寅さん観察日記#39「寅次郎物語」

第39作 1987年12月26日 男はつらいよ 寅次郎物語
マドンナ:秋吉久美子

前作で無くなっていた夢シーンが復活。
寅さんの少年時代を思い出す夢だ。親父と喧嘩して家出する話。
暗い江戸川の土手。寅の去り際に幼少のさくらがおにーちゃーんと叫ぶ。
NHKドラマ「少年寅次郎」の出発点はここにあったのか!

夢が覚め、満男が高校生になっている。
もう進路相談だ。あっという間に大きくなったなぁ。
この頃はもう年に一回の公開かな。だとすると、作品ごとにどんどん大きくなっていくんだなぁ。
(余談であるが、筆者は満男役の吉岡くんと同い年。時代背景をリアルに思い出せて、思い入れのある役者さんである。)

どこの誰だか分からない低学年の男の子が寅さんを訪ねてとらやに現れる。名前は秀吉!父親は死に、母親は蒸発したという。
なぜこんなド派手な名前なのかは、観た方のお楽しみ。
この少年がなぜ寅さんの年賀状を大事に持っているのか。
ミステリアスな導入である。

寅さん、秀吉くんの親に心当たりがあるようで、秀吉くんと母親を探す旅へ出発。
せっかくのミステリー要素をあっけなく飛び越える潔さは、男はつらいよならではか。

大阪天王寺の交番でイッセー尾形さん登場。このところ2回に1回くらい違う役で出ている気がする。すっかり山田洋次さんのお気に入りだ。
和歌山を経由して奈良県の吉野へ。
吉野では村松達夫さん(何度も出ている二代目おいちゃん)も医者役で登場。
賑やかなキャスティングである。
マドンナ秋吉久美子さんとの軽妙なやりとりも面白い。
旅の終着地、伊勢志摩にて母親を発見。一件落着。

ここまで本格的にロードムービー仕立てになっている内容は初めてじゃなかろうか。大阪の中をウロウロした回はあったけど。
ドサ回り稼業をしている寅さんなのに、今までこの手の作品が無かった不思議。
先が読めない展開はロードムービーならではの面白さがあった。

今回は寅さんのお節介な部分が全部良い方向に転がってナイスなおっちゃんでした。
以前にも考察したが、寅さんは外へ出ると頼りになるおっちゃん、柴又へ帰ると迷惑なおっちゃんである。
今回はほぼ外だったゆえ、全編に渡って頼りになるおっちゃんであった。

満男「人って何のために生きてるのかなぁ」
寅「あぁ、生まれてきて良かったなぁ、と思う事がなんべんかあるじゃないか。その為に人間生きてんじゃねぇのか。」
満男、何か抱えているのか。先に何かあることを予感させる。

エンディングで初めてマドンナ秋吉久美子さんがとらやに上陸。
やっぱりこの居間に上がらなければマドンナじゃない感じがするしね。

ロケ地:和歌山県和歌の浦、奈良県吉野、伊勢志摩
主題歌:キーG。黄金の過去録音モノ。もうずっとこれで良い。

-------
【寅さん観察日記】
男はつらいよの第一作目を見て、寅さんが頭の中の印象よりも随分と粗暴な性格で驚いた。そこでいつ頃から皆に愛される寅さんへと変化していったのかに興味が湧き、一作目から順に見ていくことにした。
あらすじ紹介が目的ではない。
順に見て思った事、雑感を書き連ねていく。順に見なければ分からない感想が紡ぎ出せればと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?