M-1
夏が終わる。
夏が終わるということは、
秋が来る。
秋が来て、冬が来て、
M-1がやってくる。
M-1には、結成15年までのコンビしか出場できないという決まりがある。
たった数分の漫才で、誰もが天下を取るチャンスを与えられている。
その裏で、数え切れないほどの漫才師が、そのチャンスを掴めずに敗退していく。
たった数分の漫才で、その年のM-1が終わってしまう。
決勝に進出した。
敗者復活戦でいい成績を残した。
そんな風に、自分の好きな人たちがM-1で輝く姿が大好きだ。
しかし私は、結果がどうであろうと、ただひたすらにM-1に奮闘している姿に漫才師の魅力を感じてしまう。
売れたい、人気者になりたい、1000万が欲しい、認められたい……
全力で漫才と向き合っている彼らを見ていると、M-1で優勝する理由なんて、何でもいい気がしてくる。
「ラストイヤー」
今年はダメだったからまた来年、頑張ろう。
ラストイヤーの芸人たちに、もうそんな考えは与えられない。
一回戦で落ちようが、最後の一回。
今年もラストイヤーを迎える芸人が沢山いる。
見取り図、金属バット、かもめんたる、モンスターエンジン……
そしてランジャタイ。
私は、彼らがラストイヤーを迎えてM-1を去ってしまう事実をまだ受け入れられないでいる。
この間、ニューヨークとのツーマンで、国崎がこう言っていた。
「まあ、ラストイヤーですけど、出ようと思えば出れますけどね、全然。」
そんなこと不可能なのは分かった上で、みんな笑っていたが、本当に何らかの手を使って何度でも、何回でも、ずっとずっと出続けてくれればいい。
テレビにも、ラジオにも、雑誌にもたくさん呼ばれるようになった今、二人からM-1が無くなってしまったら、何かに執着して戦う姿が見れなくなってしまうのだろうか。
きっと二人は何も変わることなく、これまでと同じように漫才を続けてくれるだろうが、伊藤の「M-1で優勝します!」も聞けなくなってしまう。
お金が無い!今月の月給は5900円!!!
そう言って楽しそうに笑っていた2人が、ただ恋しくて、でも、売れて欲しくて、売れないで欲しくて、最高で、最低で、好きで、好きで、大好きで。
終わり方がどんな形であろうと、私のヒーローであることは変わらないのに、どうしてこんなにも緊張で胸が張り裂けそうになってしまうのか。
結果がどうであろうと、これが本当の本当の最後なんだという事実が、ただのファンである私でさえも、追い詰めてくる。
こんなに期待されている中で、いつだってその期待を超えてくる2人を、ただ、信じていたい。
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