【フィクション】7月10日に生まれて。

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1999年2月14日の出来事です。
2009年07月10日16:20にMIXIにあげていたものです。

この物語はフィクションです。
この物語は時系列で語られる話ではありません。
エピソードNoは適当ですが、多分そのくらいじゃないかという予想でもあります。


これは2009年から10年ほどさかのぼったある日の出来事。

Epsode 35(前編)
1999年2月14日、その日はそれほど寒くない曇天であった。
そんなバレンタインデーの今日も関係なく仕事をしていた。

僕の勤めているゲーム会社「A for SALE(ア・フォ・セラ)」はちょっと経営が悪化しいつふっとんでもいい状態ではあるらしい。
でも、一介の契約社員である僕にそんなことは知るよしもなかった。

今日は現在開発を進めているゲームの企画進捗会議である。
午後3時から始まり、たいてい夜10時をすぎる。
会議の内容は時々脱線しみんなが遊んでいる「forEverQuest」なるオンラインゲームの雑談となる。それを仕切るのがMCの僕の役割だ。
会議の参加者はほとんどが僕より年上で癖のある輩が多く、僕なんかの言うことは流されがちだが、ここを早く切り上げないと、会議後にまとめる議事録からサンプル画面レイアウト、さらには画面上に出すほんちゃんのドット絵を仕上げる時間がなくなってしまうのだ。
朝までには帰りたいと思っているがだが・・・。


しかし会議が終わると会社の副社長でもあり、その開発ゲームのプロデューサでもある剛崎潮三郎さんが僕のところにやってきた。

「あのさぁ、明日の朝、裁判所がやってくるかもしれないんだよねぇ」

ん?意味がわからない。

「だからぁ、もしかすると明日差し押さえが入るかも知れないんだよぉ。
 そうするとぉ、会社の資産は全部、自由がきかなくなるの」

「はぁ?」と僕はまだよくわからない表情をする。

「なんでぇ、このゲームの資料とかデータとかも差し押さえられちゃうかもしれないんだよ」

「はぁ」

「だからぁ、お前、この仕様書持って会社を出ろ!」

「ぇぇぇぇぇえ」

明日の朝、債権者が裁判所を連れて会社の資産を差し押さえにやってくるかも知れないというのだ。
だから、今夜徹夜して仕事を終わらせたら、でかいファイル3冊(重量にして約10kg)と原画集4クリアファイルを持って帰れということだ。


おいおいおいおいおい、マジですか!
それって犯罪なんじゃねぇの?!
とは思いつつも自分の頭で整理ができないまま、まずは仕事をこなしていくしかなかった。
僕の席のとなりには、ゲームのキャラクターを描いてくれている荒々画伯が既に作業を始めていた。

夜の11時をまわろうとしていた。
夜だけど仕方ない。今作っているゲームの発売元となるメディア工場という会社の担当の城島さんに電話をした。

とりあえず詳細は告げない方がいいと判断した僕は
「夜分、すいません。
 突然で申し訳ないんですが、明日の朝ちょっと会って頂けませんか?
 はい?はい。
 ありがとうございます。
 では、8時半に恵比寿駅前のケンタッキーで。
 失礼します」

先方は僕の危機とした態度に異常を感じたのか、出社前に会ってくれるという。

僕の作戦としてはこうだ。
さすがに僕が会社のモノを持ち出したとあっては、あとで何言われるかわからない。
でも、このゲームはクライアントが金を出してウチの会社に作らせているのだからある意味メディア工場のモノとも言える。
だから、仕様書やデータなどがクライアントのところにあっても何の不思議もない。
明日の朝、裁判所が来てとにかく何も判断せず、会社中のモノを「差し押さえ」をしていくはずだから、一時的ではあれ開発はストップせざるを得ない。
それを多分、剛崎副社長はおそれたのだろうと思う。
会社がすっとんだら、開発も継続できないわけだしな。
とにかく、この仕様書さえあれば開発は継続できるのだ。

そう思うと、まずは目の前の仕事を片づけようと思った。
荒々画伯の原画が上がってくるとそれをスキャナでとって、リサイズしてジャギをとって着色していく。

ちなみに僕はデザイナーでもない。
でもこのプロジェクトは資金も底をついているので、グラフィックデザイナーをアサインできないのだ。
とりあえず僕が塗るしかなかった。
そして、夜が明ける・・・。

to be continued.


2009年7月10日は「A for SALE」社の13回目の創立記念日です。
この記念すべき日を以前この会社のスタッフであった他3名と迎えることができ本当に嬉しく思いました。
ちなみに、この物語はフィクションです。
果たして裁判所は?そして逃亡者となる主人公の運命は。
この続きはまた近いうちに・・・

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