がんの子どもの再予防接種問題について
わたしの息子は小児白血病に罹患し、約１年間入院での闘病生活を送った。わたしもその傍らに泊まり込み、約１年間の付き添い生活を送ったことがきっかけとなり「チャーミングケア」の重要性に気がついた。
「チャーミングケア」とは、がんだけに関わらず病気や障害のある子どもや医療的ケアの必要な子どもたちの、外見的なケアであったり、メンタルケアであったり、そこに寄り添う保護者のためのケアであったりを総称したケアで、今までは「名もなき家族看護」として存在してきたもので名前すらなかった概念だ。
もちろん今はこれといって定義されているものではなく、ぼんやりとみんながそれぞれに思い描いてきたことや、暗黙の了解的に親が担ってきた看護的役割をさしている。
その概念を啓蒙するべく「チャーミングケアラボ」を立ち上げ、わたしはポータルサイトを運営している。
そしてそのチャーミングケアラボで取り上げている、予防接種再接種助成問題。（以下今までのダイジェスト）
（チャーミングケアラボ記事）
（ハフポスト掲載記事）
がんの子どもを守る会様より厚生労働大臣及び都道府県知事宛に嘆願書を提出していただきました。
新聞やニュースメディアを中心に取り上げていただき、厚生労働省が初めて実態調査に乗り出した。
一部報道によると全国１７４１自治体の５％程度しか助成に乗り出しておらず、今後助成を行う予定や検討している自治体は全体の20％程度であることが判明した。
ここでよく考えて欲しいのです。小児がんの年間発症人数は2000人〜2500人。
単純計算したところで、各自治体に1人か2人ほどしか対象者は存在しない。
しかも、小児がんの治療は何も骨髄移植だけではない。抗がん剤を使っての化学療法のみで治療していく場合も多く、その場合は全ての抗体がリセットされるわけではなく、一部だけがなくなってしまう事が想定される。
少なくとも助成してもらう側にあたるので、滅多なことは言えないが、助成の予算を取るのがそんなに壮大かつ大変な話だろうか？？？
そんな中、我が家の息子は、10月に「水疱瘡」に罹患した。
水疱瘡の予防接種はしていたのだけれど、結果的に抗体がない状態でだ。
ちなみに、抗がん剤治療のみだったので助成の対象外だ。
そして予防接種を再接種をするとしても治療後半年以上経ってからでないと効果はないと医師から説明を受けた。
長男の抗がん剤の経口薬治療は7月で終了したので、10月時点で半年は経過していない。残念ながら予防接種が打てない期間であり、かつ抵抗力も弱い状況での罹患だったため、重症化し即入院となった。
頭の先から足裏、更には耳の中や口の中まで発疹が現れ、高熱が3日続いた。
治療は、抗ウイルス剤を点滴投与するというもので、入院以外の方法は現実として厳しい状況だった。
更に驚くべきは、我が家は3人兄弟なのだけれど、下の2人は既に水疱瘡には罹患済みだった。予防接種も接種済みだ。
なので、少々接触していてももちろん大丈夫だろうとたかをくくっていたら・・・なんと三男がその3日後から体調不良。
そして２度目の水疱瘡に罹患したのだ。
病院に受診すると、水疱瘡に１度罹患しても症状が軽くしっかり抗体がついてない場合があるらしく、三男に関しては治癒後１ヶ月経ったあたりに抗体検査を勧められた。
つまり、長男の水疱瘡の感染力がそれだけ強かったという事だ。
今回は、まだ家族間での感染で話が終わっているので、５０歩譲ってまだマシだったと思う。
これが乳幼児や抗体の薄くなってしまった高齢者に感染が広がっていたり、水疱瘡ではなく今流行している風疹であったり、今回の嘆願のきっかけになったはしかだったり・・・
本人や家族だけへの影響ではすまない感染症などであったら・・・考えるだけで恐ろしくなる。
今回の件で取材をしていただいた記者さんにもお伝えしたのだけれど、医療の発達によって昔では救われなかった子どもの命が現代では救われるようになりつつある。
だけど、その先にも問題があるわけで、そこに制度が追いついてきていないと感じる。
そして、わたしがチャーミングケアでこの問題を取り上げた一番の要因は、そういった問題に向き合いどうにか解決しようと奔走しているのは当事者の保護者である場合がほとんどなのだ。
子どもを思う愛情だけが、唯一のモチベーションになって活動している現実がある。
名もなき家族看護は、決して当たり前ではないし、ものすごいエネルギーのいる事であり、尊ぶべきものなのだと思う。
そこに価値を見出したくて「チャーミングケア」という概念を啓蒙しているところは大きい。
病気や障害のあるなしに関わらず、みんなが関わりうる問題として色々な場面でとりだたされている予防接種問題をきっかけに、社会全体の問題として少し立ち止まって考えてみてほしいなと思う。