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【小説】センター・ビット⑫
ハウストーナメント、BBフライトのシングルスの準決勝が行われる。
森山さんはタバコの煙を吐いて、こう言った。
「ヒロヨシさん。マスターアウトでやりましょう」
「え?」
まるで挑戦状を突きつけられたような気分だった。
「キャッチでシングルに入ったら勝ちですけど、罰金500円にしましょうか」
勝手に話が進んでいった。舐めてるのかと思いながらも
「面白いですね」
とその話に乗って、1レグ目の501をプレイした。
コークをする。じゃんけんで俺は負けてしまい、先に森山さんが投げた。
「カチッ」シングルブルに入った。
続いて俺が投げた。
「カチッ」3のインナーシングルに入った。
1ラウンド目。森山さんが投げた。
「パーン」シングルブル。
「バンッ」ダブルブル。
「カチッ」6シングル。106点で大幅に削る。
続いて俺が投げた。
「パーン」シングルブル。
「パーン」シングルブル。
「タタタッ」17トリプル。3投目はキャッチだった。
151点のハイトンを出し、周りがざわついた。
「チッ」と森山さんは軽く舌打ちし、こちらを向いた。
森山さんの闘争心に火をつけてしまったようだ。
2ラウンド目。森山さんが投げた。
「カチッ」1シングル。
「カチッ」11シングル。
「カチッ」2シングル。ノーブルで俺の番になった。
俺が投げた。
「パーン」シングルブル。
「カチッ」8シングル。
「パーン」シングルブル。108点で大幅にリード。
「あの投げ方、さては研究したな」と永福さんがつぶやいた。
俺の投げ方は、ユーミングした後にじっくりとターゲットを見て、そこに向かってダーツを投げる。フォロースルーのときに指が右を向くように意識していた。この投げ方になってから急激に上手くなった気がする。
5ラウンド目。
森山さんは残り141点。俺は71点。
森山さんが投げた。
「タタタッ」17トリプル。
「パーン」シングルブル。
「タタッ」1ダブル。惜しかった。
続いて俺が投げた。
「カチッ」11シングル。
「タタタッ」1トリプル。
「タタタッ」19トリプル。
ラウンドオーバーで1レグ目は俺が取った。
2レグ目。同じく501。
ここでまた森山さんから提案をされる。
「今度はダブルアウトだけにしましょう」
「ええ、いいですよ」
「ただし、ブルアウトはダブルブルだけで」
「分かりました」
1ラウンド目。負け先攻で森山さんが投げた。
「パーン」シングルブル。
「バンッ」ダブルブル。
「バンッ」ダブルブル。ハットトリックでスタートした。
俺は負けじとトリッキーな攻め方で、メンタルブレイクさせてやろうとした。
続いて俺が投げた。
「タタタッ」20トリプル。
「タタタッ」20トリプル。
「パーン」シングルブル。170点。
「楽しんでるなぁ」と永福さんがカウンターでつぶやいていた。
次第に森山さんの表情が険しくなる。
2ラウンド目。森山さんが投げた。