デッド・ドント・ダイ
ジム・ジャームッシュ監督作品の『デッド・ドント・ダイ』を鑑賞。
ジャームッシュ監督といえば、『パターソン』(2016)や『コーヒー&シガレッツ』(2003)など、シュールかつ独特なテンポ感が支持を得ており、近年では「鬼才」と銘打たれることも多い。
そんな彼の新作が“ゾンビ映画”ということで期待していたが、まさに彼流のとぼけた演出が光る作品だった。
例えば、ゾンビ映画には必ずお膳立てというものが存在する。
怪しい研究所やら宗教団体やらの状況設定から、これからゾンビに襲われるであろう人々の家庭内不和や個々の問題などが緻密に描かれることによりゾンビ爆誕後の物語にドライブをかけていくものだ。
もちろんこの映画においても、「これがお作法なんでしょ?」とばかりに様々な問題が舞台となる小さな田舎町の中でお膳立てされ、観客に提示されていく。しかしこの映画に限っては、こうしたお膳立てがドラマに推進力を生むことはない 笑
主演2人であるビル・マーレイと、「シークエル・スターウォーズ」から飛び出してきたばかりの筋骨隆々アダム・ドライバーの2人が時たま吐いてしまうメタメタしいセリフが、そうしたお膳立てを見事に裏切っていき、ジム・ジャームッシュ監督お得意のとぼけたテンポ感と共に終始締まりのない物語が展開される。
ゾンビが現れパニックが起きているのは、スクリーンの向こう側だというのに、常に振り回されているのは観客の方であり、そうした感覚こそ可笑しくてたまらなかった。
コロナ事情もあって2ヶ月ぶり劇場に足を運んだわけだが、このユルフワな感じがちょうど良かったと思えた一作だった。
( N.T )