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パンのおかず ・ ごはんのおかず

土台レシピ7・おかずキッシュ

目次
・自由に考えて、つくる
   厚揚げバインミー
   サモサコロッケ
・料理を翻訳する
・パンとごはんのおかず
   サブジ
   土台レシピ7・おかずキッシュ

自由に考えて、つくる


料理ってそもそも自由だから、こうしなきゃ、という固定観念みたいなものを取ってしまえば、わりと面白いことができます。

私は厚揚げを薄くスライスして、甘辛タレとキャベツと人参の酢漬けを挟んだベトナムサンドイッチ「バインミー」を作ります。
人参とキャベツの酢漬けは塩少々でもんでしんなりさせ、甘酢+唐辛子をかけてしばらく置きます。酢漬けを作るのが面倒であれば、キャベツと人参を塩でしんなりさせたあと、酢とマヨネーズで和えても。
薄〜くスライスした厚揚げを何枚かパンにのせ、
醤油、みりん、砂糖で作った甘辛あんのタレをかけ、
酢漬けをのせ、
好みで香菜(またはセロリ)、サラダ野菜、トマトなどの野菜を挟みます。
辛くしたいときは青唐辛子の酢漬けを加えても。

バインミー
「野菜のごちそう」(旭屋出版)

草食歴38年ですが、「肉を食べないからその代用として〇〇を使う」という考え方があまり好きじゃなくて、「厚揚げでバインミーを作ったらすごくおいしかったから、また作ろう!」ぐらいの、軽くて前向きな感じがいいなぁと。

草食なりに、食に関してはいつもニュートラルでいたいと思っています。
肉を食べたい人は食べたらいいし、食べたくなければ他の食物を選べばいいし。目的ありきの食べ物、例えば、〇〇は健康に良さそうだから、とか、〇〇は一日何グラム食べたほうがいいとか、そういう情報で食べるのではなくて、おいしいなぁと、からだが喜ぶほうが大事なのではないかと。偏った考え方で食べるほうがよっぽど怖い。(加工食品とかジャンクフードを抜いての話ですけれど。)

さて、
「サモサ」というインド料理をご存知ですか?
じゃがいものカレーを皮に包んで揚げたインドの屋台フードで、日本でもインド料理屋に行けば食べられるスナック的料理です。日本の家庭でサモサを夕食に作る人はあまりいないかもしれませんね。でも食べたい…。
だから我が家では「サモサコロッケ」なるものを作ります。
サモサの作り方で中身を作り、丸めてコロッケにして揚げたもの。これだったら、ごはんと一緒に食べても違和感はありませんね。

サモサ・コロッケ
「野菜のごちそう」(旭屋出版)


料理は最初から自由であるものだし、こうでなければダメ、ということもないから、厚揚げバインミーやサモサのように、家の環境に合わせてごはんのおかず、パンのおかずに「書き換え」すればいいわけです。

料理を翻訳する


料理というのは、環境に合わせて翻訳していけばいい、と思っています。つまり先程の「書き換え」のこと。アレンジですね。
食べる人の嗜好、何人家族か、子供の有無、毎日何を食べているか…。
そういうことを踏まえて、どんな料理だったら幸せになるかを考えます。
我が家は二人暮らし。夫も私もカレーが好き。じゃぁ、サモサを翻訳しよう、という具合です。

大切なのは闇雲にアレンジしないということです。その料理のコアな部分が崩れてしまうようなアレンジはしない。
作っていくうちに、こうすればいい、あーしてもおいしい、なんてことが分かってきますから、そこから少しずつ広げていけばいいのです。

正統(オーソドックス)な味を守りつつ、「わたしの料理」に翻訳すること。

正統な料理(正しく継承している料理の意)というのは骨組みがしっかりしていますから、すでに完成された料理と言っていいでしょう。
正統料理の作り方、つまり骨組みがしっかりしていれば、その上に何をのせてもグラつくことはありませんから、失敗する確率が低くなります。

私が提唱している「素描料理」の土台レシピは、この「骨組み」の部分です。土台を覚えておけば、一年を通して様々な食材を使っていくことができますし、そこからまた枝分れしながら新しい料理に展開することも可能です。
では、今回の土台レシピを紹介します。

パンとごはんのおかず

土台レシピ7「おかずキッシュ」

キッシュはタルト生地に具材を入れ、卵液を流して焼き上げるフランスの家庭料理です。アルザス・ロレーヌ地方の、ベーコンが入ったキッシュが日本では有名ですが、地域やその家によって入れる具材はいろいろ。トマト、キノコ、チーズ、ほうれん草など、様々な食材が使われます。

キッシュの中身ってフランスの卵とじみたいなものなので、ごはんのおかずになります。
普通のキッシュは日本ではなかなか普段の料理にはなりにくいと思います。ちょっとしたパーティーとか、友人を招いての食事とか…。それを’普段のおかず’に翻訳します。テクニックはいりませんし、気楽に作れるところがいいところ。パンに合わせても、ごはんと一緒に食べてもおいしい一品です。

ごはんと乳製品は、実は相性の良い組み合わせ。
例えば、洋食のひとつ「ドリア」はごはん+ベシャメルソース、イタリアの「リゾット」はごはん+チーズですね。「おかずキッシュ」も、パンはもちろん、ごはんにも合う料理なのです。

私が普段「おかずキッシュ」とよく組み合わせるのは「野菜のサブジ」。
ごはん、おかずキッシュ、サブジ(キャベツのサブジがお気に入り)をワンプレートで食べています。

サブジというのはインド料理で、シンプルなスパイス料理です。ちゃちゃっと作れて、ごはんにも合います。私はカレーとしてではなく、洋食ごはんのおかずとしてよくサブジを作ります。
1種の野菜とフライパンがあれば作れますし、辛いものが苦手だったら、唐辛子を入れないで作ればいいのです。
サブジも「土台レシピ」なので、いつかnoteでご紹介しようと思っています。

アノニマ・スタジオweb連載に「ズッキーニのサブジ」を載せていますので、ご興味のある方はぜひ、ご覧ください。

「ズッキーニのサブジ」
アノニマ・スタジオWeb連載から


それでは「おかずキッシュ」の作り方をご紹介します。
卵液を土台にして、好みの具材を入れていきます。


おかずキッシュの作り方

《卵液》
卵3個
生クリーム 100ml
牛乳 50ml
塩、こしょう
《具材》
アスパラガス、菜の花、ほうれん草、空豆、(新)たまねぎ、ズッキーニ、茄子、トマト、トウモロコシ、じゃがいも、キノコなど、卵料理に合いそうな食材を1〜3種類
チーズ 50g(シュレッド、グリエール、コンテ、フレッシュチーズなど)

  1. 卵液を作る。卵を溶き、他の材料を入れる。*ソースで食べる料理ではないので、塩味はしっかりつける。

  2. 具材を1〜数種類選び、茹でる、焼く、蒸すなどして調理する。

  3. オーブン皿(20cm x 20cm前後)にバターを薄く塗り、食べやすい大きさに切った具材とチーズを均等に広げて入れる。

今日の具材
菜の花(茹でる)、空豆(茹でる)、焼きパプリカ(網で焼いて皮をむく)
シュレッドチーズ、リコッタチーズ

4.卵液を流し、200度のオーブンで25分前後焼く。竹串を刺して、卵液が付かなかったら出来上がり。

春のおかずキッシュ

卵1つに対し、生クリーム+牛乳=50ml。
生クリーム:牛乳=2:1の割合です。
オーブン皿のサイズにもよりますが、今回は卵3個を使っていますので、生クリーム+牛乳=150ml。
生クリームと牛乳の割合は変えられます。まずは上記の分量で作り、味を確かめてから。牛乳の割合が高くなるほどあっさりした味になりますし、生クリームだけで作ると濃厚になります。

チーズの量は好みですが、50g〜80gぐらいが妥当かなと思います。
正確にチーズ量を計らなくても、全体にまんべんなくチーズを散してみてください。カンは育てていくものですから、こうやって時々、カンに頼るのもひとつの方法です。料理は正確すぎても面白くないので。
台所仕事は’手’の働きが大きくて、’手’の感覚を信じることで、計らずとも、ベストな仕上がりになっていきます。

使うチーズは、スーパーで手に入りやすいシュレッドチーズのほか、グリエールチーズ、コンテ、パルメザンチーズ、ブルーチーズ、フレッシュチーズなど、お好みのものを使ってください。2種類混ぜてもおいしいです。今回はシュレッドチーズとリコッタチーズを使いました。


我が家ではおかずキッシュが余ったら、次の日のお昼にサンドイッチにします。
下記の画像は枝豆キッシュをイタリアのパンに挟んでみました。

「枝豆キッシュ」のサンドウィッチ
枝豆キッシュ+ミニトマト+庭の花オレガノ


料理は特定の人だけが楽しむものではなく、みんなのもの。作りたいと思えば、今すぐにでも作れるし、老若男女誰も関係なし。そこが料理の良いところですね。
袋に開けただけの食べ物に頼らずに、頑張りすぎて疲れず、自分ができる範囲で料理を楽しむことができれば、台所は自分だけの小宇宙になるでしょう。
たったひとつの食材で、人生を変えることができる。これが素描料理の本質かもしれません。


最後に、
今回の「おかず」でも使った道具、鉄フライパンをご紹介します。

ズッキーニのサブジを作っているところ

鉄フライパンを使うと、なぜおいしくなるのでしょう。
道具の働きについてはnote「おいしい理由」をご覧ください。

サモサコロッケを揚げるときも、サブジを作るときも鉄フライパンを使います。
例えば、キッシュを作るときの具材が玉ねぎ、アスパラガス、キノコであれば、鉄フライパンで焼いたり炒めたりしますし、天ぷらは一度にたくさん揚げられて重宝します。
また、オーブン料理にも使えますので、パエリアとかオーブン焼きにもいいですね。
鉄フライパンの役割は大きくて、これがないと料理が不完全だと思っているぐらい、頼りになる存在です。

外はカリッと、中はふわっと。

鉄フライパンは鉱物から作られますが、実は歴史は古くて、日本ではじめて製鉄されたのが弥生時代と言われています。人の手と知恵で自然界にある鉱物を、千年以上も前から道具に替えて使ってきました。デザインや技術が進歩した今も原料は同じ。自然の恵みのものなのです。
テフロン加工は知っての通り、表面のコーティングが剥がれたらもう使えません。使う頻度にもよりますが、1〜2年で買い替えなければいけませんし、コーティングに使われるPTFEは有害な化学物質ですので、それが確実にからだに入るわけで、いくら安価でも、使い捨てのようにテフロン加工のフライパンを使い続ける弊害は大きいです。

私が使っている「河原崎さんの鉄フライパン」は、長野県伊那市に住む鍛冶職人です。色々とわががまを言いまして、
取っ手が熱くならないように、
揚げ物もできて、オイルを油ポットにスムーズに戻せるように、
軽いけど重厚に、
をすべて網羅した、オリジナルのフライパンを作っていただきました。
良き相棒です。









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