)のスピーカーBOX
次の日は、驚きました。窓がありません!ついに塞がりました。ロックウールがほぼ全ての壁に敷き詰められて天井には既に石膏ボードが。これから壁に取り付ける石膏ボードの山が圧巻です。工事初日に謎の木の枠がありましたが、石膏ボードの台座だったのですね!謎が解けた!
窓がない!
石膏ボードはこれでも全部じゃありません。さすが防音室の工事です
左から順にHDMI&スピーカーケーブル配管、テレビアンテナ、オーディオコンセント×2
翌日は天井の石膏ボードがさらに分厚く増し張りされて、防音ドアの枠も取り付けられていました。天井付近の壁側面から突き出る板は、後に設置される化粧梁を支える役目があります。
突き出る板は、化粧梁を支えるためのもの
防音ドアの枠
次の日は週末です。石膏ボードをひたすら重ね張りしてもらった様子です。ようやく部屋らしくなってきました。
突き出ているクリーム色の配管はエアコンの冷媒管
翌週月曜日はスクリーンがぶら下がる部分の天井が登場。入り口側の防音ドアも取り付けられました。思い返せば、これが高さも幅も両方特注になって高く付いたドアでした。
穴が空いている部分は塞がって、真下にスクリーンが設置されます
給気ダクトのBOXへ向けて石膏ボードを円形にくりぬいています
翌日になると、簡易レコーディングブース側の防音ドアも取り付けられました。床の段ボールをずらすと新しい合板フローリングが出てきました。キレイです!テンション上がりました。
当初、レコーディングブースは元からの壁に直接クロスを貼る予定でしたが、石膏ボードを1枚増し張りしてもらいました。これにより2~3㏈遮音性能が高まったそうです。
レコーディングブース側の防音ドア
ブースの床には合板フローリング!ステキです!
このライブ用スピーカーは何のため?? 答えは次回更新分にて!
翌日は細かな部分に手が加えられていました。完成したときのことを想像させる、ある種「チラ見せ」の面白さ。これは入居後の工事でないと味わえません。
照明と換気扇のスイッチ用配線
翌日木曜は休み。金曜日は、ちょっとだけビニールクロスが貼られていました。工事用の照明がなくなってしまったので、懐中電灯で照らしながら撮影。
次の日はクロスがすべて貼り終わり、完成時の色合いを初めて確認することが出来ました。この日のときめきと言ったらないですね!
「やべー!マジやべー!部屋だ-!僕の部屋だー!」
語彙がなさ過ぎですが、ホントこんな気持ちです。このかっこいい部屋で音楽や映画を楽める思うとワクワクが止まりませんでした。
翌週月曜はお休みで火曜日になりました。照明の取り付け、コンセントの取り付け。スピーカーケーブルとHDMIケーブルの配線。エアコンや吸排気口の取り付け。排気ファンの設置(浴室側)。照明スイッチの設置。あらゆる部屋として使うためのインフラが設置されました。全体像はもう見えてきました。いよいよ明日は引き渡しです。
天井のプロジェクター用コンセント
録音システム用コンセント 右の穴は、レコーディングブースに向けた通線口です
エアコンの冷媒管は露出ではなく背面の接続が可能でした!
やってみたら出来たということで、設計の段階よりカッコ良くなった一例
サラウンドスピーカーBOXにはケーブルが到達
レコーディングブース側のコンセント。左側の穴は通線口
右側の排気口内部にファンがあります
……完成を目前にして今回はここまで!
入居しながらの工事は、目立ったトラブルや不便な点も無かったと思います。
週4で仕事に行っていた私は、職人さんと顔を合わせるのは週に1~2回程度。ほとんどは朝出かけた後に職人さんが来て、帰る頃には既にいないという具合です。職人さんは適度に礼儀正しく、無駄な気遣いもなく、いたってスマートでした。住人に気を遣うあまり、何度も事あるごとに声掛けられたりするとそれはそれで迷惑ですよね。さじ加減を心得ているのだと思います。トイレの換気扇が付けっぱなしだったときは、「あらあら」って感じでした。それもアコースティックラボさんとのやり取りで気軽にフィードバック出来ましたし、実にストレスフリーでした。
ただ、気にする人は「工事中の騒音」や「工事中のラジオの音」がきついかもしれません。僕は、音が鳴るのは当たり前だし、作業中にラジオくらい聞かせてあげたいと思う人なので、気にしませんでした。
ちなみにマンション住民とのトラブルやクレームはありませんでした。資材の出入りなど丁寧にやっていただいたのでしょう。まぁ、このあたりはプロなので、あってもらっては困ります。もちろんトラブルになった場合は、速やかにアコースティックラボと相談するのが得策です。
いかがだったでしょうか。
おそらく防音工事の過程をここまで克明に写真で紹介した記事は希有だと思います。住人の視点で見た、バイアスのない(遠慮の無い)撮影によって見えてきたのは、防音工事ってすごい!大がかり!そしてカッコいい!
……読者の方に少しでも工事のイメージが伝わったら嬉しいです。
さて、次回は受け渡しとその後の手続きなどを紹介していきます。出来たばかりの防音室は一体どんな様子だったのか。こちらも詳細な写真を交えて紹介しますのでお楽しみに!
技術監修:アコースティックラボ
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