自慰をした事がないリドルが、フロイドに騙される話し
「ねーねー金魚ちゃんもオナニーするの?」
許可なく隣に座っていたフロイドからリドルがそう言われたのは、学園内にある図書館だ。
勉強をする場所であるここでそんな事を聞かれるとは思っていなかったので、一瞬思考が停止した。こちらを緩んだ顔で見ているフロイドを見ているうちにはっと我に返り、リドルは顔を真っ赤にして目を吊り上げる。
「突然なにを言い出すんだ!」
自分にそんな不躾な質問をして来たのは、この男が初めてだ。彼の質問は常識外れだとしか思えないものだ。
普通そんな事を他人に訊かない。
「ねーねー教えてよぉ。おかずは動画派? 写真派? それとも漫画派? 俺はねー」
「そんな汚らわしい事を、この僕がする筈が無いだろ!」
フロイドの言っているおかずというのが何か分からなかったが、それでもこれ以上聞きたくなくてリドルは厳しい声で話を遮った。
「汚らわしい?」
リドルが声を荒げた事を全く気にした様子もなく、フロイドはきょとんとした顔になっている。その反応は、汚らわしいとリドルが言った事を不思議に思っているものだ。
「お母様がそんな汚らわしい事はしてはいけないとおっしゃっていたんだ」
「あはっ。お母さんにダメだって言われたから、オナニーした事ないんだ?」
愉快そうに笑っているフロイドの姿は、リドルをバカにしているようにしか見えないものだ。
「何がおかしい! はっ……」
このままではまた彼のペースに乗せられてしまう事に、リドルははたと気付いた。
もう彼のペースには乗せられ無い。そう誓っているというのに、毎回いつの間にか彼のペースになっていた。
フロイドは、リドルの調子を狂わせるような男である。
「そっか、じゃあオレが金魚ちゃんにオナニーの仕方教えてあげるね」
「ボクはそんな事をするつもりはない」
「えー、みんな普通にやってる事だよ?」
「そんな筈は無い」
「金魚ちゃんが知らないだけで、みんな普通にやってる事だよ。オナニーまだした事ないなんて恥ずかしいよ? だから、オレがやり方教えてあげる」
先程までそんな汚らわしい事を皆やっている筈がない。口から出任せをフロイドはまた言っているのだと思っていたのだが、した事がないのは恥ずかしい事だと言われると不安になってしまう。そして、絶対に違うと急に言い切れなくなる。
母親は勉強以外の事をリドルから遠ざけようとしていた。だから、そんな事を自分に言ったのかもしれない。
「……君に教えてもらう必要はない。やり方は後で自分で調べる」
もう勉強どころでは無くなってしまったので、リドルは古めかしい机に広げている厚い本を閉じる。
他に広げていたノートやペンも片付けて椅子から立ち上がろうとすると、ごつごつとした大きな手で腕を掴まれた。
「こういう事は、みんな周りに教えてもらうんだよ。金魚ちゃん友達いないから知らないのかもしれないけど」
「そうだったのか……」
「だから、金魚ちゃんにはオレが特別に教えてあげる」
「……分かった」
フロイドが自分に親切心からそんな事を言うとは思えない。何か考えがあってそんな事を言って来たのかもしれない。そんな思いから返事に悩んだリドルであったのだが、自慰のやり方を他の相手から教えてもらう事が自分はできそうにないので、彼に教えてもらう事にした。
悔しいが、彼の言う通り自分には友達がいない。
「じゃあ、夜お風呂に入ってからオクタヴィネル寮のオレの部屋まで来てね。ローション用意して待ってるから。この事はみんなには内緒だかんね」
「当たり前だ!」
自慰の仕方をフロイドに教えてもらう事になったという事など、恥ずかしくて他人。特に寮生達には絶対に知られたくない。
まんまとフロイドの罠にハマってしまったリドルは、彼から普通ではないオナニーを教えられてしまう事になる。更にちゃんとできているか、定期的にフロイドに見てもらう事に。
それがおかしい事に世間知らずで真面目なリドルは気付く事がないまま、フロイドに無垢な体を淫らに変えられてしまった。