君たちはどう生きるか
宮崎さんは『風立ちぬ』でカッコつけて立ち去るつもりだったのが、
思うところあって死ぬ気でひと言残してから終わろうと思ったんだろうな
それくらい死を匂わせてた。
この「死の匂い」というのは今までの宮崎駿作品の中でも表現されているが、
今回はまさしく自分の体から漂い始めた死臭の匂いを隠すこともなく、
これでもかと描写されているように思えた。
ファンタジー世界の描写は、まさしくこれまでのジブリが培ってきたイメージと、
宮崎さんが影響を受けた絵画美術やディズニーなどのイメージリソースに構成されている。
全体的にはふしぎの国のアリスのようだし、もののけ姫の木霊のようなキャラクターがおり、
ファンタジー世界の桐子がいた島はベックリンの死の島のように見える。
この世界で主人公はまだ自分を知らない少女の頃の母と出会い、
(なんか宮崎さん自分の母の若い頃と会いたいってインタビューとかで話してたけど
本当にやるとは、、!)
また、この世界の創造主たる自らの大叔父と出会う。
Twitterなどでは、この大叔父のモデルは高畑勲ではないかと言われている。
確かに、この創造主たる大叔父は外の人間からは本を読みすぎて狂ってしまったと説明されており、
ビジュアルも含めて高畑勲さんっぽいが、
おそらくこの人物は創作の初段階では高畑勲さんから着想を得て、
物語を整理していく上で、後に現在の宮崎さん自身が投影されたキャラのように見えた。
大叔父はファンタジー世界の中で生き続け、
いつ世界が終わるやも知れぬと大汗をかいて世界の根幹とさせる「13個の積み木」のバランスを保ち続けており、現実の世界を憂い、およそ何十年にも渡り次の後継者がいないことを嘆いている。
(おそらく宮崎さんがこれまで手がけてきた作品を指しているのだろうか?)
そして大叔父は後継者としての適格者は自らの血を継いだ主人公以外にはいない、
この世界を積み木のシステムごと継いで欲しいと懇願するが、
主人公はこれに対して自らの問答で、この積み木は墓石と同じで悪意なるものだと言い退けて、
自分は血塗られた現実に戻り、自らの足で自らの人生を生きると問答で返す。
これは大叔父(モデル宮崎駿)が作ってきたものは、主人公(モデル宮崎駿)いや、
誰であろうとそれを継ぐことは墓石(悪意)を継ぐことだと答えた形だ。
まさに宮崎さんの遺書たる作品に思えた。
鑑賞後に戸惑ってる人も多かったけど、
僕らはこの作品があって良かったってすぐ思えるようになる、きっとそう思う。
( N.T )