すずめの戸締まり
今までの新海誠作品の印象は、
『君の名は』や『天気の子』はキャラクターたちが気持ち悪くて正直好きではなかった。
どいつもこいつも人間性がなく、プロットに突き動かさせられているだけで、
まるでサイコパスのように見え、「大人」が作ったごりごりの古い古いご都合プロットに、
高校生という属性で彼らの反抗心や自立心を利用して、
「若いっていいね!」「青春なんだね!」と成立しているように見せつけられるのが、
本当に苦手だった。
新海誠の無鉄砲なキャラクター達は若いというよりは、
小さい商店などで店員に無茶を言って怒鳴り散らしているジジイ共の方に近い存在だろうと。
ただ、本作に関しては、真面目に主人公のキャラ設計に向き合ったらしく、
そのテーマに関しては非常に見応えのあるものだったと素直に思えた。
主人公は震災孤児になった経緯があり、被災地を離れ九州に住んでいる。
彼女は周りの同年代の子たちと比べ、人間はいつ死が訪れてもおかしくないと潜在的に感じているが故に、物語中周囲の人も驚くほど大胆に自分の身を危険に晒すことを厭わないことが多々ある。
旅のパートナーである草太は彼女に何度も死にたいのか?と叱責するが、
彼女にそれに応えている様子はない。といった感じで、
彼女の行動には本作のテーマに沿った裏付けがなされている。
このロードムービー的な本作は、
すずめの快活で明るい性格とその雰囲気を纏いながらも、
対照的にあたかも、すずめが死に場所を求めているように観客には映る。
旅の中ですずめは、各所であらゆる市井の人々の営みと交わる。
それは同世代の女の子がいる家族や、小さな子供を抱えるスナックのママ、
お節介な大学生の男性など、彼らの助けと本作の超常的な展開も合わさり、
すずめは自分のオリジンである”母の死”をもう一度乗り越えるという展開は、
まさに新しいセカイ系の旗手と言われた新海誠が、
すずめを”セカイ”ではなく“世界”と結びつけたように見え、
新エヴァでシンジくんを共同体に改めて参加させた手法とも非常に似通っており、
これに一人で感じ入ってしまった。
ただ、せっかくテーマにも絡めている超常的な設定は、
かなりアバウトな内容で、どっちがどっちだよと筋の通らない箇所が多く。
『君の名は』であんなに作り込んでたのに今回は一体どうしたんだよと思ってしまった。
( N.T )
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