【古代戦士ハニワット考察】松尾ユリカはどこにいる?
*「古代戦士ハニワット」について8巻までネタバレすることにします。ごちゅういください*
改めて「古代戦士ハニワット」同人誌
前回のノート記事で「古代戦士ハニワット」の同人誌を作ることになりましたと書きました。もう少し詳しく書こうと思います。
まず大変に驚いています。いえ、自分が「ハニワット同人誌を作るならお手伝いとかしたいです」と生意気にも立候補したので、同人誌を作ることに対するお手伝いは少々経験もあるので幾らでも惜しまず幾らでもやれるのですが
こんなしっかりした規模になろうとはなあ~という、驚きです。それに。
いや、武富先生全面的なご協力&監修て・・・
まず、そんなンありなんですか!?
原作者つれてきたら二次創作が一次創作になるのでは?(汗)
ほんとにとんでもねえな「古代戦士ハニワット」
とりあえず、めちゃくちゃ「本来の意味の」同人誌を作るという事ですね。プロの原作者自身がアマチュアとして関わって、同好の士と一緒に「同人」つまり一つの名義の元、創作活動をして本を出版するという同人誌界の古代伝説みたいにして語られていた純文学時代の形式です。
すごいです!同人スタイルも古代、さすが古代戦士ハニワット。
『明六雑誌』とか『我楽多文庫』的な文学誌の元祖の形式は同人誌でした。まさに文芸漫画家と呼ばれていらっしゃる武富先生らしい形式になってしまうところに「奇縁」を感じずにはおれません。
自分はハニワット読み始めて日が浅く、コアなファンの方々に混じって同人誌というファン活動で関われるのはうれしいを通り越して冷や汗かいて畏れ多い程の気持ちです。そもそも自分は同人誌の発起人でもないですので、過分に扱ってくださった関係者の皆さんにもどこまでも感謝です。
しかし一旦何かを作るとなった以上、しっかりと良いと思えるものを、一緒に創る仲間のために、楽しみにしてくださる方々のために、そして自分自身のために作ろうと思います。
なおこの同人誌はよりたくさんのファンの方と作ることができるようにファンアートや考察や文章などの投稿も考慮した構成になる予定です。『古代戦士ハニワット』の同人誌をつくりたいみなさんで、コミケに同人誌を出しましょう。
ご興味のある方は「ハニワット同人誌」についてはTwitterで@Haniwattozzをフォローして詳しい情報をご覧になってください。現在は投稿は受け付けておりませんが、適当な時期に募集を同人誌公式アカウントから告知することになっています。なおこのアカウントは何人かの編集人で管理していこうという事になっています。
真剣に、ですがリラックスして全工程を楽しんで作ります。
ちゃんと漫画の考察をしてみる
ハニワットという作品自体も本当に味わい深い、広い懐を持っています。ハニワットについて語る内容に事欠くことはありません、ですが自分は自分のできる考察を、これから同人誌制作のために煮詰めていこうとも思いましたので、大きなネタをストックして同人誌制作に向けて熟成させていこうかなと思います。
よってしばらくノートの記事の方は気軽で小さな話題、あるいは同人誌における考察の下準備になる小考察的内容、小ネタについて書いていこうと思います。前置きが長くなりましたが、今日のお題は「松尾ユリカ」さんのいた場所です。
松尾ユリカの位置検証
松尾ユリカは第二部妙義横川庄内編にでてきて一度見たら忘れないインパクトで駆け抜けていった人類の叡智を備えた才女(?)です。
たった数ページの登場で読者に実に強烈な印象を残した名わき役といえるでしょう。第八巻まで読んで初めて彼女をあそこに配置した意味が演出上ようやくわかるのですが、初めて見たときは何のために出てきたのかわからないけど、おもしろい女の子だなー、で終わっていました。
その松尾ユリカは前述のとおり7巻第21話「両断」で、岩手県酒田築港に第三のドグーン"猫鳴き”が上陸するシーンで登場します。
今回は作中の描写から、現実の「どこに」松尾ユリカがいたのかを考察してみます。ハニワットの作中における作劇上の地理的整合性作劇上の都合でどれだけ手を加えているかなども見えてくるはずなので、そこらへんについても見ていきます。一般的に言う作品の「考察」っぽい書き方です。
まず、舞台は前述のとおり
とあります。これは現実の山形県酒田市の酒田港その北岸に航空写真で漫画中の描写とほぼ同じ地形があることからモデルにしたのは酒田港、その北岸らへんで間違いないと思われます。
舞台はこの写真のあたりです。
そして
と書かれて、そのあと釣り人達が映るシーンは
ここになります。酒田北港風力発電の位置ですね。ここをいま仮にA地点とします。
これはGoogleMAPのストリートビューを使って付近を写した写真ですが、作中の左手のテトラポッドの山や、左手の遠景にみえる椅子のような巨大な機械は対岸の酒田北港高砂ふ頭のガントリークレーンです。漫画の描写は現実の風景そのままです。
漫画ではもっと海寄りの視点から描かれていますし、風車の位置の正確性まではわかりませんが、とても正確に現実の風景を下敷きにして描かれていることがわかります。
次に"猫鳴き”が上陸する場所です。
先ほどのA地点で数人の人々が釣りをしているとカップルが海を泳ぐ猫鳴きを見つけます。そしてそれをしばらく追跡した釣り人達が猫鳴きが「ヨットハーバー」に入っていくのを見るという展開になります。
そのヨットハーバーは現実だと以下の場所です。ここをB地点とします。
確かに船がたくさん停泊しています。ちなみにヨットハーバーの奥側から海を見るとどうなるかというと、「庄内使えるサイト」さんからフリー素材の写真をお借りしてきました。
綺麗ですね。このヨットハーバーはコの字型になっていて、最奥に特徴的なパイプラインが通っています。これは漫画でも大きく描かれていて、”猫鳴き”が上陸したすぐ横にある大きくて特徴的なパイプは現実だと東北東ソー化学さんという会社の西と東のプラントをつなぐパイプです。
写真を拡大して猫鳴きをかきいれるとこうなります。
ほとんど現実の風景と漫画の配置が一致しますよね。構造物も、写真では見えませんが、奥にある風景の配置物もほぼ一緒です。(手前の手すりや船は漫画では省略されています)ここから猫鳴きはまっすぐ港とは反対側の内陸の方向に移動します。そしてその進行方方向傍に松尾ユリカさんが登場するのです。
「ヨットハーバー」の猫鳴き上陸ポイントを反対側から見て人物の位置関係を書き足すとこうなります。左手に東ソーの西工場の施設の屋根と塀が見えますから構図的に間違いはないと思います。
ここまでは風景の描写とぴたりと一致します。ですが漫画には手前に伸びるパイプが一本だけ書き足してあります。
手前の駐車場とかフェンスは漫画では省いてありますが、それは撮影の見た目上あまり価値のなく見づらかったから省いたとかいう意図がありそうです。しかしなぜこの一本の太くて折れ曲がったパイプを作者は描き入れたのでしょうか、それはもう少しドグーンと松尾ユリカを追っていくとわかります。
さてこの後ドグーンは内陸側に少しだけ進んで「フェンスの先に風力発電の風車が見える場所」まで移動します。しかし実際にはこの先には花王の工場しかなく、漫画で描かれるような風景、つまり「フェンスとその先風車」はありません。漫画の描写のような風景があるのは、じつは先ほどのA地点、酒田北港風力発電の傍の場所なのです。
現実ではこれだけの距離があります。ですが、漫画上はヨットハーバーのすぐ内陸側に風車があるように描いてあります。
さてその「フェンスの先にある風車」に対応する実際の厳密な場所はグーグルマップで行けなかったので、A地点周辺の同じ型の、同じ構図で配置物の見えるのフェンスを表示します。ここをC地点とします。
フェンスの形が漫画と酷似しています。フェンスの先に見える、中央右寄りの送電塔も漫画の描写と同じですね。ですが風車がありません。漫画では以下のように描かれていました。風車を漫画と同じように描き入れてみますね。
因みにこの場所の後ろの風景はどうなっているかというと
今度はちゃんと風車が見えますね。実はこの風車が「例の風車」ではないかと思われる風車です。
この場所C地点は一番初めに紹介した釣り人達がたむろしていた場所、A地点から少し東に行った場所です。
A地点のさらに東の位置に移動すると。
猫鳴きが風車を切断して風車が倒れるときに見える風景に近づいてきました。実際は画面右に見える風車を超えてもう少し海側からみた風景に近いように思います。遠景に見えるのは長い廊下のついた連結した建物と、二基ある大きな機械は石炭共同燃料を積み下ろしする石炭陸揚げ機械です。近づくともっと巨大な感じがするでしょうね。かっこいいです。
ところで風車が切断されてつぶされる建物がいま写真の奥に見えている当たりの建物です。
漫画だとコマの左側にある風車が折れて、右にある建物を粉砕していますので、その間から見ていることになります。写真を拡大すると。
風車を囲うようににフェンスが見えます。さっきのフェンスと同じ構造のものです。漫画でも風車を囲うようにフェンスが描かれているので、実際の猫鳴きがたった場所はあのフェンスの向こう側だと思われます。あそこに立って、この風車を切断したものと思われます。実際に行けてないので推測の域を出ませんが、作者はかなり厳密に風景を実際の風景に似せて描写しています。
ですが、写真で見てわかる通り松尾ユリカさんが隠れて、そのまま彼女の墓石になったあのパイプがありません。「あの」パイプはヨットハーバーで描き入れられてそのままこの現場まで続いているように描かれています。
つまり、あのパイプは現実の風景では何も遮蔽物がないので、松尾ユリカさんが隠れるために漫画上の現場に配置されたと思われる、松尾ユリカさんを亡き者にするためだけに創作されたパイプだったようです。にっくきパイプめ(笑)
しかしもしかしたらもっと実際にこの風景より海側に漫画の描写に該当するパイプがあるかもしれませんが、確認はできませんでした。ただ、ヨットハーバーで作者がパイプラインに手を加えてわざわざ書き足しているのは確かなようですので、この想像は間違いないでしょう。
最期に猫鳴きと松尾ユリカさんを写真に書き込んでみます。
前にハニワットの考察を書いたときには松尾ユリカが出てきた意味が「わからない」と書いてしまったのですが、8巻の猫鳴きとハニワット・サカとの対決を見ると、松尾ユリカはミスリードの演出のために出てきたんだなとわかります。そしてもっと詳しい彼女の作品上の「位置」をこの次の章にかきたしました。是非ご覧ください。
捕捉になりますが。この後風車が倒れて建物が粉砕された後
と釣り人達が言っているので、つぶされた建物は漫画上は工場という認識なのかもしれません。漫画上はB地点に近いあたりにみんながいう「帰り道」車などを止めた駐車場があり、それが風車と工場の倒壊でふさがれたので帰れないという風に焦っているようです。
更に漫画では燃える燃料トラックや向上らしき建物がみえますが、あれはB地点にある東ソーの施設内にある水素タンクです。つまり描写上はA地点とB地点を意図的に混在させたような書き方になっています。
松尾ユリカの作品上の「位置」
ちょっとこの項目を追記します(笑)当初公開したときは本当はここを描きたかったのにかいてる途中に忘れていました。
松尾ユリカさんのいた場所は一応実際の風景との照合でわかりましたが、彼女のいた「作品上の位置」はいったい何だったのでしょうか。
それは猫鳴きの攻撃を「目撃した(がそれを伝えられなかった)」という仕掛けをしているところです。
松尾ユリカが死ぬ直前に
という風に猫鳴きの背中を見ているのですが、これは光っているのに驚いているのではなく、猫鳴きの真の武器に驚いているのです。実は彼女は猫鳴きの真の兵装である『戈』による攻撃を目撃していたのですから。
しかし猫鳴きは攻撃の瞬間、腕の付け根が激しく光る仕様(?)だったため、ユリカの死とともに「猫鳴きは光撃型」という認識が寺社側に広まってしまい、結局猫鳴きと戦う埴輪徒には光撃戦が得意な正春がたてられてしまいます。
これによって正春は実は「広義の」「剣技型」だった猫鳴きとの相性が合わず、不戦敗を喫してしまった人類側は新たな蚩尤を鳥海山の噴火とともに迎えるという大ピンチに陥ってしまいます。
つまり・・・
松尾ユリカがここでカメラもろとも死ななければ妙義横川庄内編は大ピンチ、もとい三面同時対決に陥らなかった!という意味でたいっへん重要な作劇場の役割を負っていたのでした。
その証拠に「カメラ女子なのに」「蚩尤の決定的瞬間を目撃したのに」「カメラまで落石で壊されている」という念の入りようで、彼女の役割が「見る」カメラで「写す」という事だったと知れるのです。
最期の彼女のシーンは顔面で目が大写しになっています。
ここからも彼女の重要な役割が「目撃者」であったが、それを伝えられなかったという複雑なものであることがわかります。
いいかい?松尾ユリカが武富先生のイマジナリーパイプに押しつぶされたからこそ、妙義横川庄内編は、正春の敗走からの三面同時対決という展開につながっていくんだよ?ありがとう松尾ユリカ、君の犠牲はハニワットをめちゃくちゃ盛り上げていた!(笑)尊い犠牲であるとともに大好きなユリカ嬢の株があげられたので満足です。
古代戦士ハニワットの地理感覚・聖地巡礼への可能性
『古代戦士ハニワット』は現実の風景や地理的感覚を厳密に踏まえつつ、漫画の描写ではそれぞれのパーツを自由に組み変えていることがわかります。
ですがどの風景も酒田港周辺に出てきたものですから、そういう意味では一定の「ルール」というか漫画の設定上の付近の風景だけで構成していると思われます。
何が言いたいかというとハニワットは「聖地巡礼」いわゆる漫画やアニメの題材となった土地巡りができる構成になっているという事です。それもかなり厳密に漫画の中に出てきた風景を現実の中に探す楽しみがある漫画という事になります。
今度創ることになっている同人誌では聖地巡礼、ハニワットの題材になった土地巡りも企画されていますので、楽しみですね!
読んでくださってありがとうございました。おわりです。