リモートワーク下で新規事業が実現しづらい根本的な理由
リモートワーク下で
「イノベーション」は起こるのか
外出自粛期間が終わったのち、ある会社は完全リモートワークに踏み切り、別の会社では、基本的にはもとのスタイルに戻した。どの会社も、リモートワークを継続するか否か、自社にとっての影響度を多方面から慎重に検討し判断されたことと思う。なかでももっとも深く考えたのは、「リモートワーク下においてイノベーションが創出できるか」ということであろう(ルーティンワークなら、ほぼ問題なく実施できると多くの企業が判断したようである)。
世の中にはいろいろなイノベーションのプロセスがある。研究者の優れた研究成果が直接価値に結び付くもの、天才によるデザインや設計図に基づきその遂行に向けて多くの人が協力して実現するものもある。ただし、一般的に起こるイノベーションはだいたい以下のようなプロセスをたどる(こんなふうにリニアに進むものばかりではないが)。
1. 誰かが何かを思い付く
2. 周りに思い付きを言ってみる
3. データを集め、企画書のようなものに仕上げる
4. 部内会議のようなところで語ってみる
5. 社内外の人を巻き込み、プロトタイプとともに実施計画書のようなものを仕上げる
6. 重要な会議などでプレゼンをし、承認される
7. 実施に向けてプロジェクトが立ち上がり、参加者が決定する
8. 実施に向けて詳細な計画を作り込むとともに、人を動かす
9. サービスや事業がスタートする
とまあ、このように書いてみると、知恵の集積、行動への熱量、問題への素早い対応などにおいて、リモートですべてを実施するのは、なかなか難しいように思われる。したがって、常に新しいものを生み出し、試し、価値を提供していくことを会社の使命として考えている会社であれば、使えるところではリモートワークを上手に使いながら、一方で対面の仕事を中心に考えていく「ハイブリッドな方法」をとるのが現段階においては妥当解であろう。
とはいえ、ここで書いてきた内容は、あくまでリモートワークを前提としていない時代のイノベーションプロセスを、リモートワーク時に代替するときの困難をまとめたものである。
私にはまだ見えていないが、おそらく、まったく違う文法のイノベーションプロセスが今後、生み出されてくるであろう。
新しい酒は新しい革袋に盛ったほうがよいし、さらには新しい革袋に合わせた新しい酒が生まれてくるのだと思う。
一部抜粋