見出し画像

「手」がおいしくする

料理は手仕事 -土台レシピ6「ドレッシング」-


目次
・料理は手仕事
・すり鉢ひとつでナムル&ごま和えを作る
・サラダを作ろう!
  土台6「ドレッシング」の作り方
  ドレッシング+α
  自由に食材を選ぶ
  すり鉢ドレッシング
  手混ぜサラダ


料理は「モノづくり」であり、台所に立つ人は「作り手」である。

このことは、以前からいろいろな場で伝えてきました。
料理は手仕事だ!と思って台所に入る人はあまりいないかもしれませんが、心持ちひとつで、料理の立ち位置が変わってきます。
陶芸家がろくろを回すように、染織家が手織りをするように、台所に立つ人は手を使って料理するのです。

2年前、AFCフォーラム(日本政策金融公庫 農林水産事業部)で、こんな記事を書きました。
《抜粋》
「台所に立つ人は、立派な『作り手』である。いったん台所に入ったら真剣勝負だ。おいしくするために何ができるかを考える。料理は小さな積み重ねがすべてだから、よそ見をする暇はない。茹でている野菜の色、焼く音、羽釜がふくとき…その瞬間を見逃さないように気を配る。台所の動きひとつで味が変わってしまうから、とにかく手を動かす。細やかに仕事をすることが、料理をおいしくする秘訣なのだと思う。
おいしいひと皿にするために大切なのは、手を温かくすること。体温を上げる話ではない。心を温かくするのだ。心を育てていけば、おのずと手は育つ。手は人の心を表す道具。これまで生きてきたすべてが料理に表現されてしまうのだ。袋を破るだけでは手は育たない。(中略) 
ひたすら今日のひと皿のために手を動かし、心を尽くしていこう。」

「手」は、台所の中でいちばんよく働く道具です。
包丁を使う。
箸を持つ。
混ぜ、丸め、絞り、ちぎる。
洗い、拭いて、しまう。

「手」は箸やカトラリーよりも繊細に感じ取ることができる道具なのです。

今回は、「手」という道具を使った料理をいくつかご紹介します。

すり鉢ひとつで「ナムル」と「ごま和え」を作る

私がよく作る料理に「すり鉢ナムル」があります。

すり鉢でごまをすり、
→すり目にニンニクを軽くこすりあてるようにして、まわしながらすりおろし(ニンニクの香りをすり目に付ける)、

にんにくをすり目に当てて、回しながらすりおろす

→塩とごま油を加え、
→調理済みの野菜の水分を取ってから
→すり鉢に入れ、「手」で和える。
→すり鉢ごと食卓へ。

人参ナムル


「ごま和え」も同じように手を使います。
ごま和えの作り方については、「味を見る・味を探す」をご覧ください。

「ナムル」も「ごま和え」も手で直接的、感覚的に混ぜることが大事で、すり鉢、手、食材、調味料すべてがひとつになっていくのを、手でダイレクトに感じることで、「おいしい感性」というものが育っていくような気がします。
おむすびは手の常在菌の働きでおいしくなる、と聞いたことがありますが、嘘か真か….、まんざら嘘じゃないと、料理の仕事をしていると思います。

料理するとき、特に混ぜるときは箸やスプーンなどを使わず、なるべく手を使ってみてください。おままごとのような無垢な楽しさがあり、食材や料理に対する親近感が増すと思います。


では次に、土台レシピ6「ドレッシング」を使い、サラダを作ります。
縦に横に広げて「サラダ」を素描してみましょう。

サラダを作ろう!

土台6「ドレッシング」の作り方

空き瓶に材料を入れてシャカシャカ振る「ドレッシング」です。
数分で作れますし、簡単で安上がり。原材料はいたってシンプルなものしか使いませんので、安心です。

土台のドレッシングの割合は、油3:酢1。
そこに塩、こしょう、甘みをプラスすれば完成です覚えやすい分量です。

ドレッシング(100ml)
酢 大さじ2
塩 小さじ1
甘味料 小さじ1(メープルシロップ、アガベ、蜂蜜など)
マスタード 小さじ1
こしょう 少々
オリーブオイル 大さじ6
(各調味料については下記参照)

1.空き瓶に酢、塩、甘味料、マスタード、こしょうを入れて蓋をし、瓶を上下にシャカシャカ振る。
2.塩が溶けたら、オリーブオイルを入れて蓋をし、またシャカシャカ振る。出来上がり。冷蔵庫で1,2ヶ月保存可能。

・調味料について
《甘味料》クセの強い蜂蜜もあるので、ドレッシングに合うかどうか確かめる。砂糖で代用するときは「小さじ1/3」程度にする。甘味料は甘みをつけるというより、酸味を抑える役割なので控えめに。
《酢》穀物酢、白ワインビネガー、バルサミコ酢、レモンなど。
バルサミコ酢を使う場合は甘味料を減らすか、省く。レモンを使う場合は塩を少し減らす。蜂蜜と相性がよい。
《オイル》オリーブオイル(ピュアオイル)またはExバージンオイル。太白ごま油(胡麻の香りのない油)、グレープシードオイルなど。
味、香り、クセの少ないオイルを使うと、ドレッシングの味がシンプルになり、どんな食材にかけてもマッチする。
《マスタード》イエローマスタード(サンドウィッチやホットドッグに使うアメリカタイプのマスタード)、ディジョンマスタード(フレンチタイプの粒入り、粒なし)など。

空き瓶は洗って水分を拭いたものを使う。
目盛りが付いたドレッシングボトルも便利。↓

どんな食材のサラダにも合うベーシックな味のドレッシングです。この量で2〜3人のサラダ3回分ぐらいでしょうか。1,2ヶ月保つので、作る頻度で多めに作ってもいいですね。

では次に、このドレッシングに変化をつけてみます。

土台「ドレッシング」+α

ドレッシングに調味料や香味野菜を1,2種類を足すだけで、味がガラリと変化します。例えば、

マヨネーズ
ケチャップ(+マヨネーズ=サウザンドレッシング)
醤油
味噌
パルメザンチーズ
生クリーム(+パルメザンチーズ=シーザードレッシング0)
にんにく(スライス1,2枚)
玉ねぎ(すり下ろす)
セロリ(薄切り、またはすり下ろす)
細ねぎ(小口切り)
ごま油(+醤油+豆板醤で中華ドレッシング)
豆板醤または鷹の爪、など

各調味料や香味野菜の量は決まっていません。少しずつ足し、味を見ながら調節します。

マヨネーズを多めにに基本ドレッシングを足したり、その逆にしてもおいしいマヨドレになります。
パルメザンチーズをサラダ食材にかけ、ドレッシングをかけて手で和えると、簡易シーザーサラダになります。
醤油と味噌は塩辛いので、少量ずつ入れ、味を見ながら塩の量を決めます。
香味野菜は入れてから30分〜1時間ほど置くと香りがつきます。

いろいろなものを足しすぎると、かえって味のバランスが悪くなることもありますので、まずは土台のドレッシングの基本の味を覚え、そのあと、お気に入りの1種類を足しながら、自分の味を見つけていきましょう。

すり鉢サラダ
葉もの、菜の花、二十日大根、スプラウト、ミニトマト

ドレッシングを食材にかけて、で混ぜてできあがり。
葉もの野菜も、でちぎってくださいね。

手で混ぜるときは、葉物を傷めないように、食材を潰さないように、やさしく。なるべく短時間で混ぜ終えるようにする。

自由に食材を選ぶ

サラダは生野菜を使う、というイメージがありますが、そこから離れると自由になります。
蒸したり、炒めたり、茹でて「温野菜サラダ」にしたり、
生野菜と加熱した温野菜を一緒にしたり。
野菜室にある半端な野菜たちを集めて、サラダにするのもいいですね。
食材をあまり選ばないのがサラダのいいところ。

アスパラガスを焼き網で焼いてサラダの具材に

生野菜
温野菜(茹でる、蒸す、炒める)
キノコ、野菜、油揚げなどを焼き網やオーブントースターで焼く
チーズ(パルメザンチーズ、フレッシュチーズ、セミハードチーズなど)
クルトン
ナッツ
すりごま
のり(ちぎる)



サラダを作るために野菜を買いに行くのではなく、今、家にあるものを使ってサラダを作る、という逆の発想です。
生は生、火を通すものは火を通し、それらを全部合わせます。

ニース風サラダ
葉もの、トマト、じゃがいも、玉ねぎ、クルトン


すり鉢ドレッシング

作り置きのドレッシングがないときには、その場ですり鉢で作ることもできます。

すり鉢にオイル以外を入れてすりこぎですり、
オイルを注ぎながらすりこぎを回せば出来上がり。
そこへ食材を入れて、で和えたら食卓へ。

オイルを入れながらすりこぎを回す


実はすり鉢でマヨネーズも作れます!
拙著「野菜たっぷり すり鉢料理」では、すり鉢とすりこぎで「マヨネーズ」レシピをご紹介しています。
作り方は「野菜たっぷり すり鉢料理」57ページをご覧ください。

https://studio482.theshop.jp/items/4765485


手混ぜサラダ

ドレッシングもない。すり鉢もないし、時間もない。
そんなときは「手混ぜサラダ」があります。
直接、食材に調味料を入れながら、手で混ぜるという即席法です。ドレッシングを使わないので、時間がないときにいい方法です。
アノニマ・スタジオWeb連載に詳細が掲載していますので、ご覧ください。

アノニマ・スタジオWebコラム「宮本しばにの素描料理」
第9回「雑多な手混ぜサラダ」


手混ぜサラダ
アノニマ・スタジオ「宮本しばにの素描料理」から


料理は結局、どれだけ台所で手を動かしたか、がおいしくなる秘訣だと思います。

これからの季節はサラダを作る機会も増えますね。ぜひおいしいサラダを作ってみてください。


最後に、今回登場した「すり鉢」について少し書き記しておきます。

すり鉢は縄文時代からある古い道具のひとつです。電動とは似て非になるもの。電動は刃で切り刻むので、そもそもすり鉢とは細胞レベルで断面が違うのです。
すり鉢は食材の細胞を壊さず、香りや味を損ねることなく叩き、つぶし、するので、香りや味がクリアーに出てくるのです。
実際にすり鉢を日々の料理に取り入れて、その良さを知ってほしいと思います。

私が扱っているすり鉢は、山只華陶苑7代目・加藤智也さんがろくろを回して作るすり鉢で、9年かけて開発したというすり目に特徴があります。香り高く、スピーディーに、利き手関係なく擂ることができます。

すり鉢と手。
この2つはとても相性がいい道具です。


いいなと思ったら応援しよう!