おバカだけど心に残る映画 その1 『アマゾネス』
シリーズでお届けする「おバカだけど心に残る映画」では、とてもクダラナイ内容なのに、いつまでたっても忘れられない映画を紹介します。
第一弾は、『アマゾネス』1973年(イタリア・フランス・スペイン)テレンス・ヤング監督作品です。
舞台は古代ギリシア。男を排除し、女だけで成り立つ部族「アマゾネス」のお話です。
女だけの部族とはいえ、子孫を残すためには、男の協力が必要です。そのためアマゾネスらは、年に一度だけギリシア軍の男を招き入れ、子作りをします。しかし恋愛はご法度。そしてもしも男の子が生まれたら、悲しいかな捨てられる運命となるのです。
そんなこんなで、熾烈な女王争いやら、ギリシア軍の男との禁断の愛やら、戦いと愛欲の世界が繰り広げられます。
私がこの映画に出会ったのは、高校2年生の時。今から40年ほど前に深夜テレビで観たのです。当時、女性の裸体を見慣れていない純真な少年にとって、この映画の映像は、心臓が飛び出そうなくらい強烈でした。
何がそんなに強烈かといいますと、まず、アマゾネス軍団全員がナイスバディな女性だったことです。
さらに、女王対決で負けた女が、再び女王に決闘を挑むシーンが凄かった。なぜか二人とも裸で体に油を塗って戦うんです。当時17歳だった私には、なぜ裸で戦うのか、しかもなぜ体に油を塗らなければならないのか、意味がさっぱりわかりませんでした。
ただわかったことは、
女体+油=エロス
という数式だけでした。
さらにさらに、その戦い、くんずほぐれつの状態がしばらく続きます。どっちが勝つのか?という心配をよそに、その二人の女性はお互いに肌と肌を密着させ、抱き合い、いつの間にかキスをしてお互いに気持ちよくなっているではありませんかー!?
な、なんという展開! これはもう高2男子の理解と想像をはるかに超えています。
ただわかったことは、
(女体+油)× 2人 × キス × アレ × コレ = エロス × 1000
ということです。
一対一の殴り合いのケンカをした不良少年どうしが、野原に寝そべって、互いを認め合う少年マンガの展開しか知らなかった私。
そんな純真・純潔な私にとって、あまりにも衝撃的かつ刺激的だったこの映画。私の中では忘れられない映画となりました。
しかし、B級映画だったせいか、その後、テレビでも映画館でもお目にかかることはありませんでした。それだけに私にとっては幻の映画となったのです。
時を経て私は社会人となりました。そしてある日、レンタルビデオ屋へ行ったときです。私は、息が止まるほどの衝撃を覚えました。
「アマゾネス」のビデオを見つけてしまったのです。
それはまるで、一夜限りのめくるめくアバンチュールの後、私の元を離れた女性と10年ぶりに再開したような衝撃でした。
私はかつて体験したあの甘美な思い出を再び味わえる喜びに胸をときめかせました。そして高鳴る鼓動を抑えながら家に帰り、すぐさまその女性とベッドイン、じゃなくて、すぐさまそのビデオをデッキに挿入したのです。(当時はまだDVDは存在せずVHSの時代)
そして、ついにやってきたあの油まみれの女体が絡み合うシーン。私の胸の鼓動は再び最高潮に達した・・・はずが・・・。
(あれ!?)
(そんなにときめかない・・・)
かつては、エロス × 1000 だったアレやコレやが、10年経ってみるとそれほどでもなかったのです。
いわばそれは、思い焦がれて10年ぶりに再開を果たした「女性」に対し、あまりにも幻想をいだきすぎていた、まさしくそういうことなわけであります。
映画が終わり、私はタバコに火をつけ、「ふっー」とため息をつきました。
そして、つぶやきました。
「あの頃は若かったぜ・・・」