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願わなかった「生」

できそこないだ。
というと画面の向こうのあなたは面食らうかもしれない。

できそこない。些か強い言葉であると自分でも思っている。だが、僕のことを形容するのに、これほど的確な言葉は他にないと思う。

僕は生まれながらにそうだったのだったのだと思う。何ひとつ取り柄を持たない凡人、それだけなら、まだよかった。でも、僕には欠陥が多すぎた。

僕のようなできそこないが生まれてしまったのは、ひとつになれなかったせいなんじゃないかと思う。

完璧なひとつに産んでくれたらよかったのに、と何度も思った。

この超自然的な巡り合わせに、抗うすべなどない。かと言って、この感情を親にぶつけるのも違う。仕方なかったんだから。僕の誕生は、仕方なかった。

それでも、「生」は祝福される。
誰もがそれを美しいものだと盲目的に信じているから。たとえそれが願わなかった「生」だとしても。願われなかった「生」だとしても。

僕もまた祝福された。

きっと片割れのピースになる筈だった僕、欠陥だらけの僕、命のできそこない。

それなのに、幸せそうな顔をしてくれてありがとう。僕はあなたたちに、感謝しかない。こんなに卑屈で、親不孝なやつでごめんね。

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