キャンプイベント
「セクベに気を遣わせてしまった」
夜更かしというものに慣れていないので、申し訳ないという気持ちもあったがセクベの気遣いは有り難かった。もう既に眠っていたシルバーを隣のテントに送って行き、リドルは自分のテントにやって来た。
横になり眠ろうとしたのだが、テントで寝るという経験をした事が無いのが原因なのか眠たいというのになかなか寝付く事ができない。厳しい母親に管理されて育てられたリドルは、キャンプに行った事が無かった。
大変だったが楽しかった事も多い。みんなで捕って焼いた魚は美味しかった。あれはあの場でしか味わえない美味しさだろう。眠れないので今日一日の事を思い出していたリドルは、ふとある事に気が付く。
「今日は珍しくあいつが絡んで来なかったな」
バスケ部のフロイドもキャンプに参加する事に気が付いた時、絶対に彼に邪魔をされる事になってしまうと今までの経験から思ったのだが、フロイドは一度もリドルの側にやって来る事は無かった。課題をこなすので忙しかったからだろう。それ以外に彼が自分に絡んで来なかった理由を思いつかない。
フロイドに絡まれなかったのですんなり課題をクリアする事ができたが……。寂しかったと自分が思っている事に気が付きリドルは慌てる。
「ボクがあいつに邪魔されなくて寂しいなんて思う筈が無いよ!」
「うんうん、寂しかったんだ♡」
テントの入り口から物音がしたと思うと、そんな声が後ろから聞こえて来た。慌てて体を起こしたリドルは、体操着でこのキャンプに来た自分とは違いウィンドブレーカーにサンバイザーというオシャレな格好でやって来ているフロイドがテントにやって来ていた事を知る。
「何でキミがボクのテントに!」
「体力が余ってるから金魚ちゃんで遊ぼうって思って♡ 今日は金魚ちゃんのこと構ってあげられなくてごめんねー」
フロイドの発言を聞く事によって、あれだけ昼間動いたというのに体力が余っている事に驚くだけで無く、先程の独り言を聞かれてしまったのだという事に気が付きリドルは慌てる。
「ボクは寂しかったなんて言ってないよ!」
「あはっ。金魚ちゃん素直じゃないよね~。まあ、そんなところも可愛いんだけど」
「人の話を聞け! さっさと自分のテントに戻るんだ!」
テントの中に入りじりじりと自分に迫って来ているフロイドの姿に、リドルは悪い予感を覚えていた。このままではまたフロイドに抱かれてしまう事になる。
決してフロイドと交際していないのだが、リドルは彼に何度も抱かれていた。勿論合意などではない。いつも無理矢理フロイドに抱かれていた。
「んー聞こえない。外ですエッチもたまにはいいよね」
「よくない!」
「そんな大きな声出してると、みんなに聞こえちゃうよ。いいの? 金魚ちゃんがオレの雌だってみんなに知られる事になっても」
「ウギっ……」
自分はフロイドの雌などでは無い。そう憤りながらも声を抑えていると、側までやって来たフロイドに覆い被さられる。
「いっぱい気持ちよくしてあげんね♡」
絶対に今日こそは気持ち良くなどならない。好きでも無い相手に無理矢理抱かれているというのに、フロイドに抱かれるといつもリドルは我を忘れてしまう程感じていた。それは決して自分が淫乱だからでは無い。だからといって、フロイドだからそんな風になってしまうのでも無い筈だ。フロイドだからそんな風になってしまうのならば、彼が自分にとって特別な存在だという事だ。
規律を乱すような存在であるフロイドの事を、ハーツラビュルの寮長である自分が好きになる筈が絶対に無い!
今日こそは絶対に気持ち良くならないと決心していたリドルであったが、あっさりと彼に陥落して気持ち良くなってしまうのだった。