ストレスに弱い人、強い人?

「彼女はいつも元気でストレスに強い!」、「彼はすぐにへこんでしまってストレスに弱いね……」

読者諸兄の周りにも、このような印象の人がいるだろう。多少のストレスがあっても、働きのバランスが崩れにくい脳を持つ人もいれば、すぐにまいってしまう脳を持つ人もいる。

しかし、ストレスに強いか弱いかということは、持って生まれた条件だけではないという。

そこで、筆者が大学医学部 精神神経科学教室の教授から伺った内容を紹介するので、参考にしてほしい。

ストレス耐性を持つ人の“4つのキーワード”
教授「ストレスに強いか弱いかは、日常的に起こる小さなトラブル(デイリーハッスル)に、どれだけ対処できるか、にかかっています。というのも、ストレスの多くは、このデイリーハッスルによるものなので。

『ストレス耐性』という言葉がありますね。つまり、ストレスに対する抵抗力のことです。では、どのような人がストレス耐性を持っているのでしょう?

基本的には、まず『身体の丈夫な人』です。病気がちな人は、どうしてもストレスに弱い傾向があります。

そして、2番目は『考え方に柔軟性のある人』。頭が固くて、真面目すぎる人はストレスを溜め込みやすいようです。臨機応変に物事に対処する能力を身につけることが大切です。

3番目は『コミュニケーションがうまくできる人』です。コミュニケーションは社会性を維持していく上での大事なスキル。人と話すことが上手な人はストレスに強く、引っ込み思案で話し下手の人はストレス耐性が低い傾向にあるようです。

ストレス耐性のキーワードは『身体が丈夫』『考え方が柔軟』『社会的コミュニケーションがうまくできる』。そして、もうひとつ『非闘争的、非攻撃的』というのも加えておきます」

ストレスで自律神経が乱れるメカニズムとは?
教授「ストレスは脳の働きを歪めます。“考えて悩む”という行為は、高度な脳の機能によるもの。人間以外の動物は、考えて精神的な病気になることは、あまりありません。

『悩む』ことは、前頭葉(※1)などの大脳新皮質(※2)で行われるのですが、その影響は旧皮質の大脳辺縁系(※3)に伝わり、そこで『悲しい、つらい、イライラする』というような感情が生み出されます。悩むことによって、つらく、悲しく、イライラするわけです。

※1 前頭葉(ぜんとうよう):大脳は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの部位に分けられる。前頭葉は、物事を工夫する、プランを立てるなど、綿密に計画を練るのが主要な役割
※2 大脳新皮質(だいのうしんひしつ):大脳皮質の主に外側の部位で、言語、認知、判断など、高度な精神機能が営まれている
※3 大脳辺縁系(だいのうへんえんけい):大脳皮質の主に内側の部位で、記憶や原始的な本能、感情機能に関わる部位

大脳新皮質の深い悩みは、人間の情緒などを司る大脳辺縁系に負の影響を与え、働きを歪めます。それが大脳新皮質にフィードバックされれば、そこの働きも歪むことに。

大脳辺縁系と大脳新皮質の働きが歪めば、働きのバランスをコントロールしている視床下部(※4)などの、さらに下位の部位も影響を受け、その機能も歪みます。

※4 視床下部(ししょうかぶ):さまざまなホルモンの分泌や自律神経の調節などを行う

その結果、眠れない、自律神経の調子が乱れる、ホルモンバランスが崩れる、といったことが起こってくるのです。

それが、過敏性腸症候群、頭痛、肩コリ、胃潰瘍、過呼吸症候群など、身体の症状として現れたのが『心身症』と呼ばれるものです。

ストレスによって引き起こされる『脳の働きの歪み』は、脳の一部が変調をきたすとか、破壊されるということではありません。『脳全体の働きが歪む』と理解していただければいいでしょう」

ストレスは“打ち勝つ”のではなく“やり過ごす”ことが大切
教授「小さなストレスの積み重ねは、“ボディーブロー”のようにジワジワと効いてきます。

ボクシングの試合を観ていると、一発でノックアウトされることはなくても、何度もボディを打たれるうちに、次第にダメージが大きくなって、やがてダウン……ということが多いですね。

そんなふうに、ジワジワと脳にストレスをため込んでしまった結果、心と身体に症状となって現れてくるのです。

ストレスは『打ち勝つ』ものでも、『立ち向かう』ものでもなく、『毎日、上手にやり過ごす』ことが大切です」

by強め女子会

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