見出し画像

防犯の名の下に⑥屋上遊園地

この話は、後の展開にも関わってくる。

20歳の頃、デパートの屋上遊園地でアルバイトをしていた。
店長はマキノさんという30代前半くらいの小柄な男性だった。大きな目で、笑うとき照れたように顔を赤くさせた。
狭いスタッフ待機室で、彼に奢ってもらった缶コーヒーを飲みながら、いろいろな話をした。缶コーヒーを奢ってもらったことを覚えているのは、自販機の前に立つ彼の髪型と背中が今も脳裏にあるからだ。

マキノさんは創価学会の会員で、大学も創価大だった。冗談にも付き合ってくれる人で、話しやすかった。当時の私は哲学や宗教の本をよく読んでいたこともあり、「学会長に会ったことはありますか?」と尋ねた記憶がある。
彼が公明党を「コンペイトー」と言う池田大作の言い回しを真似たのを覚えている。これを聞いたことのある学会員なら、きっと頷くんだろう。
マキノさんは池田大作を「先生」と呼んでいた。
私にとって創価学会は、マキノさんの人柄を通して印象づけられた。
目を腫らしたマキノさんを思い出した。仕事中に事故があったのだが、どんな事故だったかは思い出せない。デパートの上層部と話して戻ってきたとき顔が濡れていた。
あの頃の彼は、本当は創価学会の活動だけをしたかったのではないか。
それがもっとも彼には没頭できたはずだから。


いいなと思ったら応援しよう!