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妻の膵臓を食べたくなった話

 焼肉でよく食べるお肉を聞かれると困る。実はあまり意識して食べていない。ただ、妻と出会ってからはサガリを食べることが多くなったと思う。レバーは味が苦手ではあるが、妻は好きだし、鉄分不足を補えるらしいのでちょっとだけ食べることもある。
 その日も焼肉を食べていた。妻と妻の友だち夫婦と4人で。異変はなかった。私が頼んだカクテキを向こうの旦那さんに勝手に食べられてしまったことは腑に落ちないが、それでも楽しく食事をしていた。
 翌日、二人してお腹の調子を悪くした。朝方喧嘩をしていたが、腹痛という共通の話題もありいつの間にか仲直りしていた。それが月曜日の出来事だ。
 さらに翌日も妻はお腹を痛がっていた。自分はガスは溜まっているが、特別異常はなかった。それから水木金と痛い日が続き胃カメラで検査をした。
 土日も痛みが続き、救急センターに駆け込むこともあった。大きな病院の救急外来にかかることもあった。くの字でうずくまるくらいの痛みだ。無理もない。CT検査はした。しかし、何も見つからなかった。
 そしてまた月曜日。採血やがん検査を受ける妻。さすがに痛みが続きすぎるので警戒心が強まっていた。自分はちょうどこの時期に部署異動が決まっており、引継の準備で忙しかった。根拠はなかったが、盲腸なのかな、と思っていた。
 翌日、ついにMRIを撮ることになった妻。これが焼肉から1週間以上経った日の火曜日である。
 話は変わるが、造影剤入りのCT検査と通常のCT検査では、わかる情報量が結構違うらしい。しかし造影剤を入れることによって副反応が起こる可能性があるデメリットがあった。造影剤検査をすることは、土日に駆け込んだ病院で提案はされたが、何もわからないかもしれないということでお勧めされなかったためやらなかった。
 しかし、すぐにやっておけば良かったと後悔する。
 LINEにてこのようなやり取りをした。
妻「MRIしたけど膵臓になんかあるって」
私「膵臓?!」
 医療知識に乏しい私でも、膵臓が沈黙の臓器であることは知っていた。沈黙の臓器とはつまり、症状が出る頃には悪い状態になっていることが多い臓器ということだ。
妻「うむ、、、大きい病院に行って精密検査した方がいいくらい大きい腫瘍みたいなの」
 大きい、腫瘍。
 ショックが大きかった。ちょうど昼休みで良かったと思う。良くない想像が頭のなかを駆け回り、トイレの個室で泣いた。
 妻の膵臓に、腫瘍がある。この事実を知ったのは、結婚式を3か月後に控えた時期だった。妻は結婚式を行えるか心配していたが、自分はそんなことより無事に生きてほしかった。
 ネタバレをするが、現在も妻は元気だ。ただ、このときは未来がどうなるか見えず、膵臓に腫瘍がある事実を突きつけられただけだった。

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