
【導入】夢の防音室を作るまで Vol.1
皆さま、はじめまして。
オーディオライターの橋爪徹です。
芸人や声優の方々と10年近くWEBラジオなどの現場で音響エンジニアとして活動をしてきました。
また、友人のプロ作曲家とハイレゾ音楽を自主制作しています。生演奏を軸にフュージョンなどを発表してます。
書いたり、録ったり、作ったり、音の関わるいろいろなことで活動をしております。
オーディオライターとしては、デビューして3年経ったばかりの駆け出しですが、今年は思い切って新居に「部屋」を作ってしまいました。
音に関わる人間が作る「部屋」と言えば……
真っ先に思い浮かぶのは、スタジオでしょうか。外から入ってくる音を遮断し、中の音も外に漏らさない。
要するに「防音室」です。
私もその防音室を作りました。用途としては、防音シアター兼簡易録音スタジオです。
これがその防音室。
名前は、Studio 0.xです。(スタジオゼロエクスは自称)
ロゴデザイン:藤宮藍
できあがったのは、2017年の6月末。
東京都内西部の郊外にある中古マンションの一室です。(この部屋のために持ち家買いました)
工事後の広さは約6畳。天井高は2.2mです。
部屋を作ったので大金が飛んでいきました。
中古マンションの購入諸費用も半端ではありません。
しかし、私には専用室を持ちたいだけの強い動機がありました。
その理由については追々解説するとして、部屋を作って音楽や映画が以前にも増して楽しくなり、テレビゲームも高い満足感でプレイできるようになりました。
部屋作りというのは、突拍子もないことのようですが、実はそうでもありません。
まず値段ですが、何百万円何千万円の機材が存在するオーディオの世界において、決して突出して高額というわけではありません。
自分だけの部屋を持った今、私は多くの人に部屋作りへの興味を持ってほしいと思い始めています。
そこで備忘録の意味も込め、この部屋を作るまでの経緯を書き綴ることにしました。
この記録は、長い期間にわたって書き続けることになると思います。
せっかくなら技術的な面でも正確さを期したいとお願いしたところ、設計を担当したアコースティックラボの協力を得ることができました。
同社には技術監修という立ち位置で色々助言をいただく予定です。私は同社とオーディオの活動を通じて仲良くさせて頂いていたので、とても心強く思います。
さて、そもそも「防音室」とはどういうものでしょうか。何のために作るのでしょうか。
“防音”するくらいですから、音を楽しむために、あるいは音を扱うために作る部屋ということは馴染みのない方もイメージいただけるかもしれません。
例を挙げますと…… 音楽を周囲への気兼ねなく大音量で聴きたい、ホームシアターを作って映画館の臨場感を家庭で再現したい、楽器を昼夜関係なく思う存分演奏したい、レコーディングしたい、DTMしたい……などなど。
特定の用途に適した専用の部屋。音を外に漏らさない、音を中に入れない、そんな性能を保証された部屋と言えそうです。
では、私が作ったStudio 0.xは、どうなのか。
以下、お宅訪問のつもりでご覧下さい。
玄関を入ります。
廊下を左に曲がって奥に進みます。
木製のしっかりした扉がありました。
中に入りますと……
オーディオ機材スペース
部屋の手前側には、DTMスペースがあります。
ここで録音した音の編集などを行えるようにする予定です。
今現在も簡易的には業務可能にはなっています。
録音機材、作業机スペース
天井には映画用のプロジェクターがあります。
プロジェクターの投射映像はこのスクリーン(80インチ)に投影されます。
廊下から部屋に入って左手奥にはもう一つの防音ドア
中は2畳ほどの録音ブース 吸音材が貼ってあります。
(後から自分で貼りました)
録音ブースの壁にはケーブルを通す穴が開いています。
この穴がメインの防音室に繋がっているので、マイクケーブルやトークバック回線を通すことが可能です。
どうでしょうか。これが我が家の防音室Studio 0.xです。
ぶっちゃけ、ドン引きでしょうか。それともいいなぁと思ってもらえるでしょうか。
見慣れない方からすると、とても大げさなことに映るかもしれません。
金持ちの道楽か、あるいはオーディオマニアの狂気的な選択に見えてしまうでしょう。
しかし、私はこの「防音室」に向けられる一般的なイメージに疑問を投げかけたいのです。
そもそも人間がオーディオを部屋で楽しむとき、半分以上は部屋の音(響き)を聴いているってご存じでしょうか?
オーディオの音は、スピーカーから耳に届く直接音の他に、部屋の反射や反響による間接音があります。
実は、この間接音の影響がとても大きいのです。要するに人間が聴き取る音全体に占める割合が大きいのです。
スピーカーからの出音(直接音)をいかに納得のいく音にするか、ここに血道を上げている方は多いと思います。しかし、それは聴いている音のあくまで一部だったとしたら……
直接音をいい音にしたいという情熱の一部でも音が鳴る部屋に向けてもいいかもしれません。
もちろん、防音室はルームチューニング材を購入するのとは訳が違います。大金が飛んでいきますし、賃貸ではそもそも工事ができません。思い切った決断であることは否定しません。
だいたい防音室ってどうやって依頼してどのように完成するのか、ほとんどの方が知らないのではないでしょうか。
自分が作るときのイメージが持てないと現実味も沸きませんし、どんなに私が「防音室最高だぜ!」って書いても選択肢にも入らないと思います。
よくある施工事例は、既に出来上がっている状況と特筆すべきポイントなどをまとめたもので、これは確かに夢が広がるのですが、自分に置き変えて考えるまでには至らず遠い世界の夢物語として受け止めてしまう方も多いかと思います。
結果として個人用の防音室は、一部の極端なオーディオマニアの道楽と思われてしまう。専用室の良さを体感した私としては、非常にもったいないことだと思います。
部屋を作ることをオーディオライフの現実的な選択肢の一つとして捉えていただく。本企画の趣旨はここにあります。
では、防音室はいったいどういう流れで作るのでしょう。
私が依頼した音響建築のプロフェッショナル。アコースティックグループのWEBサイトによると……
受付・初期判断
(アコースティックラボに相談します。今の部屋の現状と防音室に興味を持っていることを伝えます)
↓
ヒアリング提案
(どんな部屋を作りたいか、どこ(一戸建て or マンション)に作りたいか、予算は…等々、要望に応じておおよその設計イメージを説明してもらいます)
↓
打合せ・設計
(要望が明確になったら設計を進めます。詳細な仕様や工事の段取り、手続き面など、メールや電話、直接会っての打ち合わせを綿密に行います)
↓
契約まとめ
(工事を決める前に必ず契約をします。図面と見積もりなどと合わせて条件面の説明を受けます。納得したらサインして契約成立)
↓
現場立会・確認
(工事は現場監督の下で進行しますが、アコースティックラボのスタッフも要所で立ち会いを行います)
↓
インストール試聴・調整
(プロジェクターや映画音響周りはインストールといって設置から設定まで依頼することができます。事前の打ち合わせを元に最適な状態まで追い込んでもらいます。調整が終わったら、無事引き渡し)
とあります。
実際に部屋を作ってもらった私が補足を入れました。
ザッとご覧頂いて、イメージが沸くでしょうか。
………
……
…
う~む、これでもいまいち分かりませんよね。
部屋を作る前の自分に説明しても伝わりそうにありません(汗)
むしろ不安を煽ってしまったかも。
次からは、私が辿った防音室完成までの軌跡を本noteで紹介していきます。
中古マンション、引っ越し直後に工事開始、シアター兼オーディオ、収録ブースもある、という一つの例ではありますが、きっと読者の方にイメージを持っていただけると思います。
続き物になりますので、月に1回程度の更新を目標にゆったりと進めていこうかなと。
たまに動画や音声なんかもアップできたらと思います。(せっかく収録ブースありますし)
オーディオが好きな方、ホームシアターを作りたい方、もちろん防音室に興味がある方、ぜひチェックしてみて下さい!
技術監修:アコースティックラボ
いいなと思ったら応援しよう!
