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【読書記録】#1
※個人の私見を多分に含みます
糸です! 2025年最初の投稿です。本年もどうぞよろしくお願いします。
さて、文豪ストレイドッグスを読んでいると、キャラクター名になっている作家について知りたくなる方が多いのではないでしょうか。私もその一人です。今回は、そんな経緯で出会った書籍をご紹介します。
以下、実在した作家の名前は敬称を略して表記します。
扱う書籍
井本元義『輝ける闇の異端児 アルチュールランボー』書肆侃侃房(2022)
2021年はランボー没後130周年。ランボーと家族との思い出、ヴェルレーヌとの関わり、流浪と戦争の経験……前半ではランボーの人生が、後半では彼の残影を追いかけた筆者の体験談が描れています。単行本、224ページ。
※ネタバレ防止のためワンクッション
感想(ネタバレ注意)
筆者の熱量
読み終わった直後の感想は、筆者・井本元義氏のランボーに対する情熱がとにかくすごい。これに尽きます。私は、ランボーのことをよく知らない状態で本書を手に取りました。それでも、ただ単に出来事を並べるのではなく、遺された文書の行間を隅々まで汲み取って、連綿と続く彼の人生を描いているのだと感じました(もちろん一定の脚色は含まれていますが……)。
各所に引用が散りばめられているものの、どの文献から引っぱってきたかはそれぞれ明記されていないので、「ランボーの生い立ちをざっくりでいいから知りたい」と思っている方にはピッタリではないでしょうか。
詩人たちの時空を超えた対話
一番印象に残っている箇所、それはランボーと宮沢賢治の対話です。「?」と思ったあなた、一旦説明させてください。
直接相対することこそなかった二人ですが、20代で最愛の妹を失い、37歳の若さでこの世を去っているなど、実はいくつもの共通点があるのです。生きてきた文化もベクトルも異なるようで似ている彼らについて、井本氏は次のように語っています。
僕には二人が全く同じものに見える。ひたむきに雪道を歩き続ける賢治と無味乾燥の愚劣な砂漠に怒り狂うアルチュールが兄弟に見える。その存在を否定し絶望し愛する二人の苦しみがいとおしさで僕の胸を激しく打つ。
……愛がすさまじい。
ランボーの生誕地であるロッシュ村を訪れた井本氏。その広大な風景に井本氏は、早逝したこの二人の詩人の対話を聴いたのでした。
特に、賢治の口調が彼の文体そのもので書かれているので、読んだ人は必ず「あ、賢治がいる」と思うはずです。引用するにも長くなってしまうし、面白さが半減してしまうので、ご自身の目で確かめていただくことを強く推奨します。
文ストとの繋がり(諸々ネタバレ注意)
文スト「STORM BRINGER(以下ストブリ)」を何らかの形で享受した方にとっては、本書を読んでいると「あれ? ここで書かれてる(史実の)ランボーって、(文ストの)ヴェルレエヌさんっぽくない?」と思うかもしれません。その感覚は間違っていないと思います。逆に文ストを知らない人が本書を先に読んで「ストブリ」を読んでいたらどう思うのでしょう……? もし本書と先に出会っていた方がいたら教えてください!
「ストブリ」を確認すると、ランボオさんとヴェルレエヌさんは名前を交換していることが分かっています(p.307, 313)。つまりヴェルレエヌさんは、本書に描かれているようなランボーの像を色濃く映しているわけです。そうなると異能力名や、ヴェルレエヌさんがランボオさんと決別した一件(元ネタ:ブリュッセル事件)に違和感がありますが、ここでは触れないこととします。
以上、ここまでお付き合いいただきありがとうございました! 興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。
画像はhttps://www.artguru.ai/jp/より、「地獄の季節」と入力した結果出力されたものです。