考えるな、感じろ! 〜 『愛され上司』になる方法
リーダーシップに関する書籍紹介第3回目は、「『愛され上司』になる方法」です。この本を読んだ率直な感想は、「面白い!」「なるほど!」「役に立つ!」でした。
タイトルの通り、「愛され上司」になる方法として、部下とのよりよいコミュニケーションをどうしたら築けるかという視点で書かれています。
本書では「リーダーシップ」という言葉は、ほとんど使われていません。しかし、部下とのコミュニケーション形成から、信頼され、愛される上司になるという過程は、リーダーシップとおおいにリンクします。
著者の堀内一人(ほりうち・かずんど)氏は、『ケイコとマナブ』(リクルート社)の創刊スタッフで、その後、編集長、事業責任者を歴任された方です。独立後は、企業向けに経営コンサルティングやコミュニケーション研修を提供しています。
著者のエピソードとして面白いのは、リクルートの名古屋支店時代に、「飲みに行きたくないマネージャー」「飲みに行きたいマネージャー」というテーマで社員が投票するという催しの話です。なんと著者は、両方でNo.1を同時受賞したのです。このことから、著者はかなりエッジの立った社員であったことが伺い知れます。
本書では、そんな著者の会社での失敗談が包み隠さず、綴られています。例えば、マネージャーになりたての頃の著者は、言いたいことを言って、部下の尻を叩くタイプの上司でした。業績はよかったものの、スタッフの疲労やストレスには気が付きませんでした。そんなあるとき、部下のひとりから、「もう、しんどいですわ・・・、みんな、やばいですよ・・・」と告げられます。
そこで著者は初めて、部下へプレッシャーを与えすぎたことを反省します。そして取った行動が、会社をサボることでした(なんと大胆な!)。つまり、部下と同じ空間にいないようにして、「言い過ぎる」機会をなくしたのです。
あまり会社に出勤せずに、夕方くらいに会社に顔を出すようになると、これまでの上司と部下の関係が徐々に変わっていきました。部下の方から「◯◯の件は、どうしましょう?」「相談があるんですけど」と話をしてくれる状況が生まれたのです。
この体験から、著者は、「聴く」ことの大切さを身をもって知ります。そして、単に言葉を「聴く」のではなく、相手の感情を感じることにより、相手を理解することが必要と言います。私は思わず、ブルース・リーのあの名言が、脳裏によぎりました。「考えるな、感じろ」。
さて、本書は、「愛され上司」になる方法として、6つのステップが紹介されています。
ステップ1 うなづく(聴く)→ 信頼関係をつくる
ステップ2 声かけ → 距離を縮める
ステップ3 伝え方 → 人を動かす
ステップ4 「飲みニケーション」初級
ステップ5 「飲みニケーション」中級
ステップ6 「飲みニケーション」上級
声かけや飲みニケーションなどは、いささか手垢にまみれたテーマと感じられるかも知れません。しかしながら、著者独自の切り口で語られると、「うーん、なるほど。これは使える!」と唸ってしまうのです。
特に、「飲みニケーション」に関しては、これほどまでに具体的に、そのスキルと効果を示したた書籍は他にはないはずです。
私は、お酒があまり強くなく(学生時代に急性アルコール中毒になったことも)、サラリーマン時代は、「飲みニケーション」が苦手でした。もう少し早く、この本に出会えたら・・・。
著者は、「相手本位の本気のコミュニケーション」を職場で実践してきたと言います。だからこそ、本書での提言はノウハウやスキルを超えた人への愛情が感じられます。
部下とのコミュニケーションは、頭(Mind)で理解するものではなく、心(Heart)で感じるものである。本書を通じて、このことを強く感じました。まさしく「柔軟なハートでビジネスはうまくいく」(これ、私のコンセプト)を実感しました。