土台レシピ2「ルゥ」
料理の土台を覚えて自由に料理する土台シリーズの2つ目は「ルゥ」。
ルゥはベシャメルソースに欠かせないものですが、このルゥが土台となり、ベシャメルソースのみならず、様々な料理に活用できます。
今日はこのルゥの作り方と、ルゥを使った2つの料理レシピをご紹介します。
ルゥは西洋版「水溶き片栗粉」のようなもの。グラタンやシチューのとろみ付けに使われます。
例えば、
グラタン(ベシャメルソースに調理済の食材を加えてチーズをのせて焼き上げるお馴染みの料理)
田舎風ジャガイモ・グラタン(じゃがいもを牛乳と生クリームで茹でてから作るグラタン)
ホワイトクリームシチュー(グラタンのスープ版)
ブラウンシチュー(牛乳を使わないシチュー)
スープ(ルゥでとろみをつける)
カレー(欧風カレーなど)
グレービーソースのとろみ、など。
ルゥの材料はバターと小麦粉だけ。日持ちがよいので冷蔵庫で数ヶ月(たぶんもっと)保存できます。
スープやソースにとろみをつけたいときにも便利です。もちろん事前にルゥを作らずに、料理するたびにルゥから作ってもよいのです。バターと小麦粉の割合さえ覚えておけば、いつでも作れますから。
覚えやすいですね。
では実際に作っていきましょう。
【ルゥの作り方】
バター50g
薄力粉50g
鍋にバターを入れて火をつける(弱めの中火)。
バターが完全に溶けたら薄力粉を加え(弱火)、5分ほど混ぜながら火を入れてできあがり。
容器に入れ、冷蔵庫で保存する。
(この量でグラタン2回分。作り方は下記参照)
ではルゥを使ってグラタンを作ってみます。
【グラタンの作り方】
1.鍋にルゥを45g入れて火をつける。
2.ルゥが溶けたら牛乳400mlを一気に入れる。
3.牛乳を入れたら、すぐに泡立て器でルゥを溶かすように混ぜながら、火を入れる(中火)。
4.とろみがつきだしたら弱火にして、しっかりとろみが出るまで火を入れる。
5.お好みで生クリームを50〜70ml入れ、塩、こしょうして味をととのえる。これでベシャメルソースの完成。*とろみの調節は牛乳とルゥで。
5.茹でたショートパスタや、野菜(調理済みのカリフラワー、ジャガイモ、かぶ、キノコなど)を入れ、チーズをかけ、オーブンで焼き上げる。
*ルゥを使わないときはその都度、バター25g、小麦粉25gでルゥを作る。ほかの行程は同じ。
(ルゥは完成すると10%ほど重量が減るので、その分を差し引いて45gで作る。)
私はいつも土鍋でグラタンを作っています。オーブンに入れて焼き上げたらそのまま食卓へ。土鍋ひとつで作れるので、調理開始から食べ終わるまでスムーズですし、洗い物も少量で済みます。
ベシャメルソースの基本の割合
どんな料理にも言えることですが、レシピの数字に気を取られず、最後の仕上げは自分の舌、目、鼻を使って完成させてください。それが「素描する」ということですから。
失敗してもいいんです。その失敗を覚えておくことです。そして次につなげればいい。もうやーめた、と諦めないで、次はこうしよう、ああしよう、と1mmずつ階段を上がっていくつもりで料理していくんです。それを続けていくと、その先に素敵なことが待っているんですよね。上った人しか分からない楽しいことが。
では、もうひとつ、ルゥを使った料理をご紹介します。
【ホワイトクリームシチューの作り方(2〜3人分)】
土鍋で食材(私がいつも使うのは玉ねぎ、ジャガイモ、人参、カリフラワー、豆など。ブロッコリーは茹でておいて、食べる5分前に入れる)をオリーブオイルで炒める。全体に火が通ったら水を大さじ2ほど入れ、蓋をしてしばらく蒸し焼きする。
食材が柔らかくなったら200mlの水を加え、沸騰したら蓋をして弱火で10分ほど煮る。
そのあいだに、別の鍋にルゥ35g(ルゥがないときはバター20gと小麦粉20gでルゥを作る)を入れて火にかけ、溶かす。冷たい牛乳200ml入れてかき混ぜる(ここはベシャメルソースと同じ。固めのソースができあがる)。とろみがついたら火を止める。
1.に2.を加えて混ぜ、しばらく煮込む。とろみ具合の調節はルゥ、または牛乳(または水)で調節する。
パルメザンチーズ大さじ2〜3を加え、塩、こしょうで味をととのえる。
クリームシチューの基本の割合
2つの料理は土鍋で作っていますが、世に出回っているほとんどの土鍋はオーブン使用不可ですので、まずは自分の家の土鍋が、オーブンが使えるかどうか確かめてください。
おさらいです。
今回ご紹介した2つの料理は土鍋で作っていますが、最後に台所道具のことをお話します。
私が使っている土鍋は、伊賀焼の窯元「土楽」の「ORIBEさん」という土鍋。窯元に特別にお願いして製作していただいているものです。
織部色が美しい土鍋。炒めたり、焼いたり、オーブン使いもできます。美しい深緑色で、軽く、一年を通して使うことができます。
私はカレーも、シチューも、麻婆豆腐も、ラタトゥイユも、お惣菜もすべて、これひとつで作っています。
私が台所道具を選ぶときは、下記のようなことを考慮しています。
世の中にはデザインはいいけれど実用的ではなかったり、すぐ飽きてしまう道具もあります。見た目だけで判断しないことです。見えない部分をちゃんと見ていくことが大事です。
なぜこの形なのか。
工業製品なのか、手仕事なのか。
どんな素材が使われているのか。
なぜ安いのか。なぜ高いのか。
安価な道具と10年以上使える道具、どちらがいいのか…。
工業製品だからダメ、安価だからダメ、ということではないんです。使っていくうちに可愛くて手放せなくなる道具っていうのが、結局「わたしだけの宝もの」になるわけで、決して高価な道具が宝ものになるわけじゃない。
ただ、ひとつ言えるのは、
人の手で丁寧に作られたモノは、その心意気が使う側にも伝わるんですね。まるで道具が、料理行程のひとつひとつを確認しながら仕事をしているんじゃないかと思うぐらい、良い働きをしてくれます。
道具にも心があるんですよ。これはほんと。だからそれを踏まえてこちらも大切に使ってあげるんです。道具が嫌がることをやってはいけないし、どうしたら道具が良い仕事をしてくれるかを考えて動きます。
自分と道具はいつも対等ですから、上から目線になってはいけない。お互い、思いやりながら仕事をするんです。その結果が「今日のひと皿」で表現されるわけですね。
ちなみに私の「道具の宝もの」を2つをご紹介すると、
ひとつはお義母さんからいただいた「プラスティック製のザル」。
お義母さんがニューヨークに住んでいた60年以上前に購入したものです。たぶん1ドル以下の代物なんじゃないかな。当時は1ドル360円ぐらいだったから、50セントもしなかったかも、笑。
薄汚れているし、プラスチック製だし…、けれどかわいくて捨てられない。今でも我が家の台所で働いています。
もうひとつは「穴あきスプーン」。こちらはステンレス製で、これもお義母さんが60年ほど前にニューヨークで買ったものです。
ニューヨークの、あの時代だからこそのデザインと重厚さ。このスプーンは今や私のお守りのような存在で、いつも目の届くところに置いて、台所で使っています。
2つとも年季が入って捨ててもいいぐらいのモノですけれど、使ってあげることで、道具が生き生きと働いてくれる。これが「お互いの思いやり」の結果なのかなと。
そういう宝ものがひとつでもあると、暮らしが豊かになる気がします。
素描料理とは、土台はしっかり覚えて、あとは自由に好きな食材を入れたり、味を変えながら、「自分の料理」にしていく方法論です。
ぜひ、前回投稿したラーメンも、家にある食材で作ってみてください。