業務用ローション
「金魚ちゃんこれ……?」
初めての恋人の部屋にお泊まり。色々期待してウキウキしながら恋人の部屋に行ったフロイドを待っていたのは、有名なラブローションの名前が書いてあるポリタンクであった。天蓋付きのベッドや薔薇の花があるお姫様の部屋のようなこの部屋から浮いた存在であるそれは、どう見ても普通のローションではない。業務用で間違いないだろう。
「今日の為に用意したんだよ」
リドルも期待していたのだという事が照れた様子でそう言った事から分かる。そんなリドルの姿は可愛かったのだが、業務用ローションを用意した事を彼は全くおかしい事だとは思ってないようだ。
(あっ、もしかして適量が分かんなかったってやつ?)
真面目なリドルは適量という言葉が苦手であった。だからといって、普通は業務用ローションなど買わないだろう。一体こんな物どこで買って来たのだろうか。ネット通販は好きじゃ無いという事を以前言っていたので、ネットで買ったとは考え難い。
「これ何処で買ったの?」
「購買部だよ。あそこは何でも揃ってて便利だね」
何でも揃っているという話は聞いた事があった、まさかこんな物まで置いてあるとは思っていなかった。何でも置き過ぎだろう。大人の玩具もあそこで買えそうだ。
……買えるのかもしれない。今度試しにサムに聞いてみよう。ハイテンションで出してくれるかもしれない。
「そっか。せっかく、金魚ちゃんが用意してくれたんだし、全部使いきれるように頑張るね」
千回ほど使えそうな量のローションを自分が用意してしまった事に全く気が付いていないリドルは、フロイドのその発言に対して目を丸くしていた。
男同士の性行為にはローションが必要だという事が分かったのだが、どの程度用意すれば良いのか分からない。足りないよりも多い方が良いだろうと思いリドルは購買部でローションを置いてあるのかという事を聞くと共に、置いてある物で一番大きな物が欲しいとサムに頼んだ。確かに多いような気はしていたのだが、少し多すぎたのかもしれない。フロイドに何度抱かれても全く減らないローションの入ったポリタンクを見つめながらそう思っていると、ノックも無くドアが開く。
「寮長ー。うわっ、それなんすか! ローション? こんなでかいのあんだ……いつからこの部屋ラブホになったんですか?」
ノックも無く部屋に入って来た上に、テーブルの上に置いてあるローションを見てエースにドン引きしながらリドルはそう言われる事となった。