フロイドと友達になったのに酔ってうっかりセックスしてしまう大学生リドル

「NRC時代キミのことを努力もしないのに何でもできてしまう人間だと思って、真面目にやらないことが腹立たしかったし……少し妬ましかったんだ」
「金魚ちゃん酔ってるでしょ?」
 隣に座っているフロイドは困ったような顔へとなっている。あの自由な彼を困らせているのだと思うと自然と笑みが浮かぶ。
「ふふふ。そうかもしれないね。キミといると安心して少し飲みすぎてしまったようだ」
 NRCに在籍していた時は苦手であった筈のフロイドと今は良い友人という関係になっているリドルは、彼と大学の近くにある気軽にお酒を飲むことができる飲み屋へとやって来ていた。
 NRCを卒業した後魔法医術士になる為に医学部に入ったリドルと学部は違うが、フロイドも同じ大学に通っている。その学部には、彼の兄弟であるジェイドと悪友のアズールもいる。
「も~そういうこと他の相手に言っちゃダメだからね」
「何故だい?」
 返事をしながらリドルは、フロイドが差し出して来た水の入ったグラスを受け取る。
 他人の面倒など絶対にみない性格をしているのだと彼のことを思っていたのだが、友人になることによって存外世話好きだということを知った。リドルはそんなフロイドによくこんな風に世話をされている。それが理由なのか、フロイドと友達になったことに対して良い顔を最初はしていなかったトレイなのだが、最近では彼との関係を認めてくれていた。
「気があるんだって誤解されちゃうよ」
「心配しすぎだ。そんな誤解する人間なんていないよ」
 何故フロイドがそんなことを言ったのか分かりリドルは小さく笑うと、ごくごくとグラスの水を飲む。水を飲めば酔いがましになるだろうと思っていたのだが、ふわふわした気持ちのままだ。グラスを持ったままぼんやりしていると、リドルの手から引き離したグラスをフロイドがテーブルに置く。
「金魚ちゃんはオレといる時以外絶対飲んじゃダメだかんね」
 成人してから初めてお酒を飲んだことにより分かったことなのだが、自分はお酒に弱いらしい。その為、フロイドからお酒を飲む度にそう言われている。
「うん、分かったよ」
「いい子いい子」
 素直に返事をすると、小さな子供にするようにフロイドから頭を撫でられリドルは目を眇める。フロイドはよくいい子と言って頭を撫でてくれる。それが大好きだった。
「キミと友達になれて良かった」
「オレも金魚ちゃんと友達になれてよかった♡」
 フロイドの言葉に頬を緩めていると、頭に触れたままになっていた手が離れる。まだ触っていて欲しかった。そう思ったことにより寂しそうな顔を無意識にしてしまったようだ。そのことに気付いたフロイドが再び頭を撫でてくれる。
 フロイドとは一生良い友達でいれそうだ。
 そう思ってたのに……。


「何でこんなことに……」
 何かの間違いだと思いたかったが、自分だけでなく同じベッドで寝ているフロイドも下着すらも身につけていない。更に彼の体にはリドルがつけたキスマークが幾つもあり、海底を連想させるマリンブルーのシーツのベッドには昨日の情事の形跡がしっかり残っている。
 リドルがいるのは、何度も遊びに来たことがあるフロイドの部屋だ。一人で家に帰ることができないほど酔っ払ってしまいフロイドに連れて来てもらったこの部屋で、友人である彼とうっかりセックスしてしまった。
『金魚ちゃんエッチで可愛い』
『恥ずかしい』
『金魚ちゃんのエッチな顔もっとオレに見せて』
 昨晩のこのベッドでのことを不意に思い出したことにより顔が熱くなる。フロイドに触られ何度も何度もこのベッドで精を放ってしまった。そして、彼の物を受け入れて感じてしまった。
「あんなに乱れてしまうなんて……」
 昨晩の自分を恥じるだけでなく、友人であるリドルをフロイドが抱いた事が不思議になる。フロイドは異性愛者だと思っていた。しかし、そうでは無かったのかもしれない。
 それをフロイドに確かめる事はできそうにない。フロイドの前でどんな顔をすれば良いのか分からないからだ。フロイドが起きる前に、リドルは部屋から出て行くことにした。


 断片的にしか昨日のことを覚えていないリドルは、フロイドから「ずっと金魚ちゃんのこと好きだった」と告白されたことをすっかり忘れてしまっていた。そして、恋人になって欲しいという言葉に頷いたことも。そんなことなど露知らずリドルと恋人同士になったと思いすやすや眠っているフロイドは、この後目を覚ましリドルがいないことを知り青くなるのだった。
「金魚ちゃん~~~!」
 リドルが思ってる通りフロイドは、他人の面倒なんてみるのは面倒くさいという性格だ。それなのにリドルの世話をずっと甲斐甲斐しいほどに焼いていたのは、リドルに出会った時からずっと片想いしていたからだ。

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