寅さん観察日記#47「拝啓車寅次郎様」
第47作 1994年12月23日 男はつらいよ 拝啓車寅次郎様
マドンナ:かたせ梨乃、牧瀬里穂
冒頭は夢ではなく旅先シーン。
売れない演歌歌手(小林幸子、本人名で登場)と出会ってアナタは大器晩成型だと寅が勝手に占う小芝居。
満男が就職している。満員電車に揺られての出勤。反抗期は治まっている様子。
渥美清が次の作品で遺作となるのが分かって観ているので、満男のこの成長まで描けただけでジーンと来る。
さくらは自転車ではなく歩いて柴又へ。
自転車に乗れない年でもないだろうから、年月の流れを感じさせる演出とみよう。
とらやでおいちゃんとタコ社長がケンカしだすんだけど、こちらももう往年の迫力はない。
これは不可抗力だ。
おばちゃんも含め年寄衆三人があまりにも声が出ておらず、加齢を強烈に感じてしまった。
寅さんは琵琶湖のほとりにてアマチュアカメラ女子=かたせ梨乃さんと出会う。
満男は訳合って長浜へ。牧瀬里穂と仲良くなる。
もう隠す様子もなく寅と満男がバッタリ会うパターンである。
最後まで安定の黄金パターンを作ろうとし続けた山田洋次監督の姿勢にアッパレ。
そして過去一番の面白いバッタリ寅さん登場シーンを用意してくれた。
長浜曳山祭。きっとこのシーンは何年も経ってからじわじわ思い出してニヤリとできるだろうな。
柴又へかたせ梨乃さん登場。
源ちゃんがとらやの配達を頼まれてる。仕事もするのか、源ちゃん。
不思議な存在ながら初期からずっと作品に欠かせない便利な存在である。
タコ社長の朝日印刷の車を、私用で気軽に借りちゃう満男と寅。
本当に親戚みたいな付き合い方で少し嬉しくなるシーンだ。
朝日印刷はタコ社長と奥さんの二人で昭和27年に始めたとタコ談。
こういう話もそういえば今までありそうで無かった。
高度経済成長を支えた企業の一つ、朝日印刷。アッパレ。
寅が満男に対し、燃えるような恋をしろと半ば叱るように言い残したり、
終了間際では満男が独り言で、
「おじさんは他人の悲しみや寂しさが良く理解できる人間なんだ。」
など。
全体のパワーは無いが、素敵な名セリフや綺麗な琵琶湖などの印象的なシーンが散りばめられた佳作。
渥美清さん、もうかなり体調が悪いようだ。
寅さんは要所要所でチラリと出てくるのみ。ほぼ座っているシーンである。
いよいよ次作が渥美清さんの遺作である。
結婚は望まないから、何かハッピーエンドをぜひ。
ロケ地:滋賀県長浜、鎌倉
主題歌:キーG。だがテープが伸びていてキーが1/4音ほど下がっている。
ふと気がついたが、録音もここ10数作ずっと使われていたいつものではなく、途中にバイオリンとアコーディオンソロが入る歌詞パターン1のもの。
おそらく初期の録音だろう。渥美清さんの声がもっと若い。
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【寅さん観察日記】
男はつらいよの第一作目を見て、寅さんが頭の中の印象よりも随分と粗暴な性格で驚いた。そこでいつ頃から皆に愛される寅さんへと変化していったのかに興味が湧き、一作目から順に見ていくことにした。
あらすじ紹介が目的ではない。
順に見て思った事、雑感を書き連ねていく。順に見なければ分からない感想が紡ぎ出せればと思う。
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