JPモルガン・チェース、ノンバンク金融機関向け融資の情報開示を拒否
米国の銀行規制当局が求めた「ノンバンク金融機関向け融資」の詳細な内訳をJPモルガン・チェースが期限までに提出せず、1,330億ドルもの融資をすべて「その他」と分類したことが注目を集めています。
そもそも、このような報告が求められた背景には、近年急成長している「ノンバンク金融機関(プライベートクレジットファンド、プライベートエクイティファンドなど)」の存在があります。
これらの金融機関は、銀行よりも柔軟な資金供給が可能で、レバレッジの高い企業や信用リスクの大きい借り手への融資を積極的に行っています。
2024年末時点で、銀行からノンバンク向けに提供された融資は約1.2兆ドルに達し、商業用不動産向けローンやクレジットカードローンと同規模にまで拡大しているのが現状です。
こうした状況を受け、規制当局は銀行のノンバンク向けエクスポージャーをより詳細に把握し、「システミックリスク」を管理する必要があると判断しました。
そこで、FDIC(連邦預金保険公社)は、新たな情報開示を求めて、各銀行に対し2025年2月4日までに「融資の詳細な内訳」を報告するよう要請していました。
JPモルガン以外の主要銀行、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴはこれに応じ、ノンバンク向け融資の詳細を報告しました。
一方、JPモルガンは融資の内訳を示さず、「FDICとFRB(連邦準備制度理事会)で異なる基準が適用されており、二重報告はオペレーショナルリスクを生じさせる」と主張し、開示を拒否しました。
JPモルガンの主張にあるように、FRBも同様の報告を各銀行に求めています。しかし、FRBとFDICの視点の違いから、適用される基準が異なっています。
FRBは、「金融システム全体」の安定を管理するマクロ視点でノンバンクとの関係を評価し、銀行のストレステストを通じて市場への影響を測る存在です。一方、FDICは「個々の銀行の健全性」を監視するミクロ視点で、破綻リスクを抑えることを重視します。
これまではFRBの基準が中心でしたが、今回FDICが独自の詳細なデータを求めたことで、規制当局間の整合性の問題が浮き彫りになりました。
今回の情報開示に関しては「最善の努力ベース」での報告を求めていたため、JPモルガンに対する罰則等はありません。しかし、今後のノンバンク市場の動向次第では融資の開示報告が義務化される可能性もあります。