風邪っぽいので抗生剤ください!では恥ずかしい!!
こんにちは。STsです
最近は随分と寒くなってきましたね。
外来でもインフルエンザA型が増えて来ました。
一方で、
「風邪ひいたから抗生剤ちょうだい!」
と外来に来る人も増えてきました。
よくクリニックとかでも何も検査せずに
「とりあえず抗生剤出すから悪くなったら大きな病院行ってね〜」
と言って処方しているようです。
本当に迷惑ですね🤨
この抗生剤=抗生物質=抗菌薬はどういう時に出されて、どういうときには出されないのでしょうか?
この記事を読んで、とりあえず病院に行って抗菌薬ください!と言ってしまうような恥ずかしい人にならないようにしましょう。
時間がない人は、ここだけ読んで!
☆風邪ってなに?
そもそも風邪ってなんでしょうか?
おそらく皆さんが思う風邪は、
せき、たん、喉痛い、発熱
といった症状のものでしょう。
こういったものは、"のど"や"気管"に炎症があるので
急性咽頭炎(きゅうせいいんとうえん)や
急性上気道炎(きゅうせいじょうきどうえん)と呼ばれます
ではこれが何故起こるのか考えたことはありますか?
多くの人は、そりゃ何かに感染したんだよ!と思うでしょう。
それは間違っていません。では何に感染したんでしょうか。
ウイルス?細菌?
ここが大事です!
たいてい皆さんがかかる風邪はウイルスです。
ではウイルスと細菌は何が違うのでしょうか?
☆ウイルスと細菌の違い
これを最初に教えてもらったときは、まずこれを問いを出されました。
「生物とはなにを持って生物と定義するのでしょうか?」
息してる?、心臓がある?
意外と聞かれると難しいかと思います。
ことと言われています。
どれも分かりづらいですよね。
まあ今回はあまり関係ないので詳しくは触れませんが、一番下の自己複製という点に着目しましょう。
例えば人間の細胞は日々分裂していて、皮膚に怪我をしていてもだんだん新しい細胞ができて治ってきますよね。
こういうように自分で細胞を増やしていけます。
ここにウイルスと細菌の違いがあります。
ウイルスは自分の力で増殖することができません。
一方細菌は自分の力で増殖することができます。
つまり、ウイルスは非生物、細菌は生物ということになります。
ではどうやってウイルスは増えるのかというと、
ヒトに感染してヒトの細胞の力を借りて増殖します。
この点が決定的な違いです。まったくの別モノということになります。
☆抗生物質って何に使うの?
では、今回のメインの話題、抗生物質の利用について考えていきましょう。
抗生物質は、抗生剤とか抗菌薬とか呼ばれます。
医療業界では、抗生剤とか抗生物質という名称は正しくなくて、抗菌薬と言わないと笑われてしまいます。
ただ文字通り、抗生剤、抗菌薬という通り
生物、菌に対する薬なんです。
ウイルスに対する薬ではないんです。
ウイルスに対しては、抗ウイルス薬という種類のものが適応になります。
例えば、インフルエンザの人には"タミフル"や"ゾフルーザ"といった、抗ウイルス薬を用います。
ここまで読んでくれれば分かると思いますけど、
を使用すべきなんです。
だって、細菌とウイルスって全然違うものなので
違う薬を使っても意味がないんです。
☆抗菌薬と抗ウイルス薬の違い
もちろんここまで書いてきた通り、
抗菌薬と抗ウイルス薬は全然違うものですが他にも違うポイントがあります。
抗菌薬は、
なので実際に感染している細菌が何か分からなくても、A,B,Cっていう細菌どれかに感染していそう!と予想がつけば
一方で、抗ウイルス薬はそのウイルスにしか効かないのが一般的です。
つまり、
インフルエンザウイルスに感染した場合には抗インフルエンザ薬
ヘルペスウイルスに感染した場合には抗ヘルペス薬
を使用します。
なので、どのウイルスに罹っているかを特定しない限り薬を出せないのです。
これはかなり大きな違いです。
このことからも分かりますが、
ウイルスに対する特効薬は限られています。
例えばつい最近まで、コロナウイルスに対する治療薬はありませんでした。
コロナウイルス自体は
今回の騒動がある、ずーーっと前から知られているウイルスの一つです
いわゆる風邪の原因になるウイルスの一つでした
それなのにコロナ用の薬が作られたのは、つい最近なんです。
☆風邪の治療薬は?
ここまで、ウイルスの話やその治療薬の話をしてきましたが、
結局、風邪を引いた場合には何を飲めばいいのでしょうか?
一番最初にも言いましたが、基本的に風邪はウイルス感染です。
なんていう名前のウイルスなのか気にしたことはあまりないと思います。
この風邪の原因になるウイルスはかなり沢山あります。
その中のひとつにコロナウイルスがあります。
この、その他大勢に分類されてしまっているウイルスの治療薬は何故ないのか?
それは無くても人類が困らなかったからです。
逆にいうと、
今回コロナが流行して困ったから抗コロナウイルス薬が出来上がったんです。
他の抗ウイルス薬を考えてわかりますが、
インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスは、
大流行して死亡者が出たり、後遺症が残る危ないウイルスだから抗ウイルス薬があります。
となるでしょう。でもよく考えてください。
飲まなくても治る風邪なのにそのウイルス薬買いますか?
おそらく多くの人は買わないでしょう。
実際コロナ治療薬だって高くて多くの人は買いません。
そんな研究しても買われない薬を製薬会社は作りません。
それともう一つ。
先程も書いたように抗ウイルス薬は基本的に特定のウイルスに対する治療薬なので、なんのウイルスに罹っているかを調べる必要があります。
なので、風邪の人全員にコロナと同じ検査をして
「あなたはライノウイルスにかかっています。なのでライノウイルスの治療薬を買ってください」
となる訳です。こんなこと面倒でやってられません。
自分の免疫で治せます。
いつか人類が困るような新しい型のウイルスがまた出てくれば、
新しい抗ウイルス薬が誕生するでしょう。製薬会社は儲けどころでウハウハですね
咳がでているのであれば咳止めを
喉が痛ければ喉の炎症を抑えるくすりを飲んでいれば十分です。
☆じゃあなんで抗菌薬が出されるときがあるの?
これはクリニックの人の怠慢ですね。とりあえず出しておけ精神です。
クリニックも処方して儲かるし、何も考えずに処方しています。
患者さんへのデメリット等なにも考えずに診療されているのでしょう。
ただし!
もちろん抗菌薬が本当に必要な場合もあります。
風邪っぽい症状からいくと、一番多いのは
”溶連菌感染(ようれんきんかんせん)”です。
喉が痛い症状があって子どもがなりやすい病気です。
この溶連菌感染は、
頻度がそれなりに高くて、腎臓に障害を及ぼす可能性がある病気です。
細菌感染でも抗菌薬を飲まずに治ることもありますが、
溶連菌感染は腎臓に悪い影響が出る可能性があるので積極的に抗菌薬で治療したほうがいいです。
このように細菌感染を疑う所見がある場合には、
抗菌薬を使うことが肯定されます。
☆とりあえず抗菌薬のデメリットは?
と考える人もいるでしょう。ただしこれは間違いです。
デメリットとしては
抗菌薬に対して耐性をもった菌が増える。
細菌は生物です。生き残っていくためにいろいろな工夫をしてきます。
一度自分たちを攻撃してきた抗菌薬に対して抵抗するために自分の形を変化させます。
そうすると、次にこの抗菌薬を使ったときにその細菌に効果がなくなってしまいます。
これは他人にも迷惑をかけます。
耐性を持った菌を他の人に移してしまうことで他の人もその抗菌薬が効かなくなります。
よく外来で"とりあえず抗菌薬くれくれマン"にこの説明しても、
理解してくれませんが、他の人に迷惑をかけていることを理解しましょう。下痢になる
これは正しく使った場合でもなり得ます。
人は、胃腸のなかに細菌を飼っているので、抗菌薬を飲むとこの細菌を殺してしまいます。その結果消化が上手くいかず下痢になることがあります。
実際に細菌感染しているのであれば、仕方ないかと耐えられますが
ウイルス感染なのに処方されていて、下痢になっていたらたまったものじゃないですよね。ただでさえ、風邪でキツイのに下痢にさせられるんですよ笑なんの感染症かわからなくなる
これは医師側が困ることなので詳細は省きますが、重症になったときにすごく困ります。
☆まとめ
上に書いたように、"とりあえず抗菌薬"という選択肢は可能な限り取らないことが望ましいです。
なので、病院にいって開口一番に「抗菌薬ください!」というのはやめましょう。
また、なんの説明もなしに抗菌薬を出されたら本当に必要なんですか?と聞きましょう。
(実際に、抗菌薬が本当に必要なのか吟味してから処方してください!と言われたお母さんがいて、素晴らしい人だなと思いました。)
「抗菌薬飲まないといつも風邪治らないんだよね!」
と言う人います。もし本当にそうであるならば、何らかの免疫異常です。
ぜひ精査してください。
頻度から考えればウイルス感染が普通は多く、抗菌薬は不要です。
これを期に正しい知識を身に着けましょう!
また書いてほしいお題があったり仕事依頼あれば気軽にXにDM ください!
・こういったことが気になったけど医師目線だと実際どうなの?
・医師の生活って?
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・医療系の起業をしたいけど知り合いの医師がいないから相談したい!