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気になる反響音を抑えよう! 「SHIZUKA Grace タイプDECORI」で静音化にチャレンジ!

提供:株式会社静科

SHIZUKA Panel(シズカパネル)という吸音パネルをご存じでしょうか。
静科が開発・製造を手掛ける、室内音響のための吸音パネルとして、音楽業界関係者を中心に話題を集め、最近では、にわかにオーディオファイルにもファンが増え始めた注目のアイテムです。

私は過去に2回、シズカパネルを試用したレビュー記事を書いてきました。音楽制作に寄ったレビュー記事や動画はいくつも見つかりますが、オーディオ・ホームシアターファンに向けて書かれた記事は少ないので、実は貴重だったりします。
もともと、ともに音楽ユニット「Beagle Kick」をやっている作曲家の和田貴史が絶賛&導入していて、僕も興味を持ったのが最初でした。

本記事では、そんな静科が開発した新しい吸音パネル、DECORIを紹介したいと思います。なんと、静科さんよりご連絡をいただき、DECORIを1セット試す機会に恵まれました。ありがたや~です!

SHIZUKA Grace タイプDECORI(デコリ)

GraceシリーズのDECORIとは何か

Shizuka Graceシリーズは、これまで私が紹介してきた音楽制作・音響用のSHIZUKA Stillness Panelシリーズとは別のラインとなります。その概要は、以下の様になっています。

事務所・オフィスやワーキングスペースなど、屋内の静音化や音響調整に特化した製品です。室内の反響音を低減し、電話やWEB会議の話し声が聞こえやすく・話しやすくなります。また、外部に漏れる音も軽減するため、プライバシーの保護にも役立ちます。テレワーク、リモート作業時の静音化にも最適です。

静科公式サイトより一部を抜粋

ということは、静音化用?と思われるかもしれませんが、DECORI発表時のアナウンスにはこうもあります。

室内の反響音を減少させて快適な音環境を提供し、外部への音漏れを軽減する貼り付けタイプの吸音材。同製品を使用することで、スタジオの録音品質が向上するほか、住宅では静寂な空間を実現。外部への音漏れも軽減できる。

AVWatch 2024年7月16日 15:20付け記事

SHIZUKA Stillness Panelシリーズは、体積や重さからは信じられない程の効果があり、ルームアコースティックへの影響は驚くべきものですが、価格もなかなかのプライス。「効果はあるんだろうけど、お値段がねぇ~」と悩んでいた方もDECORIなら通常価格 31,900円(税込)と現実的な視野に入ってくるのではないかと思います。ちなみに4枚で1セットです。
とはいえ、Graceシリーズ。本当にオーディオやホームシアターに効果あるの??って気になる方に、私の体験したレポートが参考になれば幸いです。

まず外観から。木のように見える凸凹の部分は、木材ではありません。この部分自体が吸音をします。

凸凹の吸音面

凸凹形状によって、効率的な吸音・拡散にも寄与しているそう。パネルの厚みを異なる形で配置することで、中~高周波数帯域に対する吸音性能を最適化しているとのこと。素材にはペットボトル再生原料のポリエステルを使用。サステナブルです。さらにホルムアルデヒドフリー。
外形寸法は500×500×35mm(縦×横×厚さ)。重量は1枚800gです。価格は4枚セットで29,000円(税別)。

壁に貼り付けて使用することが前提となったデザインのため、スリムでオシャレです。パッと見で吸音材に見えないので、生活空間を壊さないのも魅力ですね。
ちなみに今回の試用では接着は避けました。実際は、壁面に適した両面テープ(別売)を裏面に貼って、壁に貼るのがよいと思います。賃貸などで両面テープが使えない方は、養生テープをあらかじめ壁に貼り、その上から貼り付けるのも一案です。どこに貼るか迷うときは、立て掛けるだけでもだいたいの効果は分かるので、あちこち試して、ここぞという場所に貼るといいでしょう。

壁面設置のイメージ

静音化と反響対策の効果をチェック

まず、本来の用途である「反響音を減少」「音漏れ軽減」について確認して見ましょう。14畳ほどのリビングで自分で声を出してみます。部屋の響き具合を確かめた後、DECORI 4枚を壁に立てかけてみます。

PCデスクの横
キッチンカウンターの下
テレビ台の上(カバーはシルクのオーガンジー) 
棚の前(テレビの右横)

いや、これは激変! ビックリです! 全然違います。
私は、昔声優を目指して上京し、発声練習などを自宅で行なっていたのですが、その時やった「天の宮のお宮の前の飴屋に あんまと尼が雨やどり……」とか「拙者、親方と申すは、お立ち会いの内にご存じのお方もございましょうが……」などをある程度声を張って発声してみたんです。
DECORIを使うと、部屋の余分な反響が大幅に軽減したではありませんか! こんなに薄いのに想像以上の効果です。余分な反響があると、自分の声の音量調整が難しくなり、無駄に大きな声を出してしまいがちです。必要最低限の反響であれば、自分の耳に返ってくる外からの音はシャープなので、発声練習もやりやすいんですね! 俳優・声優(役者)のレッスン場にも適度な吸音は必要かもしれません。これはWEBラジオの収録などを自宅で行なう人にもナイスアイテムだと思います。お互いの声が聞き取りやすくなり、対話のストレスが軽減されそうです。(余談ですが、無駄な反響がなくなると、自分の声がちょっと良くなったようにも感じます)
そして、静音化ですが、DECORIを設置すると、部屋の空調の音が少し静か聞こえるようになりました。(一定風量で送風運転してるエアコン)
さらに冷蔵庫などの生活音、外からわずかに入ってくる環境音なども含めて、部屋の中の静粛性が上がり、それこそキーボードのタッチ音だけがはっきり聴こえるという。
これは、配信などをやられている方も有用だと思います。余分な響きは、OBSにリバーブ除去のプラグインを挿したりする方法もありますが、どうしても声の鮮度が落ちます。特にリバーブ除去のプラグインは声の劣化が著しいので、なるべく録り音の段階でケアしたいところ。DECORIならバックに映り込んでいてもオシャレなプロップとして十分いけるデザインだと思いますし、顔出し配信者にとっては一石二鳥かも。

音漏れ効果のチェック

続いて、音漏れのチェックです。ドラマCDを一般家庭で聞くようなボリュームで流して、DECORIがない状態で隣の寝室から音漏れの具合を確かめます。次にDECORIを4枚設置して、もう一度寝室で音漏れをチェックします。
明らかに低域の音漏れが緩和されています。DECORIがない状態では、モコモコした音が壁を伝って漏れていましたが、DECORIを置くと大幅に緩和されました。(音漏れ自体が無くなるわけではありません!)
リビング側の音量は、スマホの騒音計アプリ「dB Volume」では、約3dB下がりました(リスニングポイントにおいて)。アプリではほんのわずかの差ですが、実際に聴いてみると、無駄な低域と反響が軽減されるお陰で、声のディテールがより明瞭になりました。声の芯が自然と捉えられます。(騒音計の値の差は、環境によっても変わるので、あくまで一例です)
一方で、高域に若干の雑味(付帯音)が混ざりました。これは表面の吸音素材にポリエステル(化繊)を使っているためと思われます。私のリビングは、化繊のカーテンを表面材シルク100%に変更し、スピーカーの間にあるテレビにはシルクオーガンジーのカバーを掛け、化繊の絨毯もウール100%のカーペットに変更することで、質感に配慮していますから、違いが明確に出るのでしょう。天然素材の方が繊維の画一性がないため、反射する音に固有のピークを発生させにくいと言われています。
この高域への影響は、(以前のレビューでも紹介しましたが)吸音面にポリエステルを使ったSHIZUKA Stillness Panel SDMでは確認されましたが、アルミ繊維のSHIZUKA Stillness PanelやLACOSは特段感じませんでした。

SHIZUKA Stillness Panel B-500シリーズ

さらに音楽でも試してみます。低域がしっかり入ってるジャズフュージョンを流します。まずリビングで聴いた感じは、余分な響きやブーミーな低域が適度に吸音されたおかげで、ベースラインがタイトにカッコよく、ドラムのスネアもキレがよくなりました。サックスのディテールも贅肉が落ちてクッキリ。電子ピアノの音もさらにシャープに捉えやすくなりました。
隣の寝室に移動してDECORIの有り無し比較(音漏れチェック)をやってみます。最も気になっていたベースの中低域の音漏れが多少軽減されています。決して、音漏れがなくなる!という訳ではないのですが、気になる中~低域の音漏れを少しでも緩和できることでしょう。

入眠時、DECORIは有用か(大真面目)

部屋の静粛性を高められるなら、寝室に置いても環境は良くなるのでしょうか。私の寝室は、約5畳の洋室で正方形に近い寸法のため、定在波が著しい残念な部屋です。そのため、音楽鑑賞の設備は設置していません。就寝時は、シャープのプラズマクラスターエアコンで一晩中送風(静音モード)です。

また、シャープの空気清浄機も使用(風量最小)しています。

この環境でDECORIを使ってみました。空調の音は消えません。清浄機の音も消えません。消えないんですが……明らかに体感が違うのです! 騒音っぽさが軽減されていると言いましょうか。

ベッドの真向かいのチェストに2枚立て掛ける
チェストの上にも1枚
ベッド側(チェストと反対側)の壁に貼り付ける想定で立て掛ける

「静かな寝室」において「うるさい」と感じる帯域を効果的に吸音し、さらに余分な反響まで抑えているので、空調の音は消えてないのに、騒音らしさが軽減されています。帯域的には、ロー寄りのミッドです。劇的な静音化という程ではないものの、明らかに快適さが違います。今晩はこれで寝ようと思います。
……って、試している最中に危うく(?)眠りそうになりましたけどね!
一晩寝てみての感想としては、トイレや給水で目を覚ました際の、感覚がちょっと変わりました。旅行先でホテルに泊まったとき、シーンと静かでデッドな空間に入ると、いつもと違う感覚になりますよね。あれに近いです。繰り返しますが、エアコンの送風と空気清浄機の稼働音は鳴っています。でも、うるさいと感じにくくなっています。朝、目を覚ましたときも、清浄な空間にいる感覚? 自宅らしからぬ、ラグジュアリーな空気感を感じたように思います。これは寝室や書斎に使っても良さそうです。
あ、今晩も使って寝ますよ。これはきっとハマります。

専用防音室でゲーム・映画・音楽三昧!

最後は、私の防音スタジオである「Studio 0.x」に使ってみようと思います。既に弊スタジオは中低音対策でLACOS-500を2つを愛用していますが、こちらを撤去しDECORIのみでゲームや映画を視聴してみました。部屋の広さは6畳弱。置き場所は、スピーカーの斜め後ろ左右に1枚ずつと、視聴位置の真後ろの壁左右に1枚ずつです。

視聴位置の真後ろ(左は出入り口、右は収録ブースのドア)
右スピーカーの後方に1枚
左スピーカーの後方にも1枚

ゲームでの効果

まずゲームです。2chステレオで制作された「英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-」。歓楽街であるシャルダン地区を探索してみたところ、DECORIを設置した方が没入感がUPしました。まず最初にハッとしたのは、街の環境音のクリアさです。なんとなく「雑踏に聴こえるSEが鳴ってたなぁ~」というDECORI設置前に比べて、それが車の音なのか、人のざわめきなのか、より分かり易く耳にスッと入ってきます。街の規模感も、雑踏の音からより感じ取りやすくなりました。実際に街を走っている車は、位置も含めてSEが連動するのですが、移動感も認識が楽になっています。余計な響きが軽減されると、定位感や移動感も鮮明になります。
そして、足音もクッキリと聞えてきて、移動している感が高まりました。「カッ、カッ、カッ。コッ、コッ、コッ」という音の一つ一つがディテール豊かに鳴っていて、ちょっと気持ちよくなってしまいましたね。AAAタイトルなどと比べると、大味なSEではあるんですが、音声のクッキリ・はっきり感も相まって、よりゲームの世界観に没入し、集中してプレイ出来ることは違いないでしょう。

スクリーンは80インチ

映画での効果

次に映画も視聴してみました。TSUTAYAのレンタルで借りていた「オッペンハイマー」のBlu-ray。
……なんと言いますか、淀んだ重低音は耳障りなだけですね。当たり前ですが、実際に試すと違いは歴然です。中低域のコントロールが不十分な部屋でサブウーファーがいくら鳴ったところで、ボヤけた爆発音や、モコモコした地響きが味わえるだけ。サブウーファーのボリュームを必要以上に下げることなく、適切な吸音と反響の軽減を行なうだけで、クッキリした低域による映画館らしい音響が楽しめました。
室内のシーンも台詞の響きがより映像に合ってリアルになります。講堂みたいな場所で聞く声と、オフィスの部屋のような狭い空間で聞く声で、その響きから空間のボリューム感まで伝わってくるのです。声のディテールがクッキリとして、喉や顔の骨格まで伝わりそう。

椅子はコンティークスのRosa

音楽での効果

最後に音楽もチェックします。
まず、スピーカーの斜め後ろに1枚ずつ設置します。スピーカーの後ろの空間は音が籠もりがち。ケアしたい候補の筆頭でしょう。
低音がたくさん入ってるソースがいいかなと思い、ギターロックのPOPSを流してみました。モコモコしたベースやバスドラの音がシュッと引き締まって、フォーカスはハッキリ。俄然カッコよくなりました。ブレイクなんかも素早く収束してキマるし、アタックも鈍らずノリよく感じられます。ボーカルのリバーブは、澱みなくクリアに聴こえるから、ミックスのチェックにも活かせそうです。スピーカーの背面に限らず、音が籠もりがちな場所に設置するのは妥当といえるでしょう。
もともと、この部屋はある程度響くように設計してもらいました。スタジオのようにデッドにし過ぎず、適度な響きを楽しみたいと。ただ、余計な響きがないとはいえず、例えば、リズム楽器の残響は、部屋の響きが本来のリバーブに加わってしまって、キレが悪くなっていたのは確かです。
残りの2枚をリスニングポイントの後ろにも追加しました(映画のときと同じ場所)。

おや? あまり大きな改善は見られないです。むしろ、吸音し過ぎで、エネルギー感がパワーダウンしています。吸音しすぎは音が死ぬので禁物と言われていますが、音の芯の部分を吸い過ぎてしまうと、急に違和感が出てくるのですぐに分かると思います。設置環境にもよりますが、音が溜まりやすい箇所への設置に留めるのが得策かもしれません。音楽は、他のソースよりも影響が分かり易いので、設置枚数の吟味は抜かりなく行なってみるとよいでしょう。

おわりに

ということで、いかがでしたでしょうか。
静音化や音漏れ防止に特化したGraceも、ルームアコースティックの改善にも有用なことが確かめられたと思います。その効果の程は、SHIZUKA Stillness Panelには及ばないものの、吸音パネル然としてないオシャレな見た目と現実的な価格は、部屋の反響に悩む方にとって、耳寄りな製品であることは違いないでしょう。
「DECORIを使って、部屋も室内音響もデコっちゃお!」
…おあとがよろしくないですが、このへんで完!(笑)


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橋爪 徹
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